元日本ハム・田中幸雄さん OBクラブ出演当時に語った打撃の秘訣 最後まで持ち続けた「相手の球を全力で打ち返す気持ち」
21日に都内で行われる日本プロ野球OBクラブ(以下、OBクラブ)主催のイベント「~MEMORY COLLECTION~」。
8月に元ロッテの西村徳文氏と初芝清氏の2人が出演し、好評を博した。
今回は、西崎幸広さん・田中幸雄さんのファイターズレジェンドコンビで展開される。
会に先立ち、田中幸雄さんが以前OBクラブのYouTubeに登場した際に収録後に語った、自身の打撃解説についてお送りする。
(写真 / 文:白石怜平)
足を上げるフォームは94年シーズン中に
田中幸雄さんは、ファイターズ一筋22年でプロ通算2012安打を放ち名球会入りも果たした大打者。負担の大きいとされる遊撃手も守りながら通算287本塁打も放っている。
左足を大きく上げてタイミングを取る打撃フォームが特徴だった。その打ち方になっていった理由を自ら明かしてくれた。
「最初はそうではなかったのですが、94年の途中からですね。この年は5月前半まで調子良くて、構えも小笠原(道大)みたいな構えだったんですよ。ですが、5月の終わり頃から全然打てなくなってしまったのでバットを寝かしたんです。
そしたらステップも肩で取るようなイメージでやったら自然と足がだんだん上がるようになってきた。大きく上げるようになったのは翌年の終わりごろだと思います」
95年はこの年就任した上田利治監督の構想で、外野から遊撃手に再コンバート。さらにはほぼ全試合で4番も務めた。
上田監督の期待に応え、打率.291・25本塁打・80打点と主軸として打線を支えた。足を上げるメリットはどんな点にあるかを、このように解説した。
「一番はパワーを伝えられることです。軸足にしっかり乗せた方が踏み込む力が強くなるので、上半身にも伝えられるんです。
捻りも使えるのでスピードが変わります。なので疲れたらどんどん捻ってましたね。野茂(英雄)じゃないけどお尻が投手に向くくらい(笑)」
自身の現役時代は上で挙げた野茂英雄投手や伊良部秀輝投手といった力で勝負する投手と多く対戦した。こういった投手に力負けしないよう、パワーをロスしないかが大事なポイントだったという。
「僕はボールに対して全力で打ち返したい気持ちが強かったんです。真っ直ぐを待って仮にフォークが来ても軌道が見えれば止まれるので、そこからバチン!と打ちたかった。
タイミングがずれて軽打になることもありますが、できるだけ強いスイングで打ち返したい想いがありました」
反復練習は「無意識に反応するまで」
崩されても体の反応で打てたという田中さん。
松坂大輔投手のスライダーであってもうまく合わせ、右方向への安打を放てる技術があった。それは自然と反応で打てたものだったという。
「想定通りに球が来ればいいですけど、ほとんどそうはならないですから。無意識に体が反応するまで染み込ませないと打てないです。野球、特にスポーツはそうだと思います」
ここでは他の競技の例を挙げ、少年時代から行っていた練習が礎になったことを明かしてくれた。
「テニスとか卓球とかって自分で動いてポイントに持っていくじゃないですか?僕は小学生の高学年くらいから、そういう練習をしていたんです。
軟式ボールを上げてバウンドさせて打つ。全部同じところに来ないので、弾んだらそこに体を持っていって合わせて打つことをやってました。
それを小さい時からやってるので、あれで打つ感覚が良くなったと思ってます。反復して体で覚えるしかないですよ。守備もそう。打撃はそれでも3割の世界ですけれどもね」
「自分を必要としてくれる方たちの手助けをしたい」
ファイターズ時代、後楽園球場・東京ドームそして札幌ドーム(現:大和ハウス プレミストドーム)と、本拠地のサイズが広くなっていった。
大きな変化が起こる中で、田中さんは打撃のスタイルを変えたのか。引退後に考えた点があったというが、その答えは明確だった。
「球場の広さでスタイルを変えることはなかったです。年齢を重ねるとキレも落ちてきたので、晩年は長打を捨ててヒットに徹するようにしてもよかったと思うこともあります。
でも、打席でしっかり自分の打撃をしようという気持ち。相手の球を全力で打ち返すことは辞めるまで心がけていました。ホームランを打ちたい気持ちでプロに入りましたし、フルスイングで長打を打つ気持ちはずっとありましたから」
田中さんはOBクラブでも野球指導を行っており、解説や名球会のイベントなど野球を通じた活躍を今も続けている。
今後も野球に携わりたい気持ちとともに、今後への想いを語った。
「プロ・アマ問わず、指導という形で自分を必要としてくれる方たちの手助けをしたいです。教えた方たちの技術が上がる手助けができればと思っています」
21日には共に”東京”ファイターズを盛り上げた「トレンディエース」こと西崎幸広氏とのトークショーが行われる。
当時の思い出や、来シーズンのファイターズなど盛りだくさんで展開されていく。
(おわり)
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