疲労回復の専門家が解説する睡眠と疲労のメカニズム「休養にも意識を向けて過ごしてほしい」

スポーツそして日常生活を送る上で、身体のコンディションはパフォーマンスに大きな影響を及ぼす。そのコンディショニングにおいて疲労を回復させる、”休養”も欠かせない要素である。

しかし、技術や栄養の指導はあっても休養や睡眠についての指導を受ける機会を伺うことは少ないのでなはいだろうか。

今回は”疲労回復の専門家”に登場いただき、睡眠や疲労のメカニズムについて特集する。

全国で休養の普及や啓蒙活動を行っている「株式会社RecoveryAdviser」代表取締役の福田英宏さんに、日常生活でも役立つ知識を解説いただいた。

毎朝同じ時間に起床し、太陽の光を浴びる

2月も中盤に差し掛かり、春の陽気が徐々に近づいてくる。これから寒暖差が大きくなる中、人間の体にどんな影響が出てくるのか。

「これから3月に向けて花粉症シーズンが本格化します。また、4月になると年度が変わり環境が変化する方も多いと思います。そうなると自律神経が乱れがちになって体内時計がずれてしまう恐れがあります」

その乱れを改善するためにどんな対策が必要か。福田さんは以下のように解説する。

「1日は24時間ですが、体内時計は24.18と少し長いです。調整するのは光と食事、そして人との関わりの中で自然と調整していくものです。

まずは、毎日朝同じ時刻に起きて太陽を見ることをお勧めしています。窓越しでもOKです。朝太陽を浴びると、セロトニンという安定と癒しの物質が出てくるので、1日の動きがスムーズになります」

セロトニンは、メラトニンの原料でもある。メラトニンとは、眠気を脳から分泌される睡眠ホルモンで、夜に分泌量が増える。

セロトニンが少ないとその原料のメロトニンも少なくなる。つまり眠気が出にくくなるので、夜の活動時間が長くなり昼夜の逆転が起こってしまうという原理である。

一度ずれてしまった体内時計をどう直していくか。これは期間をかけて直す必要があると福田さんは説明する。

「無理のないペースで、10分ずつ早く起きて直していくのがいいと思います。一気にやると体が悲鳴を上げて結局続かなくなります。一気に30分戻すのも辛いですから。

10分早く起きるのを1〜2週間続け、そこからもう10分早く起きるを同期間。これを繰り返していくことが重要です」

疲労の原因は「自律神経の疲れ」

では、なぜ人は疲れを感じるのか。そのメカニズムについて福田さんはこう解説を続ける。

「近年、化学的には脳が疲れている。つまり自律神経が疲れてしまっているためだと言われています。例えば、夏場に”暑い”と感じるのはどこでコントロールされるかというとそれは脳なのです。

夏場に走っていて暑い、発汗することで体温を下げる。これは脳の指令です。運動して体温・心拍数が上がると活性酸素が増える。自律神経の中枢に負荷がかかる状態になります」

自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類がある。交感神経は体を活動状態に、副交感神経は体を休養・回復状態にする神経である。両者の関係について福田さんは、

「自律神経は自分の意思ではコントロールできないものです。活動的な状態が赤で、休息状態は青。元気な状態の場合は交感神経、副交感神経のバランスが保てていますが、疲労が溜まったり体調が悪い状態になると、休む神経の副交感神経にスイッチしにくくなります。年齢的な要因もあり、男性だと30代、女性だと40代に副交感神経になりづらくなります」

と図を見せて説明してくれた。

元気な状態と体調が悪い状態の比較(提供:株式会社RecoveryAdviser)

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