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「王貞治ベースボールミュージアム」王会長の輝かしい足跡をたどる展示の数々と最新テクノロジーが融合された「王貞治ヒストリーゾーン」 

エンターテイメント施設「BOSS E・ZO FUKUOKA」の4階にある「王貞治ベースボールミュージアム Supported  by DREAM ORDER」

ミュージアムでありながら野球体験コーナーが充実しており、福岡ソフトバンクホークス代表取締役会長の王貞治氏がかねてから抱いている「野球を広めていきたい」を体現している場になっている。

加えて、展示コーナーも王会長の展示品と共に、最新テクノロジーを活用した工夫も凝らされている。前編に引き続き、ミュージアム館長の福岡ソフトバンクホークス・道広康則氏にお話を伺った。

>初回編はこちら

王会長の功績を表す展示品とパネルの数々

20年にドームから「BOSS E・ZO FUKUOKA」の4階に移転したミュージアム。

リニューアルオープンにあたっての大きな特徴が「89パーク」。この野球体験コーナーがエリアの約7割を占めており、それは王会長が抱いている

「野球を知らない子には野球を知ってもらいたい。野球が好きな子には、もっともっと野球を好きになってもらいたい」

という想いに基づいている。

王会長の想いが詰まった野球体験エリア「89パーク」©SoftBank HAWKS

ただ、展示コーナーの「王貞治ヒストリーゾーン」も壮大に感じられる仕掛けが各所に盛り込まれている。

ここには約300点ほど飾られており、現役当時のバットやユニフォーム・トロフィーといった選手時代のものに加え、ホークスそしてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での監督時代、さらには自身が理事長を務める一般財団法人世界少年野球推進財団(WCBF)に関するものが所狭しと展示されている。

選手そして監督時代の展示品が300点ほどある

その他にもプライベート品や著名人との交流の証などもあり、一歩ずつ足が止まるような雰囲気がつくられている。

選手や監督での功績を年表に沿って当時のコメントや解説とともに掲載し、他にもパーソナルデータの表示もあるなど、大きなパネルがさらに迫力を生み出している。

各年の年表や詳細なデータがパネルで示されている

子どもたちが使える最新のテクノロジー

道広氏は「決して中身は小さくはなっておらず、深みを持たせています」と語るように、面積の縮小の代わりに濃密さを出している。

特筆すべき点は展示コーナーも時代に合わせて進化を見せていることであった。移転後には数々の技術が盛り込まれ、王会長が積み上げてきた数々の記録をその場で整理して表示できるようになっている。

その一つが「OH DATA TABLE」。これは選手のオブジェをテーブルに置くことで、データを一覧で表示できる。

王会長の記録とタイトルが瞬時に表示される

これには、一つのディスプレイ上で同時に何人でも操作ができるマルチタクションという技術が用いられている。王会長や長嶋茂雄氏、多くの名勝負を生み出してきた江夏豊氏や星野仙一氏との対戦成績を一目でチェックできる。

さらには小久保裕紀監督や城島健司球団会長付特別アドバイザーといった”王チルドレン”、さらには柳田悠岐選手といった現役選手のオブジェもあり、歴史を超えた比較が可能となっている。

選手を同じテーブルに置くとデータの比較ができる

道広氏は、テクノロジーの導入についてこのように話した。

「マルチタクションは、お子さまでも使いやすいということで導入しました。移転までの約2年間、有識者などを交えて何十回も議論を重ねましたね。その時にお互いに案を出し合って今の形になりました。

記録やデータが膨大にあるので、それを活かした仕掛けとして新しいものと組み合わせてできたと感じています。

あともう一つのテクノロジーとしては、『デジタルコレクション』という画面に映ったものをタップして見れるものを導入しています。現物が今ここにないものでも、デジタル上で楽しむことができます」

デジタルコレクションで現地にないものでも見ることができる

一本足打法の原点「荒川道場」の再現

展示コーナーでは、王会長を語る上で外せないエピソードが再現されている場所がある。それが”荒川道場”。王会長の代名詞である”一本足打法”が誕生した伝説の道場である。

左足一本で立った王選手を荒川コーチが動かそうとしても微動だにしないシーンや、日本刀を振り下ろし紙を綺麗に切るシーンなど、脳裏に深く刻まれている往年のファンも多いかと思う。

恩師である荒川博コーチとの二人三脚でつくりあげ、”世界の王”へと繋がったたこの場所を、特別映像と共に見ることができる。

一本足打法の原点である荒川道場

この再現には、ある人の尽力を欠かすことはできなかった。そのこだわりと共に解説してくれた。

「荒川道場の再現は、荒川博コーチのご親族にもご協力いただいています。荒川日誌の展示をしているのですが、こちらも荒川氏のご親族の皆様のお力添えを頂いております。

あとは上から映像を投影して反射させるつくりになっていて、今回はホログラムで飛び出す形にしてリアリティを求めました」

この日誌では2人との間にどんなやりとりがあったのか。努力の軌跡の一端を知ることができる。

荒川博氏の弟に協力いただいた王選手との日誌

展示品の運搬にまつわる苦労話とは?

ミュージアムとして管理している王会長の展示は約2,500点に及ぶ。そのうちの約300点が展示されている。

昨年のWBC開催時には特別展が行われ、期間限定で王会長が初代監督を務めた06年時のユニフォームやメダルを展示するなど、時期やイベントに合わせての入れ替えもある。

それ以外にも各所から、展示の相談も受けるという。

「TV・メディアを始め公共施設のみならず、企業様からもお借りしたいというご相談もありますので、私が倉庫まで走って行きます(笑)。

また、今年5月に読売巨人具軍様にて開催された『王貞治DAY』の折には、野球殿堂博物館様にて一部用具を展示して頂きました。野球関連の施設や各記念館様とは展示品の貸借をさせていただくこともあります」

その一方で、運搬するにおいてもハードルが高いものもある。運ぶ際にあったエピソードを披露してくれた。

「台湾で展示することがあったのですが、国外からの持ち出しが出来ない表彰品や易損品などもあり、移動には大変苦労しました。

また、王会長が一本足打法を習得した時に使ったことで有名な日本刀。今でも殿堂博物館にて展示されていますが、こちらには銃刀法の関係で福岡に運ぶことができないといったことがありましたね」

国民栄誉賞第1号として贈呈された大冠鷲の剥製

なお道広氏は以前から王会長と直接会話することもあり、野球に対する姿勢を真横の”特等席”で聞くこともあったという。

筆者もミュージアムを一緒に回った際、一本足打法の連続写真パネルの前で体験談を共有してもらった。

「実は毎打席違う一本足打法なんです。あとホームランを打ってベースを回っている時、二塁ベース付近で『インコースを打ったから次は外中心の攻め方をされるだろう』と次の打席のことを考えていたそうです」

さらには少年時代、王選手に魅了された一人だった。

「学生時代に読売新聞配達の手伝いをしていた時、いつも真っ先に王選手の成績を見てから積んでいました。『昨日は第何号ホームランだったのか』などとチェックするのが毎日の楽しみでした。こうやって直接関わる機会に恵まれたのも不思議ですよね(笑)」

今は王会長の想いを体現する伝道師となっている

語り尽くせないほどある王会長ゆかりの品々、そして会長の想いを表現した野球体験コーナー。

あともうひとつ、今の世代のファンをも取り込む工夫が凝らされていた。それは道広氏の汗と知恵の結晶が詰まった空間でもあった。

(つづく)

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