青木宣親さんが特別コーチとして登場! 最新機器を活用し中学生の技術向上をサポートする「第1回デジタル野球教室」

11月16日、明治神宮外苑室内球技場で「第1回 デジタル野球教室」が開催された。

最新機器を活用したデータによる指導、そしてスペシャルコーチに青木宣親さんが登場し、特別打撃指導が行われた。

(写真 / 文:白石怜平)

中学生を対象にした、最新機器活用による野球教室

本野球教室はNPB球団でも使用されている最新の計測機器を用い、デジタル活用による技術力向上を支援するイベント。

競技力強化に向けたデータ分析システム「FastBall」を提供する「ライブリッツ株式会社」が運営している。アマチュア選手が今後、大学・社会人そしてプロへと羽ばたくサポートをしていきたいという想いから実現した。

RapsodoやトラックマンB1、MA-Q、BLAST、TechnicalPitchなどを使い、球速やスイングスピード、打球速度を計測する。

最新の計測機器を使ってデータを取得しながら行われた

今回はその方法や取得したデータの理解・目標指標の設定を通じ、自身にとって最も効果的なトレーニングを考える機会となった。

記念すべき第1回は、硬式野球でプレーする24名の中学生がこの門を叩いた。

打撃・投手それぞれのコーチは、かつて野球界の第一線で戦った選手であり、かつ最新の計測機器を知る面々が担当。

打撃部門は2010年〜16年までヤクルトでプレーした松井淳さん、投手部門は早大、JX-ENEOSそして米独立リーグを渡り歩いた内田聖人さんが務めた。

コーチを務めた松井淳さん(写真上)と内田聖人さん(同下)

数値×技術の組み合わせでその場で改善が見られることも

打撃部門では松井さんが1スイングずつ丁寧にチェック。フォームそして計測される数字を都度見ながら、「アッパースイング度は15度くらいがいい」などと、指標を示した。

数値をスイングごとにチェックする松井コーチ

この数値を踏まえた技術指導を行い、「斜め下から一気に振るイメージで」と伝えていくと、見る見る数値が向上していった。

数値→技術の順で確認し、打球の質も変わっていった

投手陣はブルペンで投球チェック。内田コーチが数字の見方をレクチャーし、一人ずつ投球へと入った。

内田コーチも1球ごとに球速や回転数、変化量を見ながらアドバイス。ベースの手前でバウンドすることがあっても、「球すごくいいから!」と数値を用いながら根拠を伝えた。

選手たちのモチベーションを上げるように「よし行こう!」などと背中を押し、さらに数値が向上していく。

ブルペンで内田コーチはアドバイスを送った

すると、ブルペンの外で見ていた保護者たちもモニターを見て「数値上がってる!」などと驚いたリアクションを見せた。

選手の中には、過去にRapsodoを用いた指導を受けたことがあるといい、今回再び活用することで新たな発見があったという。

「今回計測したら自分の手応えと違うと感じました。それはデータ活用をしたことで分かったことなので、フォームの改善にも役立ちますし、今後の練習に有効活用できると感じました。コーチの指導も分かりやすくてありがたかったです」

キャッチボールの際から計測とフィードバックを受けることができた

青木宣親さんが全員に共通して指摘したこととは?

自身の打撃や投球データを取得すると、いよいよ午後に”スペシャルコーチ”が登場。

日米通算2730安打を記録し、今シーズン21年間の現役生活を終えた青木宣親さん。球史に名を残すバットマンの登場に、会場全体が沸いた。

スペシャルコーチとして登場した青木宣親さん

ここでは青木さんからマンツーマンでの打撃指導を5名受けることができる。挙手制だったが当然ながら全員から挙がったため、青木さんとジャンケンで勝った5名が選出された。

開始する際には「ずっと秘密にしていたけど、現役終わったんで全部教えますから!」と、会場からさらに期待が高まった。

最初の選手からは「ミート率を上げるにはどうしたらよいかを知りたい」という課題を聞くと、「じゃあ振ってみて」と数回スイングをチェック。すると青木さんは指摘ポイントを挙げた。

「まずは打つポイント。今は近いんだけど、それだと打とうとしたら体は開くしかないよね。

開いたら当然打球は強くならないし前にも飛んでいかない。置きティーやる時もこれ重要だからみんなも聞いてね。

(ミートポイントを)もっと前で打たないと体の開きは収まらないから。なのでボールを置く場所を変えるとこれだけでも随分変わる」

数スイング見るだけですぐに改善点を見つけ出した

この”打つポイント”。この後続く選手にも共通して行ったアドバイスだった。

「逆方向に強い打球を打ちたい」「試合で打ち上げてしまうことが多い」といった自身の課題をそれぞれ青木さんに打ち明けたがいずれも、

「近く感じない?後に下がってみて」

と元々立っている位置からティースタンドとの距離を離すと、例外なく変化がその場で表れた。強く上がった打球が広角に打ち分けられ、周囲の「おぉ!」というリアクションと同時に青木さんも

「めちゃいいじゃん!ポイントでこんなに変わるんだよ。だから本当に大事だからね」

と、惜しくもマンツーマン指導を受けられなかった選手たちにも分かるよう呼びかけた。

ポイントを前にすることで即座に打球が変わった

重視していた”メカニズム”

青木さんは、データ野球の最先端であるMLBで6年間プレーしていたことも踏まえ、どのようにデータを活用していたのかを問われた。

「個人的には、飛距離をチェックする時に打球速度や角度を見ていました。ただ、どちらかと言うとメカニズム重視です。

僕は体の動きを『こう動かしたらこうなる』と理解しているので、みんなのスイングを見て分かるんです。

そういうのを知らないと、自分がもっとこうしたいって時にアプローチをかけられないので」

日米通算2730安打の要因を垣間見ることができた

5選手のいずれも数スイング見て、的確なアドバイスができる理由がここにあった。

青木さんは選手たちに指導の途中で、データの活用についてもこのように伝えていた。

「データは今の時代すごく大事。でもそれを見てそれをどうやって技術に落とし込むかがポイント。データを見るからこそそれが分かるんだけれども、それを自分のプレーに落とし込むことが大切だからね」

マンツーマン指導終了後は青木さんと参加選手たちの対決企画として、打球速度と飛距離の計測会が行われた。青木さんは「引退試合以来のスイングです(笑)」と言いつつ、鋭いスイングを披露した。

その後はトークショーで、自身の野球人生を振り返りながら選手たちの質問に答えた。

つづく

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