「TOYOTA ARENA TOKYO」開業記念特集④ 青海に広がる“非日常空間”は、アルバルク東京が築き上げる絆の発信地に

「TOYOTA ARENA TOKYO」の開発・運営責任者を務める林洋輔さん。

2020年から同職に就任して以降、設計から調整などを重ね、構想を具現化してきた。アリーナには来場者にとっての特別な空間に加えて、アルバルク東京を起点にした一体感が醸成されていた。

本編の最終回はアリーナそしてチームで作られる絆のプロセスと、開業後の展望について語っていただいた。

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(取材 / 文:白石怜平)

米国4大スポーツを視察した知見も反映

林さんは、アメリカ駐在中から同国4大スポーツのアリーナを30箇所以上視察や観戦に行っており、うちNBAのアリーナも20箇所近くを回ってきた。

TOYOTA ARENA TOKYOの開発においてもその知見は大いに活用されている。

「来ていただいた方に試合以外の楽しみをどうつくるかをポイントにしています。その一つは立ちながらでも試合を観ていいのではないかと。従来だと立ってしまうと周囲のお客様にご迷惑となってしまうかと思います。

ですが、ここでは飲み物片手に立ちながら気軽に観れる場所を用意したいと考えていました。これはNBAのアリーナもそうなのですが、それぞれ自由なスタイルで観戦しているのを見て、これはいいなと感じたんです」

一部コンコースでは立ちながらでも観戦できる

また、海外問わず国内のアリーナやスタジアムにも足を運び、情報収集や意見交換を行ってきた。その中で感じていた課題感もクリアできるアイデアが盛り込まれている。

「一つ挙げますと、ファミリールームは小さいお子さんを持つ親御さんにも常にリアルで試合を観れるように設計されています。

これは、窓ガラス越しに席があってベンチシートで試合を観れますし、その後ろが子どもたちが遊べるエリアになっています。

お子さんが遊びたいとなった時に、親御さんは子どもさんから目を離さずに試合も観続けることができます。もし、子どもさんがまた試合に戻りたくなったらいつでも戻れる造りにしました。

せっかくチケット買って来場いただくので、ぜひ親御さんもモニターではなく、常にリアルで試合を観れるようにというのは、多くの施設を視察した中でも実現させたいなと思っていました」

小さな子どもを持つ親もリアルで観戦できる「ファミリールーム」

アリーナそしてチームが創り出す一体感

座席やホスピタリティなど、来場する人全員が特別な観戦体験を味わうことのできるアリーナであるが、チームにとってもあるパワーを生み出す場所でもあった。

「これは大事だなと思ったのですが、選手からの要望の一つに、体育館の隣にジムを設置してほしいというものがありました。

戦線を離れてリハビリをする時、ジムが体育館と離れているので孤独感を感じてしまうと。なので窓ガラス越しにお互い見えるような造りにすることで、チーム全員が戦っていると感じられるようにしました。

あとは選手もスタッフも社員もここに集まるので、食堂なども一緒になります。練習や試合さらにはそれ以外の日でも全員が1つの場所に集まれるので、これまで以上に一体感がつくられています」

アリーナでは一体感が日に日に強まっているという

アルバルク東京が醸成する一体感はチームやファンだけにとどまらない。これまで関わっている方々全てへの感謝によって一つの絆が広がりを見せている。

「我々はアリーナ開発にあたり、建設や内装など携わっている方たちに本当に恵まれてここまで来ました。アリーナを0からつくるプロジェクトにも喜びを感じてくださったり、アルバルク東京というチームへの愛着も持っていただけたら嬉しいなという想いから、応援企画を立てたんです。

パートナーはもちろん、アリーナ開発に関わっているみなさんで試合を応援しましょうと何度か開催しました。その時には300人以上毎回来ていただ来ました。

昨年の10月には開業1年前ということで、催しを行ってそれも200人ほど来てすごく盛り上がりました。みんなで『いいアリーナをつくろう!』という機運が自然と高まっていきました」

50年先のニーズにも応えられるアリーナに

林さんがかねてから公言していたのが「50年先も地域に愛されるアリーナ・愛されるクラブになる」こと。

50年というのは一例であるが、アリーナ開発では数十年先を見据えた設計・企画を立ててきた。その意図はあの世界的な苦境も少なからず影響していた。

「プロジェクトの設計段階に入った後にコロナ禍に見舞われましたが、あの時は無観客試合になって、試合はオンラインで観れるのでアリーナに観戦へと行く人がいなくなるのではないかという危機感もありました。

なので、私が真剣に感じているのは、『50年後にスポーツをどう観ているのかは誰にも分からない』と。50年前は球場で野球を観る時は球場で座って観るのがスタンダードでした。

でも、今は立ち歩いていろいろな場所から1試合を見たいというニーズもありますよね。

このように時代や観戦スタイルが変わっても適応できるような施設になることも、私が思い描いている一つです。今その答えは持ち合わせていないですが、答えがないからこそ変化に対してフレキシブルに行えると思っています」

50年、その先も地域に根付き「地域に愛されるアリーナ」を創る

自身にとっては5年をかけて0からつくり上げてきた“まだ見ぬアリーナ”がついにオープンする。将来の展望について語って最後を締めた。

「年間200万人近い規模の施設が、ここ東京に新たにできます。TOYOTA ARENA TOKYOが起点となり、このお台場エリア全体に人がより多く集まり、動きを見せるようなランドマークになるよう、チーム一丸となって今後も取り組んでいきたいです」

「TOYOTA ARENA TOKYO」の開業は10月3日。日本バスケ界のみならず、スポーツ界にとっても大きな歴史の1ページが刻まれる。

(おわり)

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