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「王貞治ベースボールミュージアム」特別展示でたどる現役選手たちのルーツ チームメート同士が明かした甲子園でのワンシーンとは?

「BOSS E・ZO FUKUOKA」の4階にある「王貞治ベースボールミュージアム Supported  by DREAM ORDER」。

福岡ソフトバンクホークス代表取締役会長である王貞治氏の想いが形になった野球体験ゾーン「89パーク」や、会長の成し遂げた栄光の数々を展示品やテクノロジーを通じて肌で感じられる「ヒストリーゾーン」を紹介してきた。

しかし、ミュージアムに詰まった魅力はさらにある。今輝いている現役選手たちの足跡もたどることができる。それには、運営する方々が凝らした工夫が表現されていた。

最終回も引き続き、ミュージアムの館長である福岡ソフトバンクホークスの道広康則氏に特別企画について語ってもらった。

>第2回はこちら

(取材 / 文:白石怜平 表紙写真:©SoftBank HAWKS)

特別展示のきっかけは内川選手への”取材”から

ミュージアムにある展示コーナーには、王会長の足跡をたどるもの以外のエリアも存在する。

それが、期間限定の特別展示である。主に現役選手や監督にフォーカスしたもので、関連する選手の戦利品や写真などを交えて紹介している。

これらの企画は、道広氏が知恵を絞りに絞って実現させた数々である。

「今の時代はSNSですぐに情報を写真や動画付きでキャッチできますが、ここに来ないと見れない・知れないような仕掛けを日々練っています。特に展示品はその場に行かないと実物を見れないですから」

3月開催「小久保裕紀新監督のすべて」の模様(©SoftBank HAWKS)

特別展示が誕生したきっかけは、ドーム内にミュージアムがあった2017年にさかのぼる。

当時は、王会長の実家である東京・墨田区にあった中華料理店「五十番」を再現したコーナーが設けられており、その横に主力選手をピックアップした展示を行っていた。

ただ、道広氏は「当時はストーリー性もなくクオリティとしても決して高くはなかったので、来られた方にもしかしたら満足いただけなかったかもしれません」と課題感を抱いていた。

そこで、あの選手と話をしたことで発想を広げていったのだという。

「内川聖一選手と春季キャンプでお話する機会をいただいたんです。そこで聞いたのは高校時代のことでした。

足の手術した影響で2年生の時に全くプレーできず、野球を辞めようと何度も考えていたそうです。それでもご両親や弟さんの支えがあって、野球を続けて今があるんだと。

私もそういったお話を表現できればいいのではないかということで、テーマとストーリー性を持った企画展にしようと考えました」

内川選手から聞いたエピソードが原点だった

ミュージアムだからこそ知れるエピソード

テーマはタイミングを逃さぬよう逆算をしながら、綿密に練って実現まで持って行っている。

「かかりきりで3ヶ月は要していまして、一度に2つは並行して進めています。私が選手に取材して記事を起こしています。

当時の記憶を呼び起こして言葉を引き出してもらうので、写真を事前に集めて見ながら取材します。なので写真をどれだけ集められるかが勝負なんです」

ここで、長きにわたりホークスを支える者同士がかつて大舞台で対戦した時のエピソードを披露してくれた。

「高校野球をテーマにしたもので、明豊高校(大分)の今宮健太選手と沖縄尚学高校の東浜巨選手が甲子園で対戦した企画がありました。

マウンド上に東浜選手・二塁ランナーが今宮選手だった場面があったんです。

それで、東浜投手はこれまで投げていなかったスライダーを投げたそうなのです。次の回の攻撃で明豊高校の投手は今宮選手。そしたらいきなりスライダーを投げたそうなんです。

東浜投手もおかしいなと思ったそうで、今宮選手が二塁からスライダーの握りを見たのかをお2人に訊いたらその通りだと。そんなエピソードを盛り込みました。

投手のボールの握りを二塁から見ないですよね。さらに投げたことない球を次の回、しかも甲子園でいきなり投げられる度胸。それを展示コーナーでご紹介しました」

ここでしか見れないストーリーの数々を手がけていった

選手特集は少年時代まで遡って取材する。道広氏は選手たちのご実家にも直接足を運び、当時の映像や写真をお借りしている。

ドキュメンタリー番組を超える内容の展示を実現し続けているが、素材を集める過程では大きな苦労も伴っていた。

「(取材を行った9月に)柳町達選手と大津亮介選手の展示を行っているのですが、柳町選手は高校時代の練習試合の映像を流しています。

その際は母校の慶應高校様とお相手の学校、神奈川県と日本高校野球連盟様にそれぞれご承諾とご協力を頂かなければなりません。あとは映っているご本人と写真含め版権や撮影者など許可も必要です。

NGであれば掲載・展示はできないので、全てがうまく行くわけではないです。でもそうなるとストーリーが変わるので、素材に応じた対応が必要になってきます」

道広氏が自らの足で得た情報の結晶でもあった(写真は「小久保裕紀新監督のすべて」©SoftBank HAWKS)

9月下旬に行った際、若い層のファンが各所に足を止めて写真や映像に見入っている光景を見ることができた。道広氏も来場者の反応についてある相乗効果を感じている。

「その選手の背番号のユニフォームを着ている方達がたくさんいらっしゃるので、それを見ると嬉しくなります。2人でいらっしゃっている若い女性ファンの姿も多くありますし、そういった方も実は会長の展示もご覧になってくれます。ミュージアム全体に興味を持ってくださっているのかなと感じています」

9月23日に4年ぶりのリーグ優勝を果たしたホークス。現在はパーソル パ・リーグ優勝特別展示が12月初旬頃まで開催されている。

開催中のパーソル パ・リーグ優勝特別展示 ©SoftBank HAWKS

今後もホットな話題に合わせて企画を出していく予定であり、道広氏は今も日々構想を練っているという。

「BOSS E・ZO FUKUOKAでも期間限定で催しを行っていますし、王会長の展示を活かしながら真新しさをどんどん出していきたいです」

「エンターテイメントビルを牽引していくコンテンツに」

BOSS E・ZO FUKUOKAに移転して5年目を迎えた「王貞治ベースボールミュージアム」。

道広氏ら球団のたゆまぬ知恵と汗により、若いファンから王会長の現役時代を知る往年のファンまで老若男女問わず訪れている。

今後のミュージアムの展望について最後に語ってもらった。

「エンターテイメントビルなので、野球以外にもカルチャー系など多くあります。その中でドームに隣接してしている唯一の野球を題材とした施設になります。

なので、この施設を牽引しないといけない使命感があります。もっとE・ZOの中で野球色を発信していきたいと思います。

入り口の前で優勝へのマジックナンバーを大きく見せたりしてアピールをしています。野球好きの方にE・ZOをアピールしていきたいです」

野球界の歴史と未来への道筋は、ここ福岡の地からしっかりと発信されている。

(おわり)

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