「第25回全日本身体障害者野球選手権大会」選抜チームが発揮した団結力と絆の2日間「最高のメンバーで試合をやれた」
準決勝は王者との戦いもほぼ互角の勝負に
続く2戦目は岡山桃太郎との対戦。岡山は前年22年まで秋の選手権3連覇中で23年春も全国制覇している王者。世界大会を戦った日本代表でもチーム別最多タイの5人が出場した。
準決勝の先発は井上選手がマウンドに。初戦の最終回では苦しい投球となったが、この試合では見事に修正した。
世界大会MVPの1番・早嶋健太選手に安打を打たれるものの、同じく日本代表の槇原淳幹・浅野僚也の両選手・前回選手権MVPの窪木大助を抑え無失点。2回も0点に抑え、徐々に投手戦の雰囲気が漂う。
岡山の先発は高月秀明。井上らと同じ療育手帳を持つ選手で、日本代表でもプレーした。代表では主に6番を打ち、ポイントゲッターを張った男はこの試合5番に入り、攻守両面で主軸を担う。
NEXASは高月の投球に翻弄され、四球で出塁するも後続を絶たれてしまう。3回表、岡山の浅野がランニング本塁打を放ち2点の先制を許した。
しかし井上はここから崩れることはなく後続を抑え、この2失点のみで6回を完投する堂々のピッチングだった。その後、岡山は高月から浅野にスイッチ。浅野もNEXUS打線を抑え込み、2人で完封リレーを果たした。
試合は2−0で岡山が決勝戦へ進出。錚々たるメンバーが揃う相手にも、NEXUSは決して名前負けをすることはなかった。林監督は試合を振り返りナインを労った。
「素晴らしい選手・チームと対戦できる楽しみもある一方で、簡単には勝てない相手だと思いましたが、選手全員が今できるプレーをすれば勝てると信じて臨みました。結果は負けてしまい悔しい気持ちもありますが、最後まで諦めずにいい試合ができたと思います」
試合後のミーティングでは涙も
岡山はそのまま勝ち上がり、秋の選手権4連覇・春の優勝と合わせて年間の完全制覇となった。NEXUSはベスト4の成績を残し、王者と拮抗した試合を見せその力を示した。林監督に2試合を通じた総括を訊いた。
「参加メンバー全員評価したいですし、特にバッテリーですね。試合の流れをつくり、守りや攻撃でもいい雰囲気で臨めました。
普段は違うチームの選手同士でコミュニケーションをとることも難しい中でも一つにまとまりましたし、短期間の中でチームの力というものを感じました。野球に対する気持ちやチームワークの大切さを改めて学べることができました」
また、監督そしてチーム全体にとって印象深い出来事があったと明かしてくれた。
「試合後のミーティングでは、『最高のメンバーで試合をやれて、野球ってこんなに楽しいんだと思えました』って、涙を流していた18歳の佐藤俊輔選手(ぎふ清流野球クラブ)が印象的でした。
他にも『この経験を活かしたい』・『このチームでまた試合をしたい』という感想が多くありました」
初日の懇親会では他チームの選手からも”質問攻め”に遭うなど注目を浴びた林監督。今後の身体障害者野球に向けて最後に語った。
「今回の経験を自チームなどに伝え、身体障害者野球をもっとたくさんの方に知ってもらえるよう今後も活動を続けていきたいと思います。また、一人でも多くのファンが増えることも願っています」
NEXUSの縁は選手権が終わってからも繋がっている。東京で行われるイベントには堀井ら滋賀の選手たちも来場する予定。ここで生まれた絆はさらに固いものになっていく。
(おわり)
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