
「TOYOTA ARENA TOKYO」開業記念特集① 非日常空間を醸成する設備に込めたこだわりとワクワク感の源
10月3日に開業する「TOYOTA ARENA TOKYO」。このアリーナには、日本でかつてない設備が数々盛り込まれている。
それは、アリーナの創造に携わる方たちの知識や経験、そして熱意から導き出されたものだった。
今回はアルバルク東京の髙田佑介さんに話を伺い、設備に込めた意図やその情熱のルーツに迫った。※全4回のうち1回目
(取材 / 文:白石怜平)
来場者の体験価値を高める設備
髙田さんは現在、運営企画室で設備や什器の導入/調整などを担当している。
今回はその中でも「ビジョン」と「観客席」にフォーカスしていく。
TOYOTA ARENA TOKYOのビジョンは、見やすさにこだわった「センターハングビジョン」、そして国内初となる2層の「リボンビジョン」からなる。
様々な工夫が施されたビジョンについて、髙田さんは以下のように解説した。
「特徴を一言で表すと『大迫力のエンタメ空間を創り出せる』ことが大きな特徴です。どちらかのビジョンだけを突出させるのではなく、空間全体を意識して計画を進めてきた結果、我々のアリーナは収容人数が1万人規模なのですが、ビジョンの総面積は2万人規模のNBAアリーナにも匹敵するものとなりました」

アリーナを象徴する「センターハングビジョン」。ビジョンの側面を観客席側に傾けるなど、どの席からも見やすい形状となっている。
上部リング、メイン、下部リング外側・内側の3層構造で、すべてのビジョンが高精細仕様となっていることから鮮明な画像を映し出す。
「一番のポイントは見やすさです。例えば、上部リングはアリーナ名称、メインはライブ映像、下部リングはスタッツ、というように何をどこに映し出すのか検討を重ねてきました。
下部リングについては、選手からもベンチサイドからも見やすいように内側にもビジョンを備えていますが、内側全面というのは国内初となります」


より見やすさを徹底するため、昨シーズン中から髙田さんらは検証を行っていた。
「各ビジョンに映し出すコンテンツも、観客席からビジョンまでの視認距離を考慮するため、ホームゲーム準備日などに、どのくらいの大きさであれば文字が認識できるのか検証を重ね、サイズを決めてきました」
加えて3層構造のセンターハングビジョンの見せ方についても、クラブ内で時間をかけて検討を重ねてきた。
「技術的には、3層とも面と面が接するコーナー部分を、継ぎ目が無いシームレスにすることもできましたが、メインについては、意図的にフレームをつけて境目が分かるようにしています。
“どこからでも見やすい構造”にしたいと試行錯誤した結果、コーナー部分にラインが入っていた方が見やすいという結論に至りました。また、映し出される映像を際立たせるため、スピーカーなども視界に入らないように隠す工夫をしています」
国内初となる2層の「リボンビジョン」についても以下のように説明する。
「2層あることも凄いのですが、なんと言っても上層は高さが2mあるので、実寸の自動車も映し出すことができます。リボンビジョンとして高さが2mあるアリーナは国内はもちろん、世界的にも類が無いのではと思います」

座っただけで味わえる“非日常空間”
TOTOYA ARENA TOKYOの特徴は多数あるが、その一つはアリーナの形状がオーバル型(楕円)であること。そのため、360度どこに座ってもバスケットボールコートが見やすい造りになっている。
「どの観客席からでもコートが見やすいだけでなく、より”非日常空間”を感じていただくため、座り心地にもこだわることは絶対条件だと考えていました」
非日常空間を感じられる理由の一つとして、高単価の座席で採用が多いレザーシートが用いられていることが挙げられる。しかもそれが席種問わず1万席全席に導入されている。
「張地は当初の計画では、レザーシートにする予定ではなかったのですが、新しいアリーナならではの見せ方をしたいという思いから、クラブ内でも議論を重ね、最終的にボリューム感がありながら艶があり高級感を感じられるという点で意見が一致しました。
また、ロウアースタンドだけでなくアッパースタンドも、座面だけでなく背中にもクッションを付けました」

