リコーブラックラムズ東京 「80分間黄色のジャージに向かっていく」最後まで諦めないラグビーで食らいつくも“東京ダービー”は東京サントリーサンゴリアスに屈する(リーグワン第8節)
3月2日、「NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2023-24 第8節 東京サントリーサンゴリアス vs リコーブラックラムズ東京」の試合が行われた。
厳しい寒さの中行われた”東京ダービー”は、予想もしない展開が待っていた。
(写真 / 文:白石怜平)
過去2年、両チームはクロスゲーム
戦いの舞台は秩父宮ラグビー場。チーム名に冠する通り、同じ東京を拠点に置くことから”東京ダービー”と称されている。両チームは昨年、一昨年と僅差の試合が行われている。
いずれもサンゴリアスが勝利しているものの、昨年は7-18・一昨年は33-36とブラックラムズはほぼ互角の勝負を繰り広げてきた。
今シーズンも上位チームと競った試合を展開しており、第6節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦は17-18、前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦は17-27と10点差以内と食らいついている。
今年もブラックラムズはサンゴリアスと互角の試合になることが予想された。
ブラックラムズは序盤から猛攻に遭い、大量リードを許す
サンゴリアスのホストとして行われた第8節は14時キックオフ。試合は2分に早速動いた。
ブラックラムズのペナルティからショットを選択したサンゴリアス。SO高本幹也が決めて先制すると、6分にはラインアウトからボールが5人と繋がり左端を走るWTB尾崎泰雅がトライを決めた。
序盤でビハインドを背負ったブラックラムズは、武井日向主将が試合前に呼びかけた「黄色いジャージに80分間本気で向かっていこう」の言葉通り、No8ネイサン・ヒューズもスタンドに音が響くほどのパワフルなタックルを見せた。
パスで繋がれながら懸命に守るブラックラムズだが16分、FB松島幸太朗にかいくぐられトライを決められた。(高本のゴール成功)
苦戦を強いられるブラックラムズ。さらにサンゴリアス主将のHO堀越康介に2トライを決められるなど前半を終えて0-29のリードを許す展開に。
ハーフタイムでは武井が「最初の10分が勝負」と発破をかける。しかし、無情にもその10分はサンゴリアス側に流れが行ってしまう。堀越にハットトリックを決められ点差が広まっていく。
さらに松島の50:22からラインアウトとなり、モールで押され追加点を奪われる。
これまでブラックラムズの得意としている攻撃を受ける形で劣勢のまま時間が過ぎていく。さらに追い打ちをかけるように反則からの失点が響き、0-62でノーサイドとなった。
試合後ヘッドコーチ・主将の会見
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(HC)
「タフな日になったかなと思います。スタートが悪く、長らくよくできていた部分も今日はうまく見せられなかった。意思・狙いの部分が必要なレベルではなかった。
サンゴリアスさんは優位な状況を与えたり、消極的になったりしてしまうと難しい相手です。それに加えて17対7というペナルティカウントになるとかなり厳しい。サンゴリアスさんはいいプレーをしたと思います。」
──いい試合、また力を発揮できないゲームもあります。その原因をどう分析しますか?
「複合的な要因だと思います。準備面もあれば、メンタル面やフィジカル面。。接戦を落とし感情的にも強く動くような状況が続いていたというのも負荷になったかもしれません」
──前の試合でも課題だったペナルティが今週も出てしまいました。
「タックルで消極的になってしまうとノット・ロール・アウェイなどのペナルティが増えてしまうし、スクラムでも消極的になるとペナルティを取られてしまいます。今後はペナルティ自体をもう一度見直していきます。とにかく我々としては一貫性を求めていきます」
武井日向キャプテン
「自分たちのDNA・泥臭さ・フィジカリティの部分を全く出せず、サンゴリアスさんにやりたいことをすべてやらせてしまった。ここまでの結果になってしまった原因は試合の入りから受け身になってしまい、それを最後まで改善できなかったことです」
ー紙一重の試合もあった中、うまくいかない要因をどう感じていますか?
「そこは今から考えていきたいです。サンゴリアスさんがアグレッシブにアタックして来るのは分かっていたことなので、そういう部分に対して正しいマインドセットで挑むことができたのかどうか。そこを反省したいです。
(中5日の)ショートウィークだったがやるべき準備はやれた。コミュニケーションもとれていてプレーへの不安はなかった。ただ、いい試合を何回もしてきたからこそ、今週もそういう試合になるんじゃないかという慢心はあったかもしれない。そういうところは僕自身も含めて気を引き締めていきたい」
──今後の具体的な改善点を教えてください。
「一人ひとりの役割の精度だと思います。キャリーする選手にはその仕事があるし、サポートプレーヤーにも仕事があります。一人ひとりのやるべき役割をその瞬間で100%実行できないと、リーグワンのチーム相手にはミスを招いてしまうので、一人ひとりの精度をもっと上げていく必要があります」
これで全日程の半分を消化。ブラックラムズは現在10位ではあるが、紙一重の試合も多くあるなどまだまだ上昇の可能性はある。
試合後のチームSNSのコメントで西和磨選手・西川大輔選手が揃って「切り替えて次に臨む」と語るように、ブラックラムズらしい”最後まで諦めないラグビー”を今後も見せつける。
(おわり)
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