リコーブラックラムズ東京 2022-23シーズン報告会 「トップ4と戦える力がある」初の公開記者会見で明かした確かな自信と地域への浸透
5月27日、東京・世田谷区で「リコーブラックラムズ東京 2022-23シーズン報告会」が開催された。チームでは初の公開記者会見に臨み、シーズンでの戦いそして世田谷区との取り組みについて報告した。
(取材協力:リコーブラックラムズ東京 、写真 / 文:白石怜平)
チーム初の”公開記者会見”を実施
シーズン報告会の会場は「二子玉川ライズ ガレリア」。二子玉川ライズは、年間来場者数が3000万人を超える二子玉川駅直結の複合型商業施設。
ブラックラムズも世田谷区に拠点を置いている縁から、21年12月に二子玉川ライズとオフィシャルパートナー契約を締結。以降、2022シーズン報告会そして昨シーズンの出陣式もここで行われてきた。
二子玉川駅の改札を降りた目の前には”ブラックラムズ仕様”のゲート
11時からアトラクションがオープンすると、黒のジャージを身にまとった多くのファンが列をつくった。12時からは公開での記者会見。ファンの前で記者会見を行うのは初めての取り組みである。
壇上には西辻勤GM・SH山本昌太選手、FBメイン平選手、HO佐藤康選手の4名が立った。この日の司会そしてシーズンではホストゲームのスタジアムMCを務めているシン.Kさんからコールされると、多くの拍手に包まれた。
3選手が振り返る2022−23シーズン
まずは、「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(以下、リーグワン)の2年目となったシーズンをそれぞれが振り返った。日本ラグビーの最高峰リーグの最上位グループ”Division1”に所属するブラックラムズ。2022−23シーズンは6勝10敗で12チーム中7位の成績だった。
山本昌太選手は昨シーズン、リーダーズグループの一員として牽引。チームの成績を最初に振り返った。
「順位としては決して満足いく結果ではなかったですが、チームとしては着実に前を進んでいる実感を得られるシーズンだったと感じています」
そう感じられた理由を問われると、開幕から連敗した当時のことを明かしてくれた。
「開幕から2連敗していいスタートが切れず、3試合目でようやく勝つことができた。連敗中もチームが下を向くのではなく、自分たちと向き合い、どうあるべきかを考えながら前に進んでいけた。
試合が終わって翌週試合が来ますが、勝っても負けても自分たちと向き合い、時には厳しいことも言い合いながら、次の準備に進むことができたのでそこがいい点だったと思います」
続いてはメイン平選手。本職はFBであるが、昨シーズンはWTBにも挑戦した。シーズン途中に怪我で戦線を離れてしまったが、バックスとして様々な場面に対応し、チームに貢献してきた。
「今年は初めてウィングに挑戦し、分からないこともたくさんありました。それでも離脱した選手の分をカバーするためにも、複数ポジションをできた方が有利になると思いますので、しっかり自分の武器としてやっていきたいです」
昨年6月には日本代表初キャップを獲得した。ファンは黒だけではなく桜のジャージを身にグラウンドで躍動する姿を楽しみに待っている。そのことを聞かれると「頑張ります!」と宣言した。
選手での最後は佐藤康(こう)選手。ルーキーイヤーとなった昨シーズンは、第8節の東京サントリーサンゴリアス戦でリーグワンデビュー。
「後半の途中から出場しましたが、緊張であまり覚えてなかったです」とデビュー戦の思い出を語った。
翌9節の花園近鉄ライナーズ戦では初スタメン出場し、前半2分でトライを決めるなど勝利に貢献。以降はHOのレギュラーを獲得し、チームの納会では新人賞に選ばれた。
「自分ではこんなに試合に出ると思っていなかったので率直に驚いています。とても良い経験になりましたし、いいシーズンでした」
覇者相手に見せつけたブラックラムズの”DNA”
この会見では、チームとして「自信を掴んだ」「来年へつながる」という前向きなフレーズを多く聞くことができた。
