
Baseball5を学校教育の場へ。Spirit Bonds主催「第2回スピボン杯」は教員が主役に
5月某日、文京区の湯島小学校でBaseball5の体験イベント「第2回スピボン杯」が行われた。3月に行われた第1回に続き早くも開催された第2回では、あるテーマに絞られたものだった。
(取材 / 文:白石怜平、表紙写真:チーム提供 ※以降敬称略)
「Spirit Bonds」が主催する2回目の冠大会
「第2回スピボン杯」は、都内を中心に活動するBaseball5チーム「Spirit Bonds」が主催したイベント。
Spirit BondsはかつてBCリーグでプレーするなど野球選手として活躍し、Baseball5では22年に日本代表として日の丸も背負った宮之原健が創設した。
昨年4月に発足した新鋭チームは、宮之原が自らの情熱を形にしていきチームは瞬く間に拡大していく。
15歳以上のオープンの部に加えて、発足後から約半年後の9月下旬にはユースチーム(15歳から18歳までが対象)である「Spirit Bonds YAMASAKI」も立ち上げた。
両チーム共に今年1月の「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回 Baseball5 日本選手権」でベスト4の好成績を挙げているなど、強豪チームへの階段を駆け上がっている。
3月にはチーム初の冠大会として、「第1回スピボン杯」を開催。
「Baseball5の魅力を様々な世代の方々に実際にプレーすることで感じていただく。また、この競技のファンを増やしたい。全員が輝ける場になるような大会にしました」と、宮之原らチームの想いを表現する場になった。

100人を超える参加者が全員コートに立ち、年代も男女問わず10代〜70代と幅広いメンバーが一つのボールを通じて交流し合った。
チームとしても日本選手権の初代優勝チームである「ジャンク5」や、離島大島から「Ambitious Oshima」が参戦するなど、真剣勝負の雰囲気と両立した大会を成功させた。
都内4校の教員など約50名が参加
今回開催された第2回のテーマは、前回と視点を変えて教員を対象としたことが大きな特徴だった。
湯島小学校の教職員を務めている宮之原は、自身の経験や人脈を活かしてBaseball5を小学校や幼稚園・保育園の現場に導入している。
「自分たちで考える力も養えるので、Baseball5は教育にとってもすごくいい教材なんです。自主的・意欲的にやることによって、顔つきや動きが違ってくるのがすぐ分かります」
過去の取材でその理由を語っていた宮之原。チームメンバーも進んで参加し、Spirit Bondsを挙げてジュニア世代の育成に邁進している。
スピボン杯で教員を対象にした理由をこのように明かしてくれた。
「Baseball5が発展していくには、学校教育での理解&導入が不可欠と考えました。そのためにまずは、現役の教員のみなさんにプレーしていただき、『このスポーツの魅力を肌で感じていただきたい!』そんな想いから“教員交流大会スピボン杯”を企画しました」

この日は都内4校(文京区立湯島小・板橋区立高島第一小・港区立本村小・日野市立南平小)35名の教員、さらに開催校である湯島小のPTAと児童が参加。
さらにSpirit Bondsのメンバーも加わり、50人以上が一つのボールの元に集まった。
選手たちがも一体となって活気づける
普段この湯島小を活動拠点に置くSpirit Bondsの選手たちは、全力で先生たちを歓迎した。
「橋本勇郎選手が大会BGMメドレーを作成して会場を盛り上げてくれました。大会では教員合同チームに助っ人として参加しまして、攻守において存在感を発揮して活気づけてくれました」

橋本はサッカーとアメリカンフットボールをプレーしてきており、野球型スポーツは未経験。
「野球やソフトボール未経験の方がどれだけBaseball5に興味を持って発信してくれるかが大事だと考えています」
大学の友人である宮之原はこう語り、その誘いで昨年8月からBaseball5に挑戦した。そんな中で1月の日本選手権では早速監督という大役を担うなど、チームの精神的支柱となっている。
また、宮之原はもう一人メンバーの活躍を讃えた。
「車亜紀子選手は参加された方々へのインタビューを行い、生の声をチームの公式YouTubeチャンネルで届けてくれました」

車はソフトボール歴15年を誇り、Spirit Bonds入団を機にBaseball5をスタートさせた。橋本からも「やったらハマるよ」という言葉をかけてもらい、チームの熱量にも乗じて積極的に参加している。
スピボン杯では試合終了後すぐに参加者の元へ駆けつけ、感想を聞いて回った車。教員陣からは更なる普及に向けたコメントが次々と寄せられた。
「小さい子から大人まで誰でも楽しめるのが素晴らしいです。子どもたちにも広めていきます!」
「実はボールを買っていまして、職員でチームをつくろうねと早速話していました。ぜひ学校の中から広げていきたいです」
「先生方のパワフルなプレーがたくさん見れた」
各試合盛り上がりを見せ、結果は湯島小が優勝を果たした。同点の最終回、中島信夫先生がサヨナラヒットという劇的な幕切れで大会を締めた。
なお、中島先生はかねてからBaseball5をプレーしており、昨年の第1回日本選手権には「Y.E.S」の一員として出場した経験を持つ。
「どのゲームも接戦だったのでとても楽しかったです。どの世代・年齢・性別関係なく“ボール1個で楽しめる”というのが、様々な場面で見えました。
本校でも野球型スポーツの導入としてBaseball5を授業に採用しているのですが、チーム同士声を掛け合ってまずは楽しんでもらえるよう取り組んでいます」

大会で宮之原はMCを務め、選手のコールや演出に迫力も持たせた。会場全体からの期待が寄せられ、決勝戦では代打で登場。
二遊間を破る強烈な一打を放ち、日本代表として世界を戦ったパフォーマンスを即座に披露した。そんな大盛況の中で大会を終え、第2回を振り返った。

「先生方のパワフルなプレーがたくさん見れました。各学校が一球一球にエキサイティングして、最後まで見応えのある試合でした。
高島第一小の素晴らしい一体感や守備のポジショニング、声かけなどは練習を重ねてきたことがわかるシーンでした。
『学校教育✖️Baseball5』によって子供たちの心身の成長につながり、豊かで健康的な生活につながることを願っています」
これからもスピボン杯はテーマを変えて続いていく。チームが放つ情熱の炎は教育現場へと着実に受け継がれていた。
(おわり)
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