ブラックラムズ東京 サンゴリアス相手に劇的勝利!1点を争う攻防の中、最後のタックルが勝利の決め手に
12月28日、秩父宮ラグビー場で「NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2024-25 第2節 リコーブラックラムズ東京 vs 東京サントリーサンゴリアス」の試合が行われた。
今年3月以来で今季初の”東京ダービー”は、歴史的な試合そして劇的な幕切れとなった。
(写真 / 文:白石怜平)
前半はブラックラムズが主導権を握るも逆転で折り返しへ
近年両チームの対戦ではスコアが7-18・33-36と接戦を繰り広げていたが、昨季は今年の3月2日にここ秩父宮で対戦し、ブラックラムズが0−62と完封負けを喫していた。
また、ブラックラムズにとっては今季初のホストゲーム。並々ならぬ想いで東京ダービーへと臨んだ。
試合は13時にキックオフ。サンゴリアスが前半2分にPGで先制するも、直後の6分にブラックラムズが反撃。ラインアウトから左へと展開すると、SO中楠一期からパスを受けたWTBネタニ・ヴァカヤリアがトライを決めすぐに逆転した。(ゴール成功)
その後もブラックラムズはこの序盤から一気に攻勢をかけた。
10分にはLOジョシュ・グッドヒューがキックチャージからボールを奪い一気に前進すると、パスを受けたFLブロディ・マクカランが相手の猛追を制しそのままグラウンディング。
14分には相手のキックからFBアイザック・ルーカスが自軍22mライン付近でバウンドを合わせボールを持つと、自慢のランを見せ大きく前進。受けたLOマイケル・ストーバーグがトライを決め、19−3とリードと主導権を握った。
しかし、サンゴリアスは20分から反撃を見せる。右ラインアウトからWTB尾崎晟也のムーブでCTBイザヤ ・プニヴァイが抜けていくと左でパスを受けたFB河瀬諒介がトライ。(ゴール成功)
31分にはゴールライン際での攻防が続いた中、PR森川由起乙がインゴールへと押し込む。これで2点差に縮まると、前半終了間際には敵陣スクラムで反則を得る。ここでSO髙本幹也がPGを決め、ブラックラムズは19-20と逆転される展開で折り返した。
劇的な幕切れは終了のホーンの後に
ブラックラムズは後半開始早々に反攻を仕掛けた。5分に相手ゴール前のラックからSHのTJ・ペレナラが左へ3人先のルーカスへパスすると、中楠へとボールが渡りグラウンディング。自らゴールも決め、一気に逆転する。
さらに前半序盤のような攻勢を見せる。9分にはNO8リアム・ギルがキックチャージでターンオーバーを決めるとCTB池田悠希が抜け出しトライを決めた。(ゴール成功)
しかし、サンゴリアスは後半16分から反撃する。相手ゴール前へと攻め込むと左でボールを受け取った河瀬がトライを決め25−33に。23分には自陣で相手のラインアウトでLOハリー・ホッキングスがスチールを決めると、NO8タマティ ・イオアネが大きく前進。
流からの右へのムーブでつなぎ、4人目でボールを受けた河瀬が猛スピードで相手をかいくぐりグラウンディング。この試合ハットトリックで32−33と差は1点となった。
ここから約15分はお互い譲らず1点を争う攻防が繰り広げられる。
ブラックラムズはギルがジャッカルを成功させ、さらに松橋周平もモールからターンオーバーを決めるなど、サンゴリアスの攻撃を必死に食い止める。
そしてブラックラムズが1点リードのまま試合は80分を超えた。そしてドラマはむしろ80分を告げるホーンが鳴った後に待っていた。
この時サンゴリアスはブラックラムズのゴールライン間際へと迫っていた。CTBイザヤ・ブニヴァイが突進するも、ブラックラムズもストーバーグのタックルなどで前進を阻む。
そこからサンゴリアスが流・髙本そして左端で受けた河瀬が疾走しているところで、中楠が懸命のタックルで河瀬の足を掴みに行った。ボールはインゴールエリアに入りこの日一番の歓声と悲鳴が交錯した。
