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福岡ソフトバンクホークスジュニア 帆足和幸監督「一つになれるチームは”10点取るぞ”となったら取れる」 目指すチーム像に不可欠な一人ひとりの”声”

12月26日〜29日の間で開催される「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024」

福岡ソフトバンクホークスジュニアを率いる帆足和幸監督は、選手たちに”考える”ことを浸透させ、技術だけではなく人間的成長へと導いている。

大会を間近に控えた中で監督としてはどんなチームを目指し、そして今年はどんな戦いを見せていくのか。その構想を大会でのエピソードを交えて語ってもらった。

>前編はこちら

(取材 / 文:白石怜平 写真:©SoftBank HAWKS)

声を出すことから”有言実行できる”チームへ

”考える”をキーワードに帆足監督は指導方針を展開しているが、加えて目指すチーム像がある。

「声が出るチームは強いです。去年のトーナメントで(準優勝した)巨人と戦って尚更感じたので、僕らも日頃から声を出すチームを目指しています」

昨年決勝トーナメントに進んだホークスジュニアは、準決勝でジャイアンツジュニアと対戦。

6イニング制で行われた中、4回まで4−2とリードしていたが、終盤に差しかかった5回に逆転を許し敗れてしまった。その時対戦したジャイアンツジュニアによる終盤の勢いは、”声”からもたらされていたと感じていた。

「劣勢でも雰囲気をつくって乗っていければ流れが変わったり、思わぬ力を発揮することもあります。なので、チームの雰囲気がすごく大事と考えていて、必ず顔合わせの時には『声を出そう!』と呼びかけるんですよ。

それはただ『オーイ』と言うだけではなく、これも”考えて声を出す”。逆転できる雰囲気を自分たちでつくるんです。

そうやって一つになれるチームは”10点取るぞ”となったら取れる。有言実行できるようになるんです」

一人ひとりの声が大きな力を呼び込む(©SoftBank HAWKS)

帆足監督が挙げた有言実行は昨年実践されていた。初戦に敗れたホークスジュニアは、カープジュニアと対戦した。

初戦に負けても、次の試合に勝利すれば1イニング平均得失点差で決勝トーナメントに進める「ワイルドカード」を勝ち獲れる可能性が残されていた。

進出の可能性に懸けて10点取ることをチームとして掲げて試合へと臨んだ。結果、10点を挙げコールドで勝利。上述の決勝トーナメントへと進出することができた。

「1点を積み重ねる野球で、チームが一つになって実現できた試合でした。点差をつけられたとしても、そのまま行かずに”逆転するぞ”と前向きになれるチームをこれからもつくっていきたいです」

監督として大切にしている言葉の力

アカデミーコーチでの活動も含め、日々子どもたちと向き合っている帆足監督。コミュニケーションを取る上で、常に意識していることとして「言葉の使い方」を挙げた。

約3ヶ月という短い期間であっても、時には厳しいことを言わなければならない時もある。その際も言葉選びそして接し方について気を配っているという。

「コーチもいますし、誰かがもし厳しいことを言っても『彼にはこう言ったからフォローしておいてほしい』とお互いに共有しています。決して言いっ放しではないので、首脳陣でも連携はしっかり取れています」

また、言葉の力は大舞台の中でも大きな力を引き出してくれる。ある年のトーナメントでのエピソードを明かしてくれた。

「試合前にブルペンで明らかに緊張している様子が見えたので、『先発で使うのは監督の俺だから。打たれたら俺の責任なんだから何も気にしなくていい。思い切って投げてきな!」って伝えたことがありました。

直前にもう1回『今日打たれたらどうする?』って聞いたら『監督の責任でしょ?』って言ってくれたので『よし!行ってこい!』って送り出したらいいピッチングしてくれました」

言葉の力を熟知し、選手へ伝えている(©SoftBank HAWKS)