メイン平選手がシーズンで印象に残った試合について、昨年のリーグワン覇者であるクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦(第6節:江戸川)を挙げた際に、こう語っている。
「この試合は38-40と2点差で負けてしまったのですが、優勝チームを相手に自分たちのDNA=泥臭さを体現できた試合でした。ここでチームとして”トップ4を相手にも戦える力がある”と肌で感じたいい試合でした」
西辻GMもこのコメントを踏まえ、
「4試合が7点差以内でしたし、確実に接戦が多かった粘り強くなったなという印象です。それが今シーズンのブラックラムズ。平も話してくれましたが、選手たちがベスト4を相手に接戦を戦い、『自分たちも目指せる』と自信をつけたシーズンだったと思いますし、来シーズンこそやってくれると信じています」
と語るとともに、山本選手も「トップ4に向けて考えると全く手の届かないところではないと感じました。必ず来シーズンそこに届くように今一度やってきたいと思います」と、ファンに更なる飛躍を誓った。
ブラックラムズのDNAは”ハードワーク”・”最後まで泥臭いラグビー”。昨年取材した、キャプテンの武井日向選手、そして松橋周平選手も揃えて口にしていた。
昨シーズン、ブラックラムズに加入した佐藤選手にもそのDNAを感じた場面について問うと、
「練習の時からハードワーク・泥臭さがありました。練習でやってるからこそ試合にも出ているんだなとこの1年感じてプレーしていました」
と話し、そのDNAは脈々と受け継がれていると感じた。
着実に浸透している地域活動
西辻GMは運営面においてもシーズンを振り返った。何より心に残ったのが、最後のホストゲームである4月の秩父宮ラグビー場。秩父宮真黒(シンクロ)計画”と題し、チーム史上最多入場者数の11,060人を記録した。
天候が不安定な中、1万人を超えるブラックラムズファミリーがスタジアムを黒く染め、選手たちを大きく後押しした。ただ、ここに来るまでには苦労もあった。実は、開幕戦に1万人動員を目指したのだが、惜しくも届かなかったことを明かした。
「選手たちにたくさんのファンの前でプレーしてほしい想いがありました。開幕戦で1万人動員を目指しましたが及ばず、必ずどこかの試合で目標を達成したい。それを最終戦に持ってきました」
ホストゲーム最終戦をリベンジの場に設定し、最後に達成することができた。この経験も確かに来シーズンへとつながるものだった。
「注目されるというのは、プレッシャーを受けることでもあると思いますが、もっともっと自分たちの価値・プライドを感じてほしいと思っています。
一方でビジネスサイドのメンバーたちも、これまで達成できなかったことを達成できた。一つ自信になると思いますし、成功体験となったので次につながるシーズンだったと思います」
そして、チームにおいて大きなパワーの源となるのが地域密着。西辻GMが先頭に立って世田谷区との関係を深めていった。
すでに2021−22シーズンから昭和女子大学ともパートナーシップを結ぶなど、120を超える団体と繋がっていた。
昨シーズンは自治体との定例ミーティング開催や駒沢や三軒茶屋の商店街にも積極的に足を運ぶなど、その地盤をより強固にしていった。これらの地道な活動について確実に手応えを感じていた。
「ホストゲームの8試合で約42,000人の方が応援に来てくださって、その3割が世田谷区の方々です。これはリーグワンの1年目と2年目で大きく違う点でして、自分たちの取り組みが浸透していると感じています」
西辻GMそして、チームスタッフは地域への想いも熱く持っている。チームとして持つ考えを共有した。
「お金をかけてプロモーションすれば、いろいろなことができると思いますが、それはチームとしてサステナブルではないです。もっと地域と密着して、近い距離で接点を作るのがブラックラムズの良さだと思っているので、今後も接点をたくさん作っていきたいです」
30分かけて行った記者会見の後は、シーズン報告会を開催。総勢36名の選手が一堂にファンの前へと姿を見せた。
(つづく)
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