MLB 「PLAY BALL」 2024 in 神宮 マック鈴木さんと五十嵐亮太さんが子どもたちに贈った”はじめての野球体験”
7月20〜21日、明治神宮外苑軟式野球場でMLB による「PLAY BALL」が開催された。
かつてMLBで活躍したマック鈴木さん(元ロイヤルズ他)と五十嵐亮太さん(元メッツ他)がゲストとして登場し、子どもたちに野球の楽しさを伝える2日間になった。
(写真 / 文:白石怜平)
「野球を始めるきっかけの場に」
「PLAY BALL」はMLBを代表する青少年参加型イベントで、22年から行われている。
主に野球未経験の子どもたちを対象に、投げる・打つ・捕るといった野球における基本のプレーを楽しみながら体験ができる。年代も未就学児から小学生という、野球をこれから始める年代にフォーカスしている。
アメリカやカナダを初め世界各地で行われており、日本でも同年に上陸後は多くの地域で行われてきた。昨年には東京都に加えて岩手県や福岡県、今年も石川県や兵庫県、宮城県でも開催されている。
参加するゲストも、かつて野球の世界最高峰であるメジャーリーグで活躍した豪華なメンバー。
本稿で登場するマック鈴木さんと五十嵐亮太さんに加え、過去には岩隈久志さんや藪恵壹さん、そして石川県では地元出身である松井秀喜さんも参加した。現役選手では、昨年の福岡でラーズ・ヌートバーもこのイベントに参加した。
イベントを主催するMLBの担当者は開催に至った経緯を明かしてくれた。
「背景としては昨今野球人口が減少していると言われている中、MLBとしても競技人口拡大の力になりたいという想いがあります。
そのためにはまず野球の楽しさを知ってほしい。このイベントではそのきっかけを提供したいと考えています。」
イベントの最後には安全に遊べるプラスチックバットとボールをプレゼントしている。参加して終わりではなく、これから野球に関心を持ち続けてほしい想いが込められている。
「野球を知ってもらって球場でも観戦したり、野球を始めてもらえたら嬉しい気持ちでPLAY BALLを実施しています」(担当者)
今回の講師はマック鈴木さんと五十嵐亮太さん
7月20日と21日に行われた会では、午前の部では4歳〜6歳の小学生未満、午後の部では小学1年〜4年生までの子どもたちを対象とした。
筆者が取材に行ったのは20日の午後。すでに気温は30℃を回っていたが、グラウンドでは猛暑を感じさせない元気さで既に子どもたちが駆け回っていた。13時に会がスタートすると2人が拍手で迎えられた。
マック鈴木さんは「野球をやったことない人、ある人が一緒になって楽しみましょう」、五十嵐さんは「元気よく!楽しく!いい思い出をたくさんつくりましょう!」とそれぞれ挨拶した。
ここから5つのグループに分かれて、バッティング・ピッチング・ベースランニング・盗塁・守備の体験を順番に体験。2人も交代のタイミングに合わせて各コーナーへ足を運んだ。
五十嵐さんは自らレクチャーも
五十嵐さんは回った都度、最初に全体に向けてレクチャー。野球が初めての子どもたちにもわかりやすい説明をしながら、明るい雰囲気をつくった。
投手編ではストラックアウトのコーナーが3箇所設置され、子どもたちは9マスに向けて一生懸命投げ込む。ここで元メジャーリーガーから貴重なアドバイスが送られた。
「投げる時、肘は肩より上。足を上げて、投げる方向をめがけて手を振る。それで投げ終わったら腕は体の横。この2つ!野球選手への道が近づいたのでかっこいい投げ方でやってみましょう!」
守備編でも五十嵐さんは実演と体験を交えながら子どもたちと一緒に体を動かす。
「右投げの人は左で捕る!ポイントは3つね!構える、捕る、ステップ!構えが大事。捕ったらステップ!」
動きを確認した後は、五十嵐さんがボールを転がして実際に投げるまでを行った。子どもたちの勢いある動きに「いいじゃん!」とお互いに笑顔がこぼれた。
子どもたち一人ひとりとの会話を重ねたマック鈴木さん
マック鈴木さんは、見守りながら一人ひとりとコミュニケーションを取った。
バッティングではティーボールで打ち、打球を守っているみんなで捕りに行く。守っている子どもたちに声をかけ、楽しみやすい雰囲気をつくっていった。
中には野球未経験ながらティーボールで大きな当たりを打つ子も。マックさんは驚きながら「ナイスバッティング!」と大きな声でジェスチャーを送った。
守りに戻ってきた子にも全員声をかけ、その子も嬉しそうな表情で言葉を返すなど、打つことを楽しんでいる様子が伝わってきた。
ベースランニングでも、まずしっかりベースを踏むことと一塁まで走り切ることを伝えた。一塁キャンバスを押さえながら「ベースを踏んで!」と向かってる子どもたちに声をかけ、野球の基本を伝えた。
盗塁のコーナーでは子どもたちと一緒に帰塁やスタートを行い、共に楽しむことも忘れなかった。
投手の2人が打撃でもプロの飛距離を見せる
休憩を終えると先生たちがお手本を見せる時間に。
五十嵐さんが「速い球を投げる、遠くに投げる、打球を遠くに飛ばす。この3つのどれが見たい?」と聞くと、最も手が挙がったのが”打球を遠くに飛ばす”だった。
2人はそれぞれバットを握ると、最初にマック鈴木さんが用意されたティースタンドの前に立った。
鋭いスイングを見せると打球はグングン伸び、外野の頭を悠々と越える打球を放つ。子どもたちはその放物線に目を奪われた。
続いて五十嵐さんもスイングを見せると徐々に飛距離が伸びていき、こちらも大きな当たりを見せた。
2人とも本職は投手であり、現役時代は打席に立つ機会すら少なかったはずだが、元メジャーリーガーとしての実力は健在だった。
最後は質問コーナー。2人への質問を挙手制で募ったところ、たくさんの手が挙がった。最初の質問は「野球が上手くなるにはどうすればいいですか?」という質問。マック鈴木さんは、
「僕は空手とかスイミングとか他のスポーツをやってました。それが野球にも生きてきたんですね。後はたくさんご飯をたべて体を大きくなるすることです」
と自らの経験を伝えた。また、五十嵐さんは
「外に出て刺激をたくさん受けること。川に行っても石を避けたり、『どこが危なくないかな」』って見るだけでもトレーニングになります」と、日常生活の中からヒントを与えるように答えた。
続いての質問は「野球の好きなところ」。ここでは五十嵐さんが先に答えた。
「たくさんの人が応援しているところでいいピッチングすると『五十嵐いいぞ!』って喜んでもらえる。野球っていいなってその時に思えました。
あとは今も元プロ野球選手ということでたくさんの人とお話しできるので、野球があったからこそみなさんにも出会うことができています。人の出会いがあるというのも野球の好きなところです」
マック鈴木さんはシンプルにこう回答した。
「例えば守備でミスをしても次に打って挽回できるんです。何かうまくいかないことがあっても取り返すチャンスがある。それが野球のいいところです」
約2時間のイベントは無事に終了。子どもたちは終わってからも2人の元へ集まるなど、終わりを名残り惜しんだ。MLB Japanでは、今年一年を通じて2,000名以上の子どもたちに“はじめての体験”を提供する計画がある。
野球が楽しいと感じられるきっかけづくりを今も地道に行っており、野球人口のさらなる拡大へとつなげている。
(おわり)
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