「私は絶対に戻るので」語り合った復帰後のビジョンとは?ミズノ・藤田真之介さんと池江璃花子選手 復活を支えた絆のストーリー(後編)
その中の一つに挙がったのが広告の起用だった。上述の通り19年4月の日本選手権でも広告に起用するなど、プールから離れてもミズノの”顔”として大きな存在感を放っていた。
しかし、池江選手のことを人一倍慮っていた藤田さん。”広告にするのはプレッシャーになるのではないか”そんなことも頭によぎっていた。また、世間からも心配の声などさまざまな意見が会社に寄せられていた。
「自分がプールにいない中で水着を着た自分が広告として出ているので、彼女にとってどんな心境なのか。それは本人にしか分からないので、3回目に伺ったタイミングで『(広告は)このままでいい?』と直接確認しました」
病室で問われた池江選手は力強い言葉で即答した。
「私は絶対に戻るので、そのまま使ってください」
藤田さんもこれまで抱いていた迷いが一気に吹き飛んだ。
「よし、わかったと。世間からいろんな声がありましたけれども、本人から言葉をもらったことによって迷わず進めました」
ここで話したのは広告に関することだけではなかった。会話を重ねるほど池江選手の熱い想いが伝わってきていた。
「ミズノでは池江選手の監修した『Ri Collection』というブランドを展開しています。池江選手の個性がたくさん詰まったものを商品化しようというコンセプトなのでそれもどうするかと。
『やりたい。やっていきたいです』と言ってくれた。ただそのためには打ち合わせをする必要もあります。もちろん、こちらから安易に連絡などできないですし、対面で打ち合わせするのも難しいですよね。
なのでそこは忌憚なく『ダメな時はダメと言ってくれ。連絡したい時は、遠慮無く連絡するから』ということでやり続けました」
堅い信頼関係のある両者、配慮や気遣いがあることは十分伝わっていた。その後はお互いに遠慮なく連絡し合い、打ち合わせも重ねた。
その間に商品に向けたコンセプトを詰めていき、直筆のメッセージを贈ったりなど、池江選手も協力を惜しまなかった。
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