鈴木啓太が明かした「アスリートと一般人の腸内環境に違いがある」検体取得に奔走した日々から発表に至るまで

サッカー元日本代表、浦和レッズで活躍した鈴木啓太氏は現在、株式会社AuB(本文以下、AuB)の代表として腸内環境の研究や情報発信などを行い活動の幅を広げている。

今回、鈴木氏がなぜ腸内環境の重要性を感じたのか、そして立ち上げたAuBをどのようにして成長させてきたのか。全4回の連載企画としてお送りする。

第2回は、アスリートへの協力依頼を始めた初年度から、研究結果が出て学会への発表に至ったプロセスを振り返る。

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(取材協力 / 写真提供:AuB株式会社 ※以降、敬称略)

初年度は検体を集めることが中心に

現役引退から約3ヶ月経った16年1月、鈴木はAuBの代表取締役に就任。ラグビー日本代表の松島幸太朗選手やプロ野球・東京ヤクルトスワローズの嶋基宏選手などを始め、交流があったりトレーナーなどを介して紹介してもらったアスリートに便の提供を依頼し、奔走する毎日だった。

「とにかく会ったアスリートにお願いしていました。当時はどれだけのフィードバックを返せたかというと、足りない部分がたくさんあったと思います。それでもこちらのビジョンを伝えることで、少しずつ理解者が増えていきました」

アスリートにお願いをして回った初年度だったと語る

鈴木の想いが通じ、サッカー選手だけでなくラグビーや野球、陸上など競技の枠を超えて協力するアスリートが増えていった。

「トレーナーの方においては、選手へアドバイスするために少しでも有益な情報があればということで、まだまだ研究段階であることは理解した上で、腸内細菌というものに興味を持っていただきました。

あと栄養士の方々もですね。同じ食事を提供してるのにA選手とB選手とでは体重の増え方が違う。体作りを提供している側からするとそれは不思議なことだと。

そこに腸内細菌というのが確実に関わっているかはまだ不透明ですが、一度調べてみたいということで、選手を紹介いただきました」

アスリートに適切なフィードバックをするため、初年度はアスリートの検体を集めることが中心に。

「1年目はとにかく集めて解析してみるという段階でした。フィードバックに関しては、2年目からになるのですがその間は出てきたデータについて仮説を立てる段階でしたね」

また、検体採取と並行して大学との共同研究を開始。インキュベーション(起業家の育成や、新しいビジネスを支援する施設)内に研究設備を設け、腸内環境の解析も行っていた。

16年4月に外部委託でジョインし、17年4月にAuB社の取締役に就任した冨士川凛太郎氏が中心になって動いた。

「研究に関しては、冨士川が教授などと連携して進めています。僕ももちろん教授と会話することはありますけが、主に『なぜこういう研究をしたいか』といったビジョンを話しています」

1年目は鈴木を中心に1人1人と会い、アスリートの検体を集めることに集中した結果、300人分の検体が集まった。

17年からジョインし、現在取締役の冨士川凛太郎氏

2期目にはアスリートへのフィードバックを開始

2期目の17年から、いよいよアスリートへのフィードバックを開始することになる。ここでは、腸内環境を数値化し、その時点で発表されている文献などと照らし合わせてコンディションとの関連性等について説明をしていた。

「今はデータ出しのフェーズまでは委託していますが、当時は自分たちでラボ(研究設備)を持って腸内細菌の解析を全てやっていました。そこで整理をしつつアスリートのデータが集まり始め、フィードバックまでできたのが17年でした」

この年から大学との共同研究を本格的に開始する。9月から至学館大学(愛知県)と「食と腸内環境」をテーマに開始し、以降は大学に加え大手企業などとパートナーを増やしていくことになる。

研究テーマも、鈴木の経験が活きたものになっている。サッカー選手として築いてきたアスリート目線に立ち、「体重コントロール」や「筋力」、「メンタル」という選手の課題をメインにテーマを設定した。

1年目に得た検体をさらに増やすとともに、研究にもさらに力を入れた17年。それは翌年への弾みとなっていった。

3期目には国内最大級の学会で研究発表

3期目となる18年、AuBは外部に向けて研究成果の発表を開始した。

3月に、国内最大級のバイオ系学会である日本農芸化学会で初めて研究成果を発表した。その内容はAuB社が設立以来、追い求めていたテーマである「アスリートと一般人の腸内環境の違い」。

約 300 人以上のアスリートの便を解析し、「アスリートは特徴的な腸内環境である」ことが鈴木が仮説を立てていた通り分かったのだった。

アスリートと一般人を比較したデータ

同年の9月には 「高齢者のアスリートと一般高齢者の腸内環境の比較」に関する研究を、日本体力医学会で発表。

アスリート(マスターズ陸上の選手)の方が一般より、感染症リスクが低い(病原菌を含む種類の菌が少ない 病原菌の発現率が低い)傾向があるという内容である。

さらに翌10 月、日本農芸化学会の関東支部会でアスリートは「酪酸菌」が優位に多い特長があることを発表。

「酪酸菌」は、免疫機能を整えたり、腸の動きを活発にしたりする働きがある菌で、アスリートは一般の方の約2倍あることを突き止めた。(一般の方は腸内細菌の全体数のうち 2〜5% が酪酸菌なのに対してアスリートは 5〜10% と約 2 倍の割合)

アスリートの腸内環境は多様性が高いことを立証しながら、腸内細菌研究に関する知見を蓄積していく。この年はシステムも強化。より効率的にデータ解析ができるようAIシステムの開発に着手した。

「我々が多くの検体を集めたときに、どんなデータが導き出せるのかということもあり、機械学習で見ていく事をやり始めました」

検体数も順調に伸ばし、18年度の時点では500名・検体数は1,000を超えた。しかし、研究成果も発表し順調に見えた中、19年は会社存続の危機に晒されることになる。

つづく

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