
福岡ソフトバンクホークスジュニア 嘉弥真新也監督 工藤公康さんの教えを次の世代に継承へ
昨年現役を引退し、福岡ソフトバンクホークスジュニアの新監督に就任した嘉弥真新也さん。ジュニアチームが今年から行う球界初の取り組みの数々を指導者として実践する日々を送っている。
その目指す指導者像として挙げたのが、現役時代に支えた工藤公康さん。
かつて秋季キャンプで恒例だった”工藤塾”の門下生でもあった”指導者ルーキー”は、その経験を次世代へと受け継ごうとしている。
(取材 / 文:白石怜平、写真:©SoftBank HAWKS)
工藤さんから教わったトレーニングを応用
小学生たちを指導する立場となった嘉弥真監督。指導者となって参考にしている人物を一人挙げた。
「やはり工藤(公康)さんですね。選手生活を長くできたのは間違いなく工藤さんのおかげです。恩人です。特に下半身を強化することや体の使い方についてをたくさん教わることで、数を投げなくても球速やコントロールも向上しました。
子どもたちにもトレーニングは絶対大事というのを伝えていきたいですし、工藤さんにはぜひグラウンドに来てほしいです」

工藤さんにはメニューの相談をしたことがあったという。それは自身が現役時代に教わったことをまさに子どもたちへ展開する構想を抱いている。
「キャンプの時に工藤さんが僕たちに課してくれたメニューを負荷を落としてやってみようかなと。自転車のチューブを引っ張るメニューがあるんですけれども、それはどうですかという話を直接相談しました。
そしたら、『あれは負荷強すぎると思う。みんな野球選手だからやったけど、子どもたちには重すぎるからチューブの本数を減らしてやってみたらどうだろう』とアドバイスをいただきました」
自身の経験から自転車のチューブを使うことに意味があると述べ、その動きについても説明を加えた。
「進行方向と逆側に吊るします。僕だったら(左投手のため)左足で蹴るのですが、移動のスピードがボールのスピードにつながるのでそれだけでもすぐパフォーマンスは変わるはずです。
僕が工藤さんにやらせてもらったメニューを活かしたら相当体も強くなると思うので、後は首脳陣とトレーナーで協力して量を調整していこうと考えています」
工藤監督時代、選手として過ごしたエピソード
かつての指揮官から受けた教えの数々は、自らが指導者となってからも活きようとしている。それは日頃のコミュニケーションからも影響は受けていたと言う。
「些細な点でも『調子どう?』という感じで、コミュニケーションをよくすごく取ってくださいました。技術的な面では筋肉の名前を使われるので、僕もついていくのに必死でした(笑)。
調べたりトレーナーさんにも聞きながら都度覚えていきましたし、新しい部位が出てくると、またインプットすることを繰り返していく日々でした」

工藤さんが在任時、秋季キャンプで名物となっていたのが”工藤塾”と称される特別トレーニング。
監督が投手陣に向けて体幹強化や筋力アップを目指したメニューを組み、さらに「何のためにやるのか・なぜ必要なのか・取り組むことで得られること」などといった講義が直々に行われる。
強化指定選手に選ばれた者が受けられるこの塾には、嘉弥真監督も門下生として参加していた。
「キャンプの時に僕や東浜(巨)、岩嵜(翔:現中日)など選ばれた10人弱のメンバーで全体練習後にやっていました。それが大きかったと思います。
本当にきつい練習でしたけれども、下半身の強さって大切だなと改めて実感しました。あれがなかったらもっと早く選手生命が終わってたと思います。
よく『走れなくなったら終わり』と仰っていたので、そういった面も含めて子どもたちにしっかり教えたいです。ジュニアに選ばれる子は技術があると思うので、トレーニングでさらに伸びると思いますので」
就任一年目でのVに向け「共に成長していく」
新年度開始からすぐに動き始めたホークスジュニアの2025年。すでに新チーム結成そして年末のトーナメントに向けて早くも意気込みを見せている。
「昨年のトーナメントも見ましたけれども、みんな上手いです。帆足さんが教えていたような子を探して育てることにはプレッシャーもありますが、”やってやるぞ!”という気持ちです」

コーチ陣は昨年の優勝を知る若林隆信コーチに加えて、三代祥貴(よしき)コーチが新たに加わった。打撃や守備のメニューは2人に任せながら、この一年を共に戦い抜く。
「野手については若林コーチと三代コーチにどんどん聞いていきます。特に若林コーチは経験もあるのでしっかり話をして、大会まで何十試合とこなすと思いますから選手たちを見極めながら連携していきたいです」
新監督として今年のホークスジュニア、そして未来の野球界を築き上げる子どもたちへの想いとともに抱負を述べて締めた。
「もちろん連覇を狙います。子どもたちのレベルアップをサポートしながら、野球人としての成長を促したいです。挨拶からしっかりできるように教えながら、グラウンド内外で僕も選手たちと成長していきたいです」
ホークスが新たに切り開くジュニア世代の育成改革と共に、嘉弥真監督の第二の人生がスタートした。
今後も、チームそして監督としての成長過程を追い続けていく。
(おわり)
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