【特集】戦場への帰還 ~不屈の精神と長き闘いの記憶~埼玉武蔵ヒートベアーズ 由規兼任コーチ 第1回 右肩の違和感からの苦闘の始まり
実戦復帰初戦で155km/h、失わなかったスピード
その後リハビリを経た由規は手術から約1年2ヶ月後の14年6月、ファームの本拠地戸田球場で行われたフューチャーズ戦(イースタン・リーグの混成チーム)に先発投手としてマウンドに立った。
792日ぶりの実戦となったが、ここで驚きの投球を披露した。1イニングの登板だったが球速は150km/hを連発。最速155km/hをマークするなど無安打無失点、2奪三振という完璧な内容だった。
手術そしてリハビリで1年以上投げていない投手の球とは思えない投球で球場がどよめいた。21球中11球が150km/hを超えていた。
「トレーナーの指示に沿ってトレーニングを重ねて1年強経った頃に実戦復帰できたのですが、スピードがかなり戻っていて。155km/h出てそこでほっとしたと言いますか。1試合投げただけだったのですが、野球できない期間が長かったので気持ちよくプレーできると思えました」
その後4試合に登板し、ファームながら1勝を挙げ防御率は2.40。確実に復活への第一歩を踏み出した。
15年は一軍に復帰し、先発ローテーションに入ることを目標に置いた。オープン戦では一軍に帯同し、この年の”開幕投手”として2月22日の対日本ハム戦(浦添)に先発。2回を無失点に抑え、球速も最速151km/hを記録した。
しかし、ここは自分の肩との相談だった。
「先発のローテーションに入るには、球数を投げなければいけない。ただ、いきなり100球・110球とは投げられないので、キャンプではブルペンで多めに投げたり連投してみたりを試しました。徐々に投げれるようになってきましたね」
イースタン・リーグでは6試合に登板。1勝1敗、防御率3.33という成績を残した。ただ、4年ぶりの一軍復帰はここでもお預けとなった。オフには育成選手へと移行になり、背番号「121」に変更して16年を迎えることになった。
(つづく)
【関連記事】
「最も自信のある球はストレート」埼玉武蔵ヒートベアーズ 長尾光 夢の実現に向け遂げた本格派への”変貌”
G.G.佐藤”1日契約”で8年ぶりの現役復帰!「今日はみなさんをファンタジーの世界へお連れします」〜引退試合ドキュメント前編〜