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福岡ソフトバンクホークスジュニア 帆足和幸監督 勝利と成長に繋げる”考える野球”への改革「子どもたちから意見が出る雰囲気をつくる」

12月26日〜29日の間で開催される「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024~第20回記念大会~」。

05年から行われている同大会は節目となる20回目を迎える。

各球団が小学5年〜6年生を選出し、12球団のジュニアチームで頂点を目指す。

九州・沖縄・山口を中心とした地域の代表として戦うのが福岡ソフトバンクホークスジュニア。09年以来2度目の優勝を目指し、鍛錬を重ねている。

監督を務めているのが、地元福岡県出身で西武そしてソフトバンクで通算90勝を挙げた帆足和幸氏。

現在アカデミーコーチも務めており、福岡県の野球人口拡大に向けて子どもたちと向き合う日々を過ごしている。

ジュニアチームの監督としても就任6年目を迎えた帆足氏に、指導者としての歩みや今年の展望などを語ってもらった。

(取材 / 文:白石怜平 写真:©SoftBank HAWKS)

18年にアカデミーコーチへ就任し、翌年から監督へ

帆足監督は15年に現役引退後、打撃投手や球団広報を歴任し18年途中に現在の野球振興部へ移った。

ここでは「NPO法人ホークスジュニアアカデミー」でコーチを務めることになった。

アマチュア・プロと日本野球の頂点で長く身を置いてきた男は、次なるステージとして底辺を拡大させるミッションを託された。

現在は七隈校で小学3年生から6年生を担当している。

ただ、子どもたちを教える指導者の多くが最初に直面する課題については、帆足監督も例外ではなかった。

「子どもたちに伝える言葉の難しさを特に感じましたね。現役を終えてすぐだったので専門用語を使いがちなのですが、子どもたちの目線に合った言葉を選ぶ。そこで苦労しました。

僕も子どもたちが”どう伝えたら理解してくれるか”を考えを重ねて、浸透したと思います。学年も様々だったのでアプローチを変えていきました」

ホークスジュニアを率いる帆足和幸監督(写真右:©SoftBank HAWKS)

そして、翌19年からホークスジュニアの監督に就任した。当時の心境をこうように語った。

「チームを率いて指導することがなかったので、アカデミーで教えることはありましたが、すごく新鮮味がありました」

「質より量」から「量より質」への転換

ホークスジュニアの選手選考は例年6月から募集を開始し、8月に16名の選手が決定する。

今年は8月時点で21名のメンバーを選出し、10月中旬に最終決定。特に今年は約4,000人もの応募があり、倍率も約200倍近くある狭き門から選ばれた。

どんなチームになるかは毎年特徴は異なる。打撃が得意な選手が集まる年もあれば、守りが長所になるチームになるなど、そこは帆足監督らがチームとしての活動を通じて見極めていく。

「毎年選手の動きを見てどんなチームカラーにしていくのかを考えますので、そこに一番力を入れます」

選手たちのパフォーマンスを見てチームカラーが決まっていく(©SoftBank HAWKS)

チームとして集まった後の活動としては、就任当初から大きく変化を加えている。当初との比較を交えながら明かしてくれた。

「就任して最初の3年は、”やらせる練習”。質より量でした。朝から最長で15時ごろまで練習をやったり、試合だったら一日使っていました。

ですが、ただ長くやっても必ずしも上達に比例するとは限らないですし、集中力を欠いて怪我につながっても良くないので短くしました。

近年は全体練習に加えて自主練を設けています。それでやりたい練習があれば『監督・コーチを使おう。何でもサポートするから』という形にしています」

”自ら考える”練習に至った理由とは?

指導を重ねていく中で、”帆足イズム”となる核ができた。それは、「自身で考えること」であった。

一度聞くと当然のように感じるかもしれないが、それを浸透させることには並大抵ではなく、時間をかけて子どもたちと向き合うことが不可欠となる。

帆足監督は、それを約4ヶ月という短期間で行えるようにチームづくりを行っていった。

「自主練ではそれぞれ考えてもらって、主体性を持ってやることを目指しています。子どもたちが”やりたい”と意見が出る雰囲気をつくっていますし、しっかり聞いて意見も取り入れています。

例えばバッティングがしたいとなれば、『その中で何をするの?』と深堀る。それがシート打撃の時もあれば、フリー打撃・ロングティーなどあるので、我々がリクエストに応えています」

選手たちの自主性を尊重している(©SoftBank HAWKS)

3年ほど前から現在の方針にたどり着いた。では、「自ら考える」を推進しようと思った背景は何だったのか。その理由は明確だった。

「(ジュニアトーナメントで)勝てなかったんです。試合に出るのは子どもたちですし、グラウンドの主役です。なので、自分たちの感覚で動いてもらわないといけないです。

常に予測をしていれば何が起きても対応ができるので、頭で考えて動く必要がある。

それは試合に出てない時でも一緒で、自分に何ができるのか。チームのために考えて行動してほしいし、試合に出るとなればグラウンドでも活きてくる。そう思ったからです」

考えることはベンチそしてグラウンド全てに活きてくる(©SoftBank HAWKS)

子どもたちに考えてもらうために、活動後にある取り組みをしている。具体的に行っていることについて明かしてくれた。

「僕らが見ていいなと思えた子がいたら、練習や試合後になぜ良かったのかを発表してもらうようにしました。

子どもたちが自分の意見を言葉にして伝えることに加えて、聞いた子は参考にして次に活かしてもらう狙いがあります」

これらの取り組みを通じ、結成当初と比べて毎年大きな変化が見られるという。

首脳陣の発信の他にも選手からの共有の機会も設けた(©SoftBank HAWKS)

子どもたちの将来も見据えた上で、感じている変化も語った。

「質問の数が増えていくんです。自分に何が足りないのか・どこを目指したいのかを考えることで、子どもたちから『他に何が足りないですか?』とさらに聞いてきてくれます。

考えてやる子が圧倒的に上手くなりますね。あとはグラウンドの外でも周囲を見て気が利くようになっていく。荷物運びもそうですし、チームに何が必要かを率先してやってくれます。

小学生から実践することで、社会人になっても恥ずかしくない振る舞いができると思いますので」

”考える野球”を浸透させ、短期間で心身共に成長を促している帆足監督。チームを率いるにおいても自身が目指すチーム像が明確にあった。

つづく

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