シートは昨シーズンにホームゲーム数試合で会場内にて公開され、ファンの期待感を高めていた。その際にファンの方たちの人柄を交えながらある仕掛けがあることを明かした。
「見た目からは分かりませんが、実は座面がゆっくり跳ね上がるようになっているので、そのまま立ち上がっていただいても、バンっと音が鳴ることはありません。それでも、座り心地を体感していただいた際には、手を添えながら立たれる方が多く、マナーのよさに心が温まりました」
「誰も見たことがないアリーナを実現させたい」
髙田さんがジョインしたのは、着工半年前の23年1月。その直前まではメーカーという立場で、スタジアムやアリーナのプロジェクトに携わっていた。
チームに提案する立場から、今度は自ら創る側になりたいと考えた意図について以下のように答えた。
「メーカーの時は、チームから要望をいただいてそれに応える役割を担ってきました。
ただ、それを重ねているうちに『なぜ、チームはこのような要望を抱いたのだろう』と考えるようになり、自分もどんどん知りたいと思うようになっていました。
そのタイミングで、TOYOTA ARENA TOKYOのプロジェクトメンバーが募集されており、こんなチャンスはないと思い飛び込みました」
そして、念願叶いアルバルク東京の一員となった髙田さん。立場を変えて再びスタート地点に立った時、どんな心境を抱いていたのか。
「前職でも民設民営のプロジェクトで掲げられたテーマに向けて、日々取り組んできた経験があるので、このTOYOTA ARENA TOKYOでも『誰も見たことがないアリーナを実現させたい』。入った初日からもちろん今もこの想いを持っています」

「我々も負けていられない」アメリカで感じた熱量
そして、同じ志を持ったメンバーと2年半以上かけてアリーナを具現化させてきた。開業が間近に迫った今、気持ちは日に日に昂っているという。自身の心を奮い立たせた瞬間があったことを明かしてくれた。
「プロジェクトメンバーは『このアリーナに携わりたい!』という強い意志を持って集まっていますし、一人ひとり専門性が高いメンバーが集まっているので、毎日刺激をもらっています。
余談になりますが、オーバル型のアリーナ形状が現れてきて、まだ屋根がない状態で工事現場に立った時、『これからこの場所で創めていくんだ』とワクワク感が強まりました。その場に立てるのは限られた人たちだと思うので、幸せな想いでもありましたね」

メーカー時代は、MLBのボールパークを中心に海外にも足を運んだという髙田さん。アルバルクに入社後もNBAのアリーナへと視察に行き、現地の担当者と会った時の逸話が、さらにそのハートを熱くさせた。
「アリーナ運営の立場から話を聞く機会があったのですが、。何よりその方の熱量がすごかった。
『自分たちのアリーナがいかに素晴らしいか』というをプレゼンしていただいたのですが、着ていたジャケットにアイスクリームがついてしまったことにも気付かないぐらい(笑)。
そのくらい私たちにずっと熱弁してくれていたので、『このアリーナやチームはその熱量から成り立っているんだ』と感じましたし、我々も負けていられないと引き締まりました」

10月3日のBリーグ開幕戦にて、ついに開業するTOYOTA ARENA TOKYO。髙田さんたちにとってもう一度スタートラインに立つことになる。
この約1ヶ月で行っていること、そして開業後に見据えている取り組みについて語ってくれた。
「図面で打合せしてきたことや想定していた姿と、実際に出来上がった姿とのギャップや新たな気づき、これからでも更に良くできることを開業に向けて調整していく必要があります。
開業後のチャレンジでは、1つはアリーナツアーをスタートさせたいと考えています。
現在計画中となりますが、、建設過程に携わったからこそ気づくポイントを中心に、少しばかり苦労話も交えながら、試合以外でも楽しめるプログラムにしていきたいです」
「誰も見たことがないアリーナ」がつくり出す非日常空間の源泉は、設備一つひとつに込めた知恵と想いにあった。(第2回へつづく)

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