
「キッキングゲームで優位に立つのが自分の役割」押川敦治 新たなポジションで見出す勝利への活路
最終盤に差し掛かっているリーグワン。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、リーグワン初制覇を果たした2022-23シーズン以来、2シーズンぶりのプレーオフ進出を決めている。
一戦一戦がより重みを増しているこの時期に、チームをさらに押し上げる男が現れた。
その名は押川敦治。
帝京大学から22年度に入団した3年目の25歳は、昨年公式戦出場を果たせなかった悔しさも胸に、今新たなポジションで奮闘を重ねている。
今季は第6節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦(ギオンス)で1年9カ月ぶりとなる先発出場を果たすと、以降2試合は本職のSOで出場を重ねた。
今につながる転機となったのが、第11節の浦安D-Rocks戦(秩父宮)だった。
この試合はFBで先発。高校2年(京都成章高)の花園で務めて以来約9年ぶりという役割をこなし、80分間フル出場で勝利に貢献した。
以降26日の第16節の三重ホンダヒート戦まで、FBでフル出場中。
チームもこの浦安戦以降6連勝中であり、スピアーズの砦として勝利のピースに加わっている。

26日のヒート戦後、押川は6試合を経ての変化について以下のように語っている。
「今は80分の中でどう戦うかを考えるようになりました。今日のように前半リードされていても、じゃあ後半はどうするかなど、80分トータルで戦っていくことを考えて臨んでいます。
出始めた頃は必死でしたし、練習の中でもスピードを出しすぎて体に負担をかけすぎてしまっていました。
なのでS&Cコーチと相談しながら、試合にピークへと持っていくために逆算して練習から体をコントロールしていくよう取り組んでいるので、そことてもいい学び・経験となっています」

スピアーズの特徴は強いフィジカルを活かした攻撃もさることながら、特筆すべき点の一つはディフェンス力。今シーズンの総失点は316とリーグ最小。次に少ない首位の埼玉パナソニックワイルドナイツとは70点以上の差をつけている。
このリーグNo.1のディフェンス陣にすぐフィットできていることについて、自身の理想と取り組んでいることを明かしてくれた。
「自分が1試合通じてタックルを0で終われるのを理想として掲げています。自分は後ろにいますが、前にいる選手のディフェンス力・ハードワークというのを心強く感じていますし、自分の役割としては後ろから声をかけるといったコミュニケーション。
特にWTBの選手とコネクションしていいディフェンスをし続けることを意識しています。
ターンオーバーに持っていくことが役目だと思いますし、今日(16節)もその場面が作れていたのでポジティブに考えています」

スピアーズの聖地であるえどりく(江戸川区陸上競技場)で24連勝を飾ったこの試合、前半は10−13とリードを許し折り返したが、後半29−7と攻守で力を発揮し、逆転で勝利を飾った。
この試合についても押川に振り返ってもらった。
「キッキングゲームのところでしっかり優位に立つことが自分の役割だと考えていました。後半は相手に蹴られて、後退してしまったところはありましたが、それ以外に関しては役割を果たせたと思います」

17節以降そしてプレーオフと、重圧のかかる試合が続いていく。「負けたら終わりという気持ちで向かっていきたい」と意気込みながら、最後にこう語って締めた。
「ゲームを楽しみながらやっていきたいですが、まずは自分ができることに集中したい。相手も強いですし何で自分が貢献できるかを一週間通じて探し、そして出していきたいです」
スピアーズはこれから首位ワイルドナイツと直接対決を迎える。押川はこの試合もFBとして先発する。まさに今季一番の負けられない一戦に臨む。
(写真 / 文:白石怜平)
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