• HOME
  • 記事一覧
  • ラグビー
  • クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 押川敦治 後半からの躍進のカギは足を使った“ゲームコントロール”

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 押川敦治 後半からの躍進のカギは足を使った“ゲームコントロール”

6月1日に国立競技場で2024ー25シーズンのリーグワン決勝が行われた。

トップリーグ時代も含め史上最多となる56,486人を集めたこの試合は、東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)とクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)との頂上決戦だった。

この試合もS東京ベイの15番として砦を担ったのが押川敦治。

昨年公式戦出場を果たせなかった男が、日本最高峰の舞台でまばゆいスポットライトと大きな歓声を背に受け、サクセスストーリーの今季最終章を描いた。

(写真 / 文:白石怜平)

転機となった1月の練習試合

上述の通り昨季公式戦出場はなかったが、今シーズン大きな飛躍を遂げた。

2月1日の第6節・三菱重工相模原ダイナボアーズ戦(ギオンス)でSOで先発し、1年9カ月ぶりとなる公式戦出場を果たす。出場機会を勝ち取ることになったターニングポイントが確かにあった。

「1月に行ったリコー(ブラックラムズ東京)との練習試合です。10番として出たんですけど、しっかりとゲームプランを遂行できました。

その時のチームの課題としてキッキングゲームが挙げられていたのですが、あの試合でしっかり優位に立てたことであったり、全体的にゲームのコントロールもアピールできました。そういった点が評価されたのかなと思います」

持ち味であるキックから試合をコントロールできたことからチャンスを掴んだ

第6節で勝利に貢献すると、試合後の会見でフラン・ルディケHCはこのように賛辞を送った。

「役割をしっかり遂行してくれました。そして勝ちにも貢献してくれました。特に試合のところで言うと、コントロール。

特にキックのところでいいコントロールをしてくれたので、アタックも彼を絡めていい成功率でした。彼は能力があるのでエキサイティングな気持ちです」

FBに抜擢後、ディフェンス面を貪欲に吸収する

その後もSOで出場を続けたのちに、さらなるチャンスを掴むことになる。3月14日の第11節・浦安D-Rocks戦(秩父宮)ではFBへと抜擢された。

高校2年(京都成章高)の花園で務めて以来約9年ぶりというFBのポジション。押川は80分間フル出場しここでも勝利に貢献するなど、その役割を全うした。

そして以降はFBとしてシーズン最後まで戦い抜くのだが、新たなポジションでの挑戦を支えた一人がスコット・マクラウド アシスタントコーチだった。

4月26日の第16節・三重ホンダヒート戦後、FBとしての挑戦についてこのように語っている。

「自分の中で不安だったことや疑問点をストーミー(スコット・マクラウドAC)に聞いたら、何でも答えを持ってくれています。不安要素を質問しても返ってこなかったことがないんです。

特に聞いたのは、バックラインから前に上がるタイミングや声の掛け方です。どのシチュエーションでどんな声をかけたらディフェンスがしやすいのかをFBに入った時は聞いていました」

貪欲な姿勢でFBでも順応していった

SOとFBで異なる一つはディフェンスの入り方。そのスキルの面で教わった内容も身になったのだという。

「一番大きかったのは『2−1をつくること』です。ディフェンスの局面でタックルに入る選手とダブルで入る選手に重きを置いていて、役割を明確にチェックしました。

2−1をつくることで相手のラックのテンポを遅らせることにもつながりますし、ディフェンスラインもセットしやすくなるので、その重要性がチームに浸透していると感じています」

リーグNo.1を誇るディフェンスの原動力に

激闘を重ね、得られた成長は?

後半からポジションを掴み、今季はレギュラーシーズンとプレーオフトーナメントで計14試合出場を果たした。負けられない戦いが毎週のように続いた中で、成長した点を明かしてくれた。

「特に今年はメンタル面がすごく成長したと感じています。私は“Stay in the moment”と言うフレーズを今シーズンを大事にしてきました。

一瞬一瞬の結果だけでなく、1試合1試合に集中するという意味なのですが、そのためにチームにとって必要なプレーであったり、自分ができることを試合の中でどれだけ表現できるかを常に考えていました。

そのマインドセットが、自分の中でもすごくいい影響を与えてくれたと感じています」

“Stay in the moment”の精神でシーズンを戦い抜いた

そのマインドセットで臨んだ大舞台。培った実力をいかんなく発揮した。技術面における成長についても以下のように続けた。

「自分はキックを使ったプレーで、アタッキングキック=攻撃的なキックを強みとしています。試合で相手に強いプレッシャーをかけながら、得点につなげることもできましたので、その点が大舞台でも通用したと感じています。

ラグビーはどこでプレーをするのか、エリアマネジメントもとても重要なポイントだと考えています。

キックではエリアを確保するキックもあれば、トライに導くキックもある。その使い分けを判断できるところが自分の強みとしてあるので、それがゲームコントロールにも繋がっていきました」

S東京ベイは決勝で敗れたものの、準優勝でシーズンを終えた。その原動力の一人として経験と成長も手にした押川は、来シーズンさらなる躍進を目指す。

(おわり)

【関連記事】
「キッキングゲームで優位に立つのが自分の役割」押川敦治 新たなポジションで見出す勝利への活路

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 岸岡智樹のラグビー体験会 第4回のテーマは趣向を変え、「頭を使ってラグビーの難しさを知ろう」

関連記事一覧