リコーブラックラムズ東京 ホストエリア世田谷のファンにハードワークを見せるも、試合終了残1分に見た天国と地獄(リーグワン第6節)
1月27日、世田谷区の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で「NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2023-24 第6節 リコーブラックラムズ東京 vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ」の試合が行われた。
この日は、開催地である世田谷区に拠点を置くブラックラムズのホストゲーム。
スタジアムでは「世田谷パン祭り」が行われ、試合も最後の最後まで勝敗の分からない、ラグビーの魅力が詰まった試合になった。
(協力:リコーブラックラムズ東京、写真 / 文:白石怜平)
1年ぶりに返ってきた「世田谷パン祭り」
ブラックラムズは世田谷区をホストエリアとし、地域に密着した活動を年間通じて行っている。この日は特別に「世田谷パン祭り×BlackRamsTokyoスペシャル企画」が開催された。
年に1度、世田谷区で開催される日本最大級のパンの祭典「世田谷パン祭り」プロデュースのもと、大人気のベーカリーやコーヒーなど28店舗が駒沢公園に集結。
昨シーズンの第9節(花園近鉄ライナーズ戦)で大好評だったイベントがここ駒沢に帰ってきた。
さらに本企画を記念して、世田谷区在住・在勤・在学の方を500組1,000名ご招待するなど、ホストエリアである世田谷をブラックラムズが”おもてなし”をして盛り上げた。
この日は快晴。SNSでも青空のスタジアムの下で映えるパンとブラックラムズのグッズとともに掲載される投稿が多くあり、試合のみにとどまらない満足感があふれていた。
開場から1時間以上も前から行列ができ、さらに試合終了後も各店舗で長蛇の列になるなど大盛況。開門前から完売するお店が続出した。
試合間際に起こった逆転に次ぐ逆転劇
試合は13時にキックオフ。今回ブラックラムズが対するのは昨年のリーグワン覇者であるクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。
1年前の対戦では38-40でブラックラムズが惜敗するも、大接戦を繰り広げていた。
昨年5月のシーズン報告会でも、メイン平が最も印象に残った試合に挙げており、「自分たちのDNA=泥臭さを体現でき、”トップ4を相手にも戦える力がある”と肌で感じたいい試合でした」と語っていたほどだった。
約1年後に相まみえたこの試合でも、最後まで手に汗握る試合になった。
試合が動いたのは前半12分、SOのアイザック・ルーカスがラインブレイク。
そこから、パスを受けた第2節以来の復帰となった主将のHO武井日向がタックルを外しゲインを取ると、最後はWTBシオペ・タヴォが先制トライを決める。
20分にスピアーズのWTB根塚洸雅にトライを決められ追いつかれるも、ブラックラムズらしいハードワークを見せ、17次攻撃を重ねるとWTBネタニ・ヴァカヤリアがトライを決め10-5と勝ち越して前半を終えた。
後半も泥臭く根気強いラグビーを見せ、この5点を守るブラックラムズ。しかし、27分に試合が動く。
スクラムでペナルティを取られると、自陣近くでラインアウトモールに。ブラックラムズはここで守り切ったが、スピアーズがパスを5人でまわすと根塚
に再びトライを決められ同点に。FBゲラード・ファンデンヒーファーにコンバージョンゴールも決められた。
34分にはペナルティから再びファンデンヒーファーにショットを決められ15-10と5点のビハインドを背負うことになった。
しかし、最後まで諦めないラグビーもブラックラムズの真骨頂。試合終了間際でのプレーだった。相手ペナルティでのラインアウトから、今度はブラックラムズがモールで相手ゴールに激しく迫った。
ここでレフリーの笛が鳴る。スピアーズ側のペナルティとして認定トライを宣告した。この時点で後半79分、残り1分のところでブラックラムズが17-15と土壇場で逆転した。スタジアムが騒然となる中で80分になったところで、再びレフリーの笛が鳴った。
なんと、ブラックラムズ側のペナルティに。スピアーズはショットを選んだ。キッカーのファンデンヒーファーがそのショットを放つと、無情にもHポールの中を抜けた。
この日集まった7608名の観衆からは歓声と悲鳴が入り混じり、ブラックラムズフィフティーンは頭を抱え膝から崩れ落ちる。一方、スピアーズフィフティーンはファンデンヒーファーを囲み歓喜の輪ができた。
