• HOME
  • 記事一覧
  • 野球
  • 【新連載】戦場への帰還 ~不屈の精神と長き闘いの記憶~ 元中日・吉見一起 トミージョン手術「怪我の知識を頭に入れて、興味を持つべき」

【新連載】戦場への帰還 ~不屈の精神と長き闘いの記憶~ 元中日・吉見一起 トミージョン手術「怪我の知識を頭に入れて、興味を持つべき」

積み重ねた鍛錬で培ったパフォーマンスで観るものを魅了するアスリートたち。一瞬一瞬に神経を研ぎ澄ませたその姿は、人々に勇気と感動を与え続けている。

しかし、その代償として時に大きな怪我や病気を患い、長期離脱を余儀なくされるケースもある。限られた選手寿命の中で1年以上、長ければ数年もの間表舞台から遠ざかるアスリートもいる。

それでも、不屈の精神で乗り越え再び戦いの場へ戻り、引退した方は後世へ自らの経験を伝え続けている方々も多くいる。新たな連載企画として、長期のリハビリから這い上がってきた現役・元アスリートたちにスポットを当ててお送りする。

第1回目は元中日ドラゴンズ投手の吉見一起氏。吉見氏は05年ドラフト希望枠で中日に入団し、以降は2度の最多勝に輝くなど5年連続二桁勝利、11年には投手4冠に輝くなどドラゴンズのエースとして活躍した。

その一方、右ひじには野球生活で計5度の手術を受けた経験を持つ。特に2013年は内側側副靭帯再建手術(以下、トミー・ジョン手術)で1年以上の治療・リハビリを経てマウンドに戻ってきた。

今回は吉見氏がリハビリ時に感じた教訓そして今後伝えたいことなどを紹介する。

(取材協力:日本プロ野球OBクラブ、写真/文:白石怜平、以降敬称略)

1974年に初めて行われた通称:「トミー・ジョン手術」

トミー・ジョン手術とは、内側側副靭帯という肘の内側の筋肉下にある靭帯が損傷ないしは断裂したものを再建する手術である。

米国の整形外科医であるフランク・ジョーブ博士が考案し、1974年に当時ドジャースで活躍していたトミー・ジョンが受け復活を果たしたことから呼ばれている。

なお、トミー・ジョンはメジャーで288勝を挙げた名投手で、手術後も14シーズンにわたりプレーし164勝を挙げている。

手術方法としては、患部と反対側あるいは同側の前腕部にある長掌筋(ちょうしょうきん)の腱などの一部を摘出し、これを上腕骨と尺骨に作った孔(あな)を介して固定することで、靭帯の代わりになるように移植する。

なお、全体の10~20%は生まれつき長掌筋がないと言われており、その場合は脚の腱を採取したり人口靭帯を活用するケースもある。

この移植した腱組織が靱帯の代わりとして患部周囲に定着させることで機能していくのだが、定着するまでに時間がかかるため、長期的なリハビリ加療が必須である。術後から数えると実戦復帰までにはおよそ1年~1年半を要する。

ただ、現代では成功率 が80%~90%と言われ、メジャーでも大谷翔平やダルビッシュ有・松坂大輔、日本でも桑田真澄(現:巨人1軍投手チーフコーチ)や館山昌平(元ヤクルト)など過去多くの投手が手術を受け、復活を果たしている。

次ページ:13年、吉見はトミー・ジョン手術を受ける

関連記事一覧