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リコーブラックラムズ東京 後半15分間の猛攻で14点差を同点に。最終盤であと一歩及ばずも、今季リーグ戦1敗の相手に互角の戦いを見せる

3月23日、「NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2023-24第 11 節 東芝ブレイブルーパス東京 vs リコーブラックラムズ東京」の試合が行われた。

秩父宮ラグビー場で行われた”東京ダービー”は、後半の猛追で最後まで手に汗握る展開となった。

(写真 / 文:白石怜平)

前半は大きくリードを許す苦しい展開に

ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は試合前の時点で9勝1敗の2位でプレーオフ進出を目指す。それに対し、同じく2勝8敗と10位のブラックラムズ東京(以下、BR東京)は入れ替え戦脱出のために1戦必勝で臨む。

共に拠点を東京に置く”東京ダービー”となった。昨シーズンは17−7と10点差以内(BL東京が勝利)での試合に。

BR東京は今シーズンもクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦は17-18、コベルコ神戸スティーラーズ戦も17-27と上位チームに引けをとらない試合を繰り広げてきた。

相手は1敗しかしていない相手であっても、持ち前のハードワークと最後まで諦めない姿勢で十分勝機はあるチームである。

BR東京は前節に続き、キャプテンのHO武井日向がメンバーから外れた。

試合前の練習で一つになるBR東京フィフティーン

試合は開始5分に動く。BR東京は果敢に相手ゴールに攻めるも、パスの瞬間相手にボールを奪われてしまい、CTBセタ・タマニバルが一気に駆け抜けパスを受けたWTB桑山淳生がトライを決め先制点を挙げた。

しかし、BR東京もすぐさま反撃する。FBアイザック・ルーカスも素早いランを見せて前にボールを運んでいく。その後相手のペナルティからすぐにボールを受け取ったネイサン・ヒューズが一人でラインへと向かう。

肉弾戦が繰り広げられた後、ヒューズがもう一度ボールを受け取ると一気に飛び込みトライ。CTBマット・マッガーンもショットを決めてすぐさま同点に追いついた。

ヒューズが強いフィジカルを見せトライを決める

しかし、直後にBL東京のFB松永拓朗・WTB森勇登が2本と立て続けにトライを決められ(いずれもゴール成功)でリードを広げられてしまう。森の2トライはいずれも左端の空いた隙を攻められたものだった。

それでもBR東京は持ち前のハードワークを見せる。自軍スクラムからヒューズが1人でディフェンスを破り2本目のトライを決めた。(ゴール成功)

しかし、またもやBL東京に得点を許し14-33の19点差で折り返した。

ヒューズが前半で2本のトライを決めた

後半の15分間で脅威の追い上げで同点に追いつくも一歩及ばず

前半で大量リードを奪われたBR東京だが、後半は一転する。開始早々にWTB西川大輔がノーマークの右端からパスをキャッチしそのままトライ。(ゴール成功)

後半早々にトライを決め勢いづけた西川

その後も相手の連続シンビンを誘い出し、優位に進めるとその間に攻め込む。自軍スクラムからルーカスがそのまま走り抜け、タックルを受けながらも耐えグラウンディングを決めた。

スピードだけでなくフィジカルの強さも発揮したルーカス

さらにルーカスは猛スピードで相手の猛追をかわし一気に前へ出る。西川へつなぎハイパントでさらに前進すると、弾んで後退したボールをCTB礒田凌平がキャッチ。

そのままゴールラインへ飛び込むも惜しくも直前で手から離れてしまい、トライが認められず。

礒田のプレーは惜しくもトライには届かなかった

しかし、パワーだけではなくスピードを交えた攻撃は秩父宮を驚きの渦に包み、BR東京に確かな勢いをもたらした。

自軍ラインアウトからパスを回し前に進むと、西川が今度はショートパントでルーカス、そしてWTBネタニ ・ヴァカヤリアへとボールを繋いだ。そのままヴァカヤリアがグラウンディングしついに同点。

ヴァカヤリアのトライでついに同点に

最大21点差、後半開始の際は14点あったリードを15分以内で追いつき、試合を振り出しに戻した。秩父宮は悲鳴と歓声がこだまし、BR東京フィフティーンはその場で感情をあらわにした。

チームがさらに一つになった

変わってBL東京が攻め込むも執念のディフェンスでラインを超えさせなかったBR東京。一進一退の攻防が続く中、34分ついに動いた。

この日はCTBで出場したマット・マッガーンをシンビンで欠いた状態からスタートすると、BL東京のCTB眞野泰地が飛び込みトライ。均衡が破れるとゴールも決まり40−33。

