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横浜DeNAベイスターズが構築する「自己進化型組織」部長4名によるトークセッションで明かされるマインドセットの落としこみとは?

昨季26年ぶりの日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズ。

2020年の夏から採用している「自己進化型組織」によってビジネスそしてチームが一体となり、頂点を勝ち獲った。

この組織づくりを共有し、日本全体に変革を起こすきっかけとするべく1月某日に特別セミナーが開催された。今回はそのプログラムの一部として、最終日に行われたトークセッション編を特集する。

>初日の自己進化型セミナー編はこちら

(写真 / 文:白石怜平)

部長陣4人によるトークセッション

今回セッションに登壇したのは以下の4名。

・青木慎哉 コミュニケーション統括部 ライブエンターテインメント部 部長 
・河村康博 ビジネス統括本部 MD部 部長
・清水建人 ビジネス統括本部 営業部 部長
・渡辺誉志 コミュニケーション統括部 統括部長 兼 広報部 部長

部長としてメンバーに自己進化型組織を浸透させる役割を担う4人が、導入してから現在までの話を共有した。

まずは自己進化型組織で運営するために必要な、個の進化のための考え方「EM(エッセンシャルマインドセット)」と進化を促す環境づくりの考え方「EL(エッセンシャルリーダーシップ)」の研修を受けた印象について。

それぞれが共有する中、清水氏は「学んでいく中で完成度がとても高いと感じられた」と述べた。

清水氏は部活動でキャプテンを務めるなど、学生時代からリーダーの役割を担うことが多かったという。

「学生時代から『どうやったらチームとして結果を出すことができるか』にずっと向き合っていましたし、大学では経営学を学んでリーダーシップやマネジメントについて卒論を書いていて、かねてから興味がありました」

そんな清水氏が研修を通じて感じたのが「ただの精神論ではなく、科学的根拠に基づいているというので、僕はすごく腹落ちできる部分がたくさんありました」ということだった。

様々なリーダー論の中でも腹落ちする考えだったという清水氏

前編で紹介した、自己進化型組織を球団に導入した川尻隆・組織改革アドバイザーは”個”と”組織”のアプローチについて、科学的な根拠を用いながら解説していた。

「EMや自己進化型組織は、生物学や進化といったサイエンスから立ち上がっています。人が生きてるという現象は有機体として存在している状態です。

有機体としての生命活動を理解すると、それは組織の活動に対しても理解が深まっていくことにつながっていく。そう考えました」

2人が明かすEMの「落としこみ」

次のテーマは、EMを自部署に向けてどのように落とし込んだのか。青木氏は遠方へ合宿に行ったことを明かしてくれた。

「23年当時広報にいた時に、チーム側の部長と役員が軽井沢のキャンプ場に行ったと聞いてそれがすごく良かったと聞きました。

それなら我々もやろうかという話をしていて、業務の都合もあるので一度葉山町に半日行きまして、チームビルディングとしてカードゲームをしたり焚き火で語り合ったりしました」

場所を変えることで仕事とは違う話ができたことに手応えを感じ、昨年7月にはついに軽井沢で2日間かけた合宿が実現したという。

「人それぞれバックグラウンドや経験が違うので、いろんな話が聞けました。『この人はこういう考え方を持っているんだ』と分かりましたし、それ以降距離がグッと縮まった実感がありました。

軽井沢で1泊したメンバーとの間で、焚き火を囲みながら『なぜベイスターズで働こうと思ったのか』『なぜ働き続けているのか』といったテーマで始めると、みんな深夜まで語り合うような、そういう関係性になったのも大きかったです」

合宿を通じてEMをさらに浸透させた青木氏

河村氏はメンバーとのコミュニケーションを通じて浸透を図った話を披露した。

「一方通行で考えを伝えるのではなく、互いにコミュニケーションをとっていったことが良かった。メンバーからもそういうフィードバックがありました。

実際に(EMを)取り組んでみた上で、疑問点などを洗い出す過程で同じ疑問を抱いていることもありましたし、逆に違う視点を持っていることもわかりました。各々が感じている意見をシェアできたのは重要な機会だったと思います」