河瀬らがハイタッチをする一方で中楠は飛び上がり、両者が勝利の喜びを表現した。スタンドのざわめきがスタジアムを包む中、TMO(Television Match Official)で検証が行われた。
焦点は河瀬の左足がタッチラインに触れたのが先か否か。ビジョンでは角度を変えてそのシーンが流され、互いのファンが歓声を上げる。
特にブラックラムズは前節の三重ホンダヒート戦で最後にPGを決められたと同時に逆転負けを喫しただけに、2試合連続で”サヨナラ負け”も頭がよぎる時間だった。
そして最終ジャッジが確定。レフリーの両手が広がり「ノートライ」がコールされた。その瞬間、スタンドのラムズファミリーと共に、ブラックラムズの歓喜の輪ができた。
サンゴリアス相手に公式戦で勝利したのは2004年以来で、連敗を16で止める劇的勝利となった。この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチにはSHペレナラが選出された。
今季は”一貫性を”出せている
今季からブラックラムズの指揮を執っているタンバイ・マットソンHCは「とてもハッピーです」と語り、試合を振り返った。
「最後にサントリーさんに勝ってから、だいぶ時間が経っていると聞いています。サントリーさんはこのリーグのスタンダードを設定してきて、リードしてきたチーム。自分たちにとってはスペシャルな日になったと思います」
前半終了時に逆転されたが、後半はすぐに勢いを取り戻した。ハーフタイム中に伝えたことについて明かしてくれた。
「前半のターンオーバーが相手は8、我々が2だった。またラインアウトは62%というデータでした。そういった点の問題解決をしっかりしていこうということや、自陣でのターンオーバーについて話をしました。
選手たちがハードキャリー、ハードなディフェンスをするチョイスをしてくれたので、その中でチャンスが生まれたかなと感じています」
またキャプテンのHO武井日向も笑顔を安堵の表情を見せ、以下のように語った。
「本当に嬉しい結果がついてきたと思います。長く勝てていなかったサントリーさんに勝てたことも嬉しいですし、先週もそうでしたが接戦を勝ちきれないことが多かったので、それに勝てたことも嬉しい。チームとしても成長できたのかなと感じています」
接戦で勝ち切る決め手となったのが、最後にトライをブロックしたシーン。あの場面をどんな心境で見ていたのか。
「やってくれると信じていました。メンバーは役割をやりきってくれましたし、最後までハードワークしてくれました。最後の(中楠)一期のところもそうだと思いますけど、あきらめない気持ちをチームから感じていたので、本当に信じて見ている感じでした」
上述の通り、約10ヶ月前は0-62と完封負けを喫していた。悔しい思いがあったことも踏まえ、昨季との違いについて筆者から質問した。
「試合までの1週間チームとしていい準備ができていたので、そこはレベルアップできていると感じています。ノンメンバーを含めた選手たちがみんなで本当にいいアタック・いいディフェンスをしてくれるおかげで自分たちもいい準備ができ、それが結果に繋がっていると思う。
あと昨季は出せなかった”一貫性”の部分。今年はまだ2試合しかやっていませんが、先週と同じフィジカリティ・気持ち・ハードワーク・エフォートが出せた。
これを毎試合見せていくことが大事だと思いますが、先週から今週にかけて再現できたことは、レベルアップできているところではないかと思います」
両者とも「シーズンはまだ始まったばかり。来週に向けしっかり準備していきたい」と語った。早くも翌週には埼玉パナソニックワイルドナイツ戦が控えている。
ホストタウンである世田谷(駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場)で今季初の試合。地元のファンに勝利を届け、2025年のスタートを幸先よく切る。
(おわり)
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