BR東京はあと1分で逆転するなど、これまでも気持ちで負けないラグビーを見せてきた。しかし残り5分、逆転の希望を絶やさず向かっていくも無情にもノーサイドに。

優勝候補のBL東京と互角の勝負を最後まで繰り広げたが、惜しくも勝利には届かなかった。

試合後の記者会見

ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(HC)

会見に臨むヒューワットHC(写真提供:リコーブラックラムズ東京)

「前半はうまくプレッシャーを積み上げられず、ボールを長くキープできれば良いアタックができるのではないかと思っていました。

ただ、ハーフタイムにもう一度チームとしてつながることができ、後半に見せたファイトを誇りに思います。どちらに転んでもおかしくない試合でしたが、残念ながら今回は私たちのほうには転びませんでした」

──競った展開でしたがどのように評価していますか?

「前半は正しいエリアには行けていたのですが、ここでアタックができれば……というところでターンオーバーをしてしまい、ダメージを与えることができませんでした。もちろんミスはあるのですが、ミスが続いてしまうので改善が必要です。また、前半に取られたトライは簡単過ぎたので、見直します」

──マット・マッガーン選手をCTBにした狙いは?

「リスクも当然あったと思いますが、ベストプレーヤーをグラウンドに立たせたいという狙いがありました。今日はあのメンバー構成で良かったです。(SOの)中楠一期の周りに経験のある山本昌太やマッガーンを置き、アイザック・ルーカスは現時点ではFBがベストだと思っています。

マッガーンの一番良いところはコミュニケーションをすごくよく取れる点です。インサイドとアウトサイドのバックスをつなげてくれました。あと、必ず言及しておきたいのは礒田凌平についてです。

彼は毎週すべてを出し切ってくれます。試合のプレビュー記事などで名前は挙がらないかもしれないですが、自分のできることを必ずすべて全力でやってくれる選手です」

──アイザック・ルーカス選手も終盤はややスピードが落ちていたのでしょうか?

「そこはもっと練習しないといけません。ただ、動きが多い試合だったので、そこは彼が悪いわけではありません。後半35分に南昂伸がチャージをして、アマト・ファカタヴァが追いかけましたが転んでしまったシーンもありました。『今日はそういう日だったのかな?』と思います。私も椅子のギリギリのところに座って、ドキドキして見ていました」

──ハーフタイムにどのようなメッセージを送ったのでしょうか?

「シンプルです。アタックならフェイズを続けよう、ディフェンスはちょっと消極的なのでプレッシャーを掛けにいこうと話しました。あとはセットピースについてフォワード陣で話をしていました。すごく落ち着いていて、リーダーも話をしてくれて、必要だった微調整ができたと思います」

山本昌太 共同バイスキャプテン

会見でコメントする山本共同バイスキャプテン(写真提供:リコーブラックラムズ東京)

「率直に悔しいゲームでした。前半はBL東京さんにラインアウトでプレッシャーを受けましたし、相手にチャンスを与えたあとに粘り強さがなく、簡単にスコアされてしまって、自分たちにとって良くないプレーを積み重ねてしまいました。

ハーフタイムにどう戦うのかを修正して、後半のパフォーマンスにつながったことにチームの成長を感じました。この1週間、『勝ちたい』という意志を見せようとトレーニングをしてきて、そこを見せることはできたと思います。このマインドセットを次のゲームに持っていきたいです」

──これまでの1週間の練習で変えたことはありましたか?

「トレーニング内容やスケジュールは変わっていないですが、徹底的に準備をしようというところです。やり残したことはないか、自分にできることをすべてやったのか、ということを確認して試合に臨もうと言い続けてやってきました。良い1週間を過ごせたと思っています」

──前半はリズムに乗れなかった部分もあったかと思います。

「今季のチームとして成長しなければいけないところだと思います。その話はしていますが、実行力がついていない状態です。『いま、そういう場面だ』と気づけている選手と気づけていない選手がいます。

僕や松橋(周平)が早く気づいてチームとして実行する、というところまで前半はできていませんでした。ペナルティをしてしまう選手はもちろんですが、僕もリーダーとして成長しないといけないと思っています」

──ハーフタイムにどのようなメッセージを送ったのでしょうか?

「選手の中では、スコアを追いかけ過ぎずに、その場の一瞬、一瞬に必要なこと、シンプルなことをやろうと話して、グラウンドに立ちました」

次節は4月6日。BR東京は横浜キヤノンイーグルスと駒澤で対戦する。シーズン最後のホストエリア世田谷のファンの前で希望の灯を繋ぐ。

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