「第3回デジタル野球教室」杉谷拳士特別コーチが登場!データとマインドセットから説く上達へのアプローチ

5月24日、都内で「第3回 デジタル野球教室」が開催された。

今回はスペシャルコーチに杉谷拳士さん(元北海道日本ハムファイターズ)を迎え、参加した選手たち全員が“前進”する時間となった。

(写真 / 文:白石怜平)

中学生を対象にした最先端の野球教室

本野球教室はプロも活用する最先端の計測機器を使用し、デジタルを通じた技術力向上を支援する取り組みとして行われている。

計測機器はRapsodoやトラックマンB1、MA-Q、BLAST、TechnicalPitchなどを使い、球速やスイングスピード・打球速度などを計測。これらをコーチの指導と組み合わせながら、スキルアップを図っている。

目標とする指標を定めることで、自身にとって最も効果的なトレーニング方法を考える体験を積むことができる。

プロ野球団向けにチーム強化システム「Fastball」を提供するライブリッツ株式会社が運営し、昨年の2回開催に続き第3回が行われることとなった。

ここでは、かつてプロ野球の世界で活躍を見せた名選手を招く特別コーチも大きな魅力。第1回は青木宣親さん、第2回は五十嵐亮太さんが務め、トークショーでも金言の数々が送られた。

対象は中学生で、ライブリッツ社の将来大学や社会人そしてプロへと羽ばたく力になりたい想いが込められている。

毎度豪華なスペシャルコーチが指導を行っている

第3回のスペシャルコーチは杉谷拳士さんが担当。大きな拍手で迎えられた杉谷さんは自身の出身校である帝京高校にちなんで「”魂”を持って一緒にやっていきます!」と会場を熱気に包んだ

魂のコーチ、杉谷拳士さんが登場し早速盛り上げた

打撃コーチは過去2回に続き松井淳さん(元東京ヤクルトスワローズ)、投手コーチは第1回でも担当した内田聖人さんが務めた。

各コーチがデータを活かした指導を展開

今回は18人が参加し、スタンドティー2箇所そしてピッチングの3箇所をローテーションして回った。

ティー打撃では松井さんが、一振りごとに数値をチェック。

「バットが背中まで回っても良いから腰を回し切ろう」
「踏み出す足で弧を描き、間を長くとる・体重を乗せて振り切る」

などとアドバイスすると、打球速度が見る見る変わっていく。保護者やコーチがその変化に驚きと拍手を送っていた。

冒頭の挨拶で「飛距離が20メートル伸びる指導をします」と語った通り、指導の結果が数字になって表れていた。

しっかりタメて打つ重要性を説いた松井コーチ

ブルペンの内田コーチは、選手たちの緊張をほぐすように前向きな声をかけ続けた。

「上半身で投げる意識が強すぎるから、下半身が回って初めて上がついてくる。まずは遊びの中で投げて感覚を掴んでみよう」

「肘を伸ばした位置で上から斜めに強く振る。自然と腕が伸びたところでね」

数値を1球ずつチェックしつつ改善点をその場で伝えると、こちらも数値だけでなく、捕手のミットに乾いた音が響き渡った。内田コーチもその時は「ナイスボール!」とさらにやる気を引き出した。

内田コーチも元気な声がけで選手を活気づけた

そして杉谷さん。打球速度と角度をその場でチェックしながら、全員に一貫して「ピッチャーの頭を意識してまず強く!角度はそこからつけていこう」とアドバイス。

大きく舞い上がる打球からライナーで強く速い打球へと変わっていき、お互いに喜び合う表情も見ることができた。

強く速い打球を打つようアドバイスした

チームが負けていても“自分にとってはチャンス”

指導後は計測を活用したコンテストを行った後はトークショーへ。プロの世界で14年もの間生き抜いた杉谷さんが、参加した選手たちへ未来の道標を開いた。

まずは野球教室の主題でもあるデータ活用について、自身の学生時代の頃と重ね合わせた。

「データが出るからこそ、もっと努力して上手くなりたいと思えるのではないかなと。僕も皆さんと同じ年代くらいにあって欲しかったと率直に思いましたね。

出力を上げて見て筋量が増えているとか、そこと照らし合わせながらスイングスピードを上げたりとかやってみたかったです」

指導の次はトークショーが開催された

ここからは質問コーナーが設けられ、選手たちからさまざまな質問が寄せられた。杉谷さんは選手の話ぶりを見て「もっと声出すと印象変わるよ!」などと、振る舞い一つにも丁寧に助言を送った。

最初は「どうして杉谷さんは頭の回転が速いのですか?」という問いに答えた。

「小さい頃からコミュニケーションを取るのがすごく好きなんですよ。友達や目上の人、後は知らない人とも話すこともです。そういったチャレンジ精神があったからだと思います」

この“コミュニケーション”は野球にもつながると説く。チームメートだった選手たちの例を交えて以下のように続けた。

「レギュラーに駆け上がっていく選手、例えば、ソフトバンクの近藤健介やヤクルトの西川遥輝。 それこそ今の大谷翔平といった選手たちは『自分はなぜこれができないんだろう』と思ったときに、先輩たちに聞く勇気があったんですよね。 若手の頃から。

稲葉(篤紀)さん選手だったり、糸井(嘉男)さんだったりにスイング軌道や『このボールってどう打っているんですか?』って、自分が納得するまで話しに行く勇気がありました」

一流選手の姿勢もここで明かした

もう一つは野球に関して、「試合で負けムードになったらどうしていますか」。ここで杉谷さんは「僕の場合はチャンスだと思っていました」と答える。

「僕自身はレギュラーではなかったので内野も外野もやるし、守備固めに代打代走。いろいろな場面で起用されます。毎日どこで出るか分からない状況なので、一発で決められた時の喜びってレギュラー陣には味わえないんですよ。

なので、監督にとってすごく印象に残ります。僕は14年やってほとんど二軍へ行かずに一軍のベンチにいられているんです。チームにとってのピンチは僕にとっての一番のチャンスでした。

負けている場面で一緒に沈んでしまうのではなく、“自分にとってはチャンスなんだ!”。そういうマインドでいてほしいです」

データ活用が上達の近道に

約4時間にわたる濃密な野球教室を終え、最後に杉谷さんから直筆のサイン色紙が一人ひとりに手渡された。杉谷さんは終了後に野球教室を振り返った。

「自分がどういった状態なのかを分かってほしかったのと、あとは中学生ですので純粋に野球を楽しんでもらいたいという想いでした。

データを見ることによって、練習方法を変えられるいい機会だと思います。若いうちに練習方法の改善や自分のやり方をモノにできるとよりいいですし、その近道になりますので」

楽しみながら選手としての未来に導く時間になった

現在、杉谷さんはNPBやMLBの取材に各地を回るなど多忙な日々を送っている。その中でデータ活用がパフォーマンスアップに大きな力となることを肌で感じていた。

今回のように自身が指導するにあたっての考えも添えて、最後に語った。

「僕もアメリカに足を運んで球団のお話も直接聞いてますし、データを活用することで、メジャーで一気にトップ選手に駆け上がっている若手選手たちも見てきています。

若い選手たちにどんな話をしたらいいかを整理することは自分自身の勉強にもなりますし、アプローチの仕方だけ間違えないようにしたいです。

1人でも多くプロ野球選手の世界に入ってもらいたいので、これからもその力になっていきたいです」

(おわり)

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