
「TOYOTA ARENA TOKYO」開業記念特集③ アリーナに込められた3つの重点テーマは”創出“と“継承”がカギに
まもなく開業を迎えるアルバルク東京の新ホームアリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO」。
構想から約10年。日本で“まだ見ぬアリーナ”を時間をかけて設計し、約2年の建設期間を経てついに竣工した。非日常空間あふれる夢のアリーナの実現には、常に未来を予想する先見性を追い求めたからこそ実現へと繋がっていた。
今回はアリーナの開発・運営責任者を務める林洋輔さんに話を伺い、完成までの軌跡を追った。※全4回のうち3回目
(取材 / 文:白石怜平)
4年間の米国駐在を経て、アリーナ開発の運営責任者に
林さんは2020年にアルバルク東京にジョインし、アリーナの開発・運営責任者に就任した。当時の状況や心境を語った。
「直前までアメリカにいたのですが、『トヨタがつくる新アリーナの開発をやってもらいたい』という話をいただき、帰国しました。
もう少し紐解くと、私が初めてアメリカに駐在したのが2016年なのですが、その時の最初の仕事がバスケットボールに関することでした。Bリーグのチームが新アリーナを造るために視察に来るので、その案内役を務めたんです。
もともとスポーツが大好きですし、こんな嬉しいことはないと思いました」
林さんはアメリカ駐在中を含め、米国4大スポーツを30箇所以上を視察・訪問するなどアリーナの特徴や雰囲気を熟知していた。プロジェクトとしては設計段階だった当時の想いをこのように語った。
「自分がアメリカで多くのスタジアムやアリーナを見てきましたし、この大都市・東京につくるということで『まだ見ぬアリーナをつくりたい』という想いを描いていました。
私の中でアリーナというのはプレーする人はもちろん、観る人にとってもいい施設であるべきだと考えています。エンタメ性が高かったり、ホスピタリティやグルメといったものも充実させたいと考えていました 」

「正解がない答え」を積み重ねる
建設へとフェーズが向かうにあたり、林さんはあるポイントを意識しながら検討を進めていった。
「完成してから何十年と根付いていくに当たって、時代の変化をシミュレーションすることです。現時点で最先端のニーズを掴んでいても、年数が経過すると必ず変わってきますよね。
建物は一度作るとベースが固まるので、どこに何をつくるかは20年・30年先を見据えないといけないなと。
例えばスイートルームの広さ一つでも、今は○部屋だけれども、おそらく20年後は△部屋まで増えているのではないかという予測を立てながら検討を重ねました」

ただ、0からかつ“まだ見ぬアリーナ”をつくるという壮大なプロジェクト。
乗り越えなければならない大きな壁が数々あった。その苦労を一端を明かす中で共通してたのは“正解がない答え”を出すことだった。
「難しかったのは、スケジュールをどう引くかでした。プロジェクトではマスタースケジュールを作成するとありますが、何をいつまでに決めればいいのかの手探りでしたので、外部に相談すると『まだ決まってないんですか?』と言われることもありました。
後は意思決定が無数にあります。机や椅子を1台購入するのも色や形がありますし、例えばセンターハングビジョンも形状はどうするか・業者さんにはこちらから声をかけるのか、提案してもらうのか。その提案もゼロからしてもらうか、こちらから指定するかもあります。
あと料金設定もです。貸出料金をいくらにするのかもそうですし、曜日ごとに分けるのかも検討しました。他の施設も参考にするのですが、自治体運営か民営かによっても違いますので、正解というのがない。
契約の形式、社内の合意など様々な意思決定がありますが、それにも正解がないので地道に各所と話し合いながら決めていきましたね。もう長時間になろうがミーティングは全部出ていましたよ(笑)」

アリーナに設定された重点3テーマ
TOYOTA ARENA TOKYOでは、「スポーツ」「モビリティ」「サステナビリティ」という3つの重点テーマが設定されている。このテーマそれぞれに込めたものを林さんに伺った。
スポーツにおいては座席の素材や角度、ホスピタリティやサービスなど一つひとつがこだわり抜かれており、林さんが上でも述べた“観る人にとっていい施設であること”が具現化されている。
この綿密さの理由には、核となるものがあるためだと林さんは述べた。
「トヨタはたくさんチームを所有していて、スポーツを大切にしている企業です。それを私なりにこのプロジェクトで読み替えると、『観戦文化を創ること』だと考えています。
そうなると、先ほどにもお話に出た観る人にとっても価値を感じられる施設を造る必要がある。そうなると、テラススイートやラウンジといったエリアも充実させるのがいいのではないかと。
この観戦体験・観戦文化の創出というのが、アリーナの核となる考え方なんです」

モビリティでは、アリーナが建つこの場所が持つ意義を最大限に活用していくものとして示していた。
「アリーナができる場所がメガウェブの跡地でして、トヨタの“聖地”とも言える場所でもあるので、そのレガシーを引き継いでいきたい想いがあります。
ここで新たなモビリティ技術を発信して、この支援できるいくつか出たり、トヨタのブースを設けて展示も行う予定なので、今後新たな技術の発表や取り組みが展開されていきます」
今後は未来型モビリティサービスとして計画を進めており、トヨタの「C+walk S」を活用した観戦やお台場地区の観光周遊の企画などが展開されている。

そして、3つ目のサステナビリティ。アルバルク東京は「ALVARK Will」という“社会的責任活動”を展開している。
その中で注力している分野には「環境」があり、ホームゲーム全試合で“カーボンフリー”化に取り組むなど環境課題にもアプローチしてきた。
その強い責任感や培ったノウハウはアリーナ開発にも展開され、会場内で発生する廃棄物の全量リサイクルや使用電力の100%再生可能エネルギー使用など、持続型のライフスタイルをデザインする。
「アリーナは50年先もこの場所に残る、我々とすれば一生ものになります。そんなアリーナをみなさんに愛されるものにしなければいけないですので、サステナビリティという観点は欠かせない要素です」
来場する方や環境に向けての知恵や工夫が凝らされているアリーナ。それはアルバルク東京に関わる全てのステークホルダーの絆をさらに強固にする拠点でもあった。
(最終回へつづく)
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