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【特集】戦場への帰還 ~不屈の精神と長き闘いの記憶~埼玉武蔵ヒートベアーズ 由規兼任コーチ 第3回 伝えたいメッセージにあったある投手との共通解とは?

BCリーグ・埼玉武蔵ヒートベアーズから楽天モンキーズに移籍し、台湾リーグへ挑戦することになった由規投手コーチ兼投手。

11年シーズン終盤に感じた肩の違和感から約5年に亘る怪我との闘いを余儀なくされた。手術・リハビリを経て16年には1771日ぶりの復帰を果たし、2戦目には勝利を挙げ復活の兆しを見せた。

しかし18年に再び右肩痛を発症し、この年限りでヤクルトを退団。次の復帰への舞台は地元の楽天だった。

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(取材協力:埼玉武蔵ヒートベアーズ、取材 / 文:白石怜平 ※肩書きは当時・以降敬称略)

「まだやりたいと思わせてもらった」地元での復帰マウンド

19年、由規は楽天に入団。育成選手ながら杜の都へと帰ってきた。

「ヤクルト退団時もまだ肩を怪我していたので、その状態でも契約してくれたというのは、少なくとも可能性を感じて獲ってくださったと思うので、意気に感じましたね。家族や友人たちに良い所を見せるチャンスだと思って飛び込んできました」

開幕してしばらくまではリハビリを行うと、5月にはイースタン・リーグで実戦に復帰した。初戦の西武戦で2回無失点に抑えると、その後も好調をキープした。ファームで7試合に登板、12イニング無失点の結果を残し、7月下旬に支配下選手登録への復帰を果たした。

19年からは地元の楽天でプレーした(球団提供)

そして9月26日、レギュラーシーズンの本拠地最終戦である西武戦で移籍後初マウンドに上がった。481日ぶりの一軍登板だった。

背番号「63」を着けた由規は衰えを感じさせない投球を披露。最速150km/hをマークするなど、1回を無安打無失点に抑えた。

この経験が、今も由規の野球人としての炎が消えないきっかけの一つであった。

「ヤクルトの復帰試合もそうでしたけれども、あの試合もこれまでの苦労を積み重ねてきた試合だったので、普段とは違った瞬間でした。自分でしかできない経験ですし、さらに地元で投げて復帰してまた一軍の試合で投げることができる。

あれは僕の中でも”まだやりたい”と思わせてもらった試合ではありました。この試合があったので、楽天を退団するときに”お腹いっぱい”にはならなかったんです」

苦労を重ね地元で投げた時、その炎はさらに燃えた

20年は一軍登板の機会がなく、この年限りで楽天を退団。肩の状態も回復しており、「やれるところまでやりたい」と12球団合同トライアウトに参加した。

NPBの球団からは声はかからなったが、ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズからのオファーを受け入団。15試合に投げて8勝を挙げ健在をアピールした。

昨年からは投手コーチを兼任し、NPBを目指す若い選手を指導しながら現在も現役として投げ続けてきた。

21年から今年7月までは埼玉武蔵ヒートベアーズでプレーした(球団提供)

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