17-18。最後まで何が起きるか分からない、ラグビーの醍醐味と恐ろしさを一手に味わう試合となった。
終了後は黒く染めたファンに挨拶した
ただ、ブラックラムズは7点差以内の敗戦によるボーナスポイントを獲得し、勝ち点を7に伸ばした。順位は10位で、9位の三菱重工相模原ダイナボアーズを勝ち点差3で追っている。
試合後ヘッドコーチ・主将の会見
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(HC)
「クボタさん(以下、スピアーズ)に勝利おめでとうございますと伝えたいです。そしてリコーブラックラムズ東京(以下、ブラックラムズ)の選手たちにも今日はよくやったと伝えたいと思います。
クリアなプランをもって挑みましたが、残り5秒で勝利をつかみ切れませんでしたが、そこまでしっかりとやり遂げてくれた選手たちを本当に誇りに思います。ロッカールームはかなりがっかりした様子ですが、前に進むのみだと思うので、次に向けていきたいです」
―自分たちのゲームはできているという印象があります。
「フィニッシュが決まらなかったですね。スピアーズはビッグチームなので、セットピースからセットピースという流れを続けていくわけにはいかないです。
なるべくボールを動かしましたが、動かせば動かすほどミスの確率は上がります。そういうことを受け入れつつ、いいことが続いた最後のところでもう少しうまくフィニッシュできれば良かったかなと思います」
―武井日向キャプテンがゲームに戻ってきました。改めてどのような存在ですか
「チームのキャプテンですし、このチームを表せる選手だと思います。プレーすれば必ず自分たちが見せたいDNAを表現してくれますし、日向はアクションを通じてみんなを引っ張ってくれる存在です。
相手はオールブラックスからの選手で、久しぶりの試合で80分間戦ってくれた。それだけチームを大事に思ってくれているからだと思います」
ークリアなプランとあり、これはボールを動かすと言うことだと思います。この試合BKはハドレー パークスと池田選手を起用したのもプランの兼ね合いでしょうか
「そうですね自分たちのやりたいことをやりきれるメンバ-だと思いました。CTB池田(悠希)はケガから復帰。前の試合はリザーブで、そこからスターティングメンバーをつかんだ。
あとはポジション全体での外国人選手の組み合わせを考え、それでパークシー(CTBハドレー パークス)がチャンスをつかんだ。いいパフォーマンスをしてくれたと思います」
武井日向主将
「最後の最後で結果を逃してしまったことが悔しいです。負けていい試合はないですし、正直勝利が欲しかったというのがあるのですが、まだまだ自分たちが成長できる・成長しなければいけないポイントだと思うので、接戦をモノにしていくチームにしていきたいと思います。
ただ、やっているラグビーは正しい方向に進んでいると思うので、自分たちのラグビーを信じて、最後の最後を突き詰めて次の試合から頑張りたいです」
―フォワードとして、しっかりできている部分もあったと感じました
「スクラムでは安定したボールをバックスに出せたと思います。ただ、チャンスやピンチの場面で無理に行ってしまいペナルティになったスクラムもあったので、そういうところはもう少し詰めていきます。
負けましたが、ネガティブな部分ばかりではないので精度は改善して、良いものは良いものとして継続してさらにレベルアップしていきたいと思うので、スクラムでは前に進んでいると感じました」
ー成長できるポイントというのは、具体的にどの辺になりますか?
「精度の部分であったり、試合を重ねるにつれてミスを続けてしまうことがあるので、ミスをしても次はしっかりやり切るというところ。そこはまだまだレベルアップする必要があると思います。そういうマインドセットや精度の部分は成長できるポイントです」
ー怪我からの復帰戦でフル出場。チャンピオンチームに臨む気持ちは特別だったのでしょうか?
「僕は毎試合ブラックラムズのために戦おうと思っていますし、それを”一番体現しよう”というのが僕のテーマです。今日も特に相手がスピアーズだからというのはないです。
ただリーダーとして、他の選手に自信をもってプレーさせたいですし、”自分たちはできるのだ”という自信をつけたいというのがあるので、そういう声掛けをすることで、チームが良い方向に向けばいいと思い臨んでいます」
次回の第7節、再びここ駒沢でコベルコ神戸スティーラーズを迎えての試合になる。この悔しさを胸に精度を挙げ、ホームで勝利を届ける。
(おわり)
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