続けて河村氏はメンバーにある“お願い”をしていたという。それは価値観の多様性を充実させることに繋がっていた。

「MD部は新卒社員からMDの経験が長い社員もいて、考えや経験のバラエティに富んでいるので、良い相互作用になっています。

私がお願いしたのは、『仕事でもプライベートでもEMを通じて変化したことがあれば、みんなの前で共有してもらいたい』ということです。

場を作ることで、その良い効果をチームやグループ全体に向けて還元してほしいと考えていたので、それを促すことを年間通して行っていました」

コミュニケーションを重ねることで部での理解を深めたという河村氏

ここではEMに加えてEL研修を受けて良かったことがあったとし、河村氏はさらに続けた。

「ELで学んだことの一つに、『失敗を許容する』というのがありました。失敗しないと人は成長しないので、マネジメント側が失敗できる場を作る。それを振り返ることが個々の成長にとって重要なのだと。

それがすごく私が楽になった考えでした。失敗はできないし、させてはいけないと自分で思い込んでいる節がありましたが、そうではないのだと。

まずチャレンジをして”できたこと”と”できなかったこと”を振り返り、後者は次どうすればいいかをチーム内で話せるようになりました。ELの考え方には常に立ち返っていますし、心の拠りどころになりました」

この”立ち返る”ことは、川尻氏が自己進化型組織で重要な項目に挙げていた一つだった。

「他の考え方と何が違うかと言うと、立ち返る場所があることです。サイエンスを基本にして立ち上がったのが自己進化型組織です。

立ち返る場所がないと、仮にうまくいかなかったときにあれこれ手段を探してしまう。立ち返る場所があることが我々が強くなった所以なのです」

ベイスターズのジュニアチームで実践された”意見表明と意思決定”

続いてのテーマは自己進化型組織を導入後、実際にどんな変化が見られたか。

ここでは渡辺氏があるエピソードを披露してくれた。渡辺氏が昨年まで部長を担っていたスクール事業部では、「横浜DeNAベイスターズジュニアチーム」を運営している。

同チームではかつて選手として活躍した荒波翔氏が監督・飛雄馬氏がコーチを務めており、2人のやりとりがまさに自己進化型組織を体現しているものだった。

「自己進化型組織というのは『多様性を認める』という考えに基づいています。例えば飛雄馬コーチは荒波監督に『今日、〇〇選手はこういう状態なので、この打順がいいと思います』と提案します。

ただ、提案通りにならないケースもありますよね。その時コーチは『自分の言うことが通らなかった』『意見が合わない』などと感じるかもしれない。でも、飛雄馬コーチにはそう思わなくていいと伝え続けていました」

ジュニアチームにおいて自己進化型組織を実践している話を披露した渡辺氏

川尻氏は初日の講義で自己進化型組織の仕組みについて説いていた。その内容がこの後の話へと繋がっていく。

「自己進化型組織の仕組みは、意思決定者は一人です。メンバーレイヤーが意見表明をして、情報をインプットする。多様なインプットを基に意思決定者が判断をします。

意見表明をしたメンバーも参加しているので、前向きな納得を持って物事を進めることができるんです」

渡辺氏も上記を言語化しており、以下のように続けた。

「意思決定者は監督。飛雄馬コーチは意見表明者として、自身の提案が採用されようがされまいが、『自分が監督だったらこう考えます』と監督に様々なインプットをする役割です。

ですので仮に不採用になっても100点なんです。監督に意見を伝えることが大切で、それでジュニアトーナメントを戦ってくれて、飛雄馬コーチは以前よりも監督に意見を言えるようになった“変化を”感じてくれたのです」

受講者からの質問も交えながら、約4時間に亘るセッションを展開した。今も全員で自己進化型組織の強化に毎日向き合っており、その強さは日に日に強固なものになっている。

(おわり)

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