「第24回 全日本身体障害者野球選手権大会」千葉ドリームスター 果たせなかったリベンジと光射した未来への可能性

コスモス打線の勢いに泣くも佐野賢太郎が投打に活躍

試合は13:00にプレーボール。先発はエース・山岸英樹。17年から4年間、関東甲信越大会の決勝の先発を務め、打撃でも主軸を担う。

山岸は小学校6年生の時のてんかん手術の後遺症による左半身麻痺の障害がある。そこから地道にリハビリとトレーニングを重ね競技レベルにまで回復。17年にドリームスターへ入団するとすぐにチームのエースの座を掴んだ。

昨年春からはパラ陸上(走幅跳・やり投)にも参戦し、現在は競技の”二刀流”として24年にパリで行われるパラリンピック出場を目標に、日々鍛錬を重ねている。

昨年の選手権に続き先発マウンドに立った山岸

初回から早くもコスモス打線が襲い掛かる。無死一・二塁からこの試合先発の3番・堤佑真が走者一掃のタイムリーを放ち2点を先制される。

イニングの途中に小笠原一彦監督がマウンドに直接向かうなど、波乱の幕開けとなった。

途中、小笠原監督(写真中央)がマウンドへ行くシーンも見られた

2回はコスモス打線は球を慎重に見極める選球眼を見せ、四球で塁を重ねていく。満塁から1番・小寺伸吾のタイムリーで2点を失ったところで、ドリームスターは2番手・佐野賢太郎にスイッチ。

佐野は先天性の「遺伝性痙性対麻痺」という下肢障害がある。グラウンドでは投手そして内野(一・三塁)を守り、ベンチからは時にスタンドにも響き渡るほどの大きな声で鼓舞する。

現在は小児科の医師として、医療現場の最前線で日々奮闘している。

2番手でマウンドに上がった佐野

マウンドに上がった佐野は緩急を織り交ぜた投球を見せる。2番・重入義宣の遊ゴロを一塁そして本塁と連携プレーを見せダブルプレー。次打者を三ゴロに打ち取り、見事にピンチを切り抜けた。

「ブルペンで肩を作りながら試合を横目で見てたのですが、実際にマウンドに上がった時は普段通りの気持ちで投げることを心がけました。いつも結果の良し悪しは自分次第と考えているので、ピンチであることは意識せず投げました」

ナインも総出でベンチから佐野を迎えた。

ナインで好投の佐野を出迎えた

そして佐野は裏の回に打撃でも意地を見せた。二死一・二塁のチャンスで打席に回ると、初球を腕だけで振り抜いた。打球は三遊間を抜けるタイムリーとなり、1点を返した。

佐野も、打者代走(※)で走者を任せる代わりにホームでチームメートを出迎えた。

(※)主に下肢障害の選手に適用される制度で、打者の代わりに打者走者として走る選手のこと。

佐野は自身(写真右)のタイムリーで1点を挙げた

「打席は久しぶりの実戦ではありましたが、バッティングセンターで感触がも良かったので自信持って初球から打ちに行きました。タイムリーになったのでよかったです」と後に振り返った。

ここで勢いづき追い詰めたいところであったが、堤をこれ以上打ち崩すことができず打線は沈黙。

3回以降もコスモスに追加点を許し、ドリームスターは1−7で敗戦。翌日の順位決定戦へ臨むことになった。

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