今年は守りからリズムをつくるチーム

いよいよ12月26日から始まるジュニアトーナメント。29日までの4日間、明治神宮野球場とベルーナドームで行われる。

ホークスジュニアは09年以来2度目の優勝を目指す。今年のチームはどんな特徴かを語ってもらった。

「能力は過去最大級に高いと感じています。今年の特徴は守りだと思っています。コーチが鍛えてくれてミスも出ないですし、投手陣も120km/h投げる選手が4人揃っています。守備からリズムを作って流れを呼び込みたいですね」

充実した投手陣を中心としたチームになった(©SoftBank HAWKS)

選手選考においてどんな点を重視したのか。長打力のある打者やスピードボールを投げる投手といった選手の他に、毎年必ず見ているポイントがあった。

「まずはキャッチボールを見ます。丁寧にキャッチボールができる子は守備は間違いなく上手いです。逆にキャッチボールが上手じゃない子で守備や投球が上手い子はほぼ見ないです。

攻撃面では走力を重視しています。足が速くて走塁が長けている子がいれば得点につながるので、選考ではいつも考えています」

機動力を使って得点を重ねていく(©SoftBank HAWKS)

帆足監督は、チームの勝利もさることながら子どもたちの将来の野球人生そして、未来の野球界を育む使命を持っている。

今回戦う16人の選手に、大会を通じてどんな経験を得てほしいかを訊いた。

「全員試合に出てもらいます。大舞台を経験するしないでは将来大きく変わってくると思います。みんな緊張すると思いますが、全国トップレベルで戦う経験はそうはないです。

その中で自分自身がどう力を発揮できるかを考える。僕らも当然勝ちにはこだわりますが、大会を通じて仲間やチームの大切さを感じながら、存分に野球を楽しんでほしいです。

今年は守りと言いましたが、ジュニアトーナメントで『ヒットを打った』・『ホームランを打った』という証を残してほしいので、バッティングももちろん期待しています」

藤本博史前監督も熱心に指導を行っている(©SoftBank HAWKS)

子どもたちの将来を考えた采配は、これまでも意識して行ってきたことだった。ジュニアトーナメントでの悔しさを糧に大きなステップアップをしている話も披露してくれた。

「投手で2者連続四球を出してしまい交代した時がありました。その子は悔しくて涙を流していました。彼には先がありますし、僕もこのまま終わってほしくないと思い、次の日も起用しました。

そしたらリベンジして抑えてくれたんです。彼はこの夏甲子園に出てくれて、今も元気な姿を見せてくれました」

監督としては昨年決勝トーナメントに進んだが、実は意外なデータがあった。

「僕は初戦でまだ一度も勝っていないんです。なので絶対勝ちたい想いは強いです。初戦に全てを懸けます」

初戦から全てを懸けて臨む(©SoftBank HAWKS)

「継続力」を身につけられる指導を

トーナメントやアカデミーを卒業した生徒との交流は今も続いている。その絆は監督自身が築き上げていた。

「卒業生はもう最初に教えた子は高校3年生になっていますが、今でも相談をしてくれます。自分が教えた子どもたちですから嬉しいですよね。

当時から監督やコーチを使ってほしいと伝えてたので、中学に行っても高校に行っても聞いてくれる選手がいます。

映像も送ってくれますので見てアドバイスするやりがいがありますね。”今どこの学校に進んで何回戦なのかな”とチェックもしていますし、今年は3人甲子園に出てくれました」

卒業後も縁をつなぎ、指導を続けている(©SoftBank HAWKS)

ジュニアチームの監督そして、アカデミーコーチとして今もユニフォームを着続けている帆足監督。

最後に自身が指導者としてどんな選手そして人を育てたいか、その想いを語ってもらった。

「野球が上手くなるために必要なことはもちろんですが、野球だけじゃない部分も教えていきたいです。それは”継続すること”。どんなことがあっても継続力が付いていれば対応できると思います。

上手くなるためには継続が必要ですし、人間嫌なことはすぐ離れがちなのですが、社会に出ても”我慢して続けていくこと”を覚えてほしいと思うので、僕も子どもたちと一緒に頑張っていきたいです」

ホークスジュニアの初戦は26日。神宮球場で阪神タイガースジュニアと対戦する。積み重ねた思考と声からつくり出す雰囲気を力に変え、15年ぶりの頂点を目指す。

(おわり)

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