「強みは”問題発見”と”問題解決”」横浜DeNAベイスターズ 壁谷周介さん 数々のテクノロジーで実現した便利化と新たな発見

”完全アウェー”の1年目、クラウド化を「突破口」に

転職後、自身の経験を活かしすぐに球団の期待に応えてきた壁谷さんであるが、野球界へ飛び込んだ当初は相当な苦労もあった。転職当時のことを訊ねた。

「当時チームにいた方々は9割以上が元プロ野球選手でした。なので、元プロ野球選手かそうでないかという形で見方が分かれていて、当時は元選手以外の職員が数人でしたので、”完全アウェー”なわけですよ。『あなたは何ができるの?』というような感じで、マイナスからのスタートでした」

その中で壁谷さんが考えたのは、チームの中で自身の価値を発揮することだった。

「最初はチーム企画室としてアサインされた際、これからITを活用してチームを強くしようという方針を掲げていました。みなさんITについては馴染みが薄い方が多かったですので、そこで価値を発揮できれば認めてもらえると考えました。ITを使うことで、みなさんの仕事が便利になるという点を突破口にしましたね」

ITを活用し、”便利化”を実現した(球団提供)

ここでまず導入したのはクラウド。当時は、スカウトがビデオカメラで撮影した映像を球団事務所にあるHDDレコーダーからDVDへ都度ダビングをして持ち歩いていた。

数週間に1度球団事務所へ行き、スカウト会議の際に見たい映像を探しながらやっていたという。

それをクラウド化することにより、出張先で撮影した映像や記録したデータをその場で共有できるようになった。場所や時間を選ばずにできるようになるため、都度横浜に戻る手間が省け、業務効率も格段に向上した。

1年目の12年オフに仕組みを整備し、2年目の13年シーズンから早くも導入した。

「最初は『困っていることは特にありません』といった反応でしたが、『クラウドを使えばこんなに便利になりますよ』と。選手や高田GMから”あの映像がほしい”とリクエストがあれば、それはクラウドを活用すれば検索をしてその場で見れるので、それで『便利になりましたね』と目に見える形で分かるので、そこから始めました」

当時の高田繁ゼネラルマネジャー(GM)も会議の前に自身のタブレットで事前に何度も選手の映像を確認することができ、大いに活用していたという。

「当時の高田GMも時にはスカウトに電話して、『この選手は今どうだ?』などと確認していましたし、すごく喜んでいただきました」

本章の冒頭で述べた”ITを活用してチームを強くすること”。これは、11年秋に球界へ参入した親会社のDeNAが強く掲げた方針だった。

同社は言わずと知れたITの大手ベンチャー企業。そのノウハウを活用しない手はなかった。

「本社からもITを使ってチームを強くしてほしいと言われていまして、それが私のミッションでした。そのための予算もいただいていましたから」

本社からの”ITを活用してチームを強くすること”を実践した(球団提供)

異業種から転職し、”完全アウェー”から始まった1年目。それでもすぐに結果に繋げ、周囲の信頼を瞬く間に構築していった。その要因を訊ねた。

「私の強みだと考えていたのは、コンサルティングの仕事を通じて培ってきた”問題発見と問題解決”。さまざまの業種そして企業のエースの方々と一緒に仕事をして、かつ結果を出すというハードな仕事でした。

そこでは自身の専門外ではなくても、専門性の高い人と一緒にやることで、成果を出すことをずっとやってきたので、取り組んできたことは同じだと考えやっていました」

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