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小笠原道大さん 子どもたちに明かした野球と向き合い続けられた源「もっと上手くなりたい想いが弱気な自分に勝った」

10月20日に埼玉県草加市で行われた「小笠原道大 直伝 野球道 powered byアークス〜夢を育む地域社会を目指して〜」。

小笠原道大さんが地元の小学生約150人を対象に、1部と2部に分けて野球の楽しさや技術を伝えた。各部の野球教室後には質問コーナーが設けられ、事前に集められた問いに小笠原さんが答えた。

子どもたちが目を輝かせながらその教えに真剣に耳を傾けると共に、その保護者たちからも小笠原さんに相談する機会となった。

>前編はこちら

(写真 / 文:白石怜平)

小笠原さんが野球を始めてから打った初ヒットの時期は?

第1部では小学1年生〜4年生が対象ということもあり、チームに入りたての選手も参加している。そんな中で寄せられたのが、「試合でヒットを打てないのですが、どうしたらバットに当てられますか?」という質問。

小笠原さんは自身が野球を始めた時のことを思い出しながら答えた。

「私も始めた時は全然打てませんでした。だけど監督やコーチの教えを毎日実践するようになり、1回できたら2回、3回とできるように取り組んでいました。それが大事なことなんです。

技術面を言うと、最初に話したタイミング。どんないいスイングをしても、タイミングが合わないとそのスイングはしづらくなります。

投手が投げてボールが来る時に力強いスイングができるように待つこと。これをできるようにしてください」

会場全員が真剣に聴き入った

司会から「初ヒットは野球を始めてどのくらいでしたか?」と続けて問われると、

「数ヶ月、いや半年は掛かったんじゃないですかね。最初は2年生でリトルリーグのチームに入ったのですが、人数も多くて試合にも出れなかった。見習いのような感じで練習だけでした。

でも練習を重ねることでバットにボールに当たって、しっかり振れるようにもなりました。なのでいきなりできるようになったわけじゃなく少しずつ上手くなった結果、それが半年だったのだと思います」

と、時間をかけて打てた1本だったという。続いては、「プロ野球選手になることを最初から考えていましたか?」という質問。

プロ野球では球史に残るスター選手として、華々しい成績を残し続けてきた小笠原さん。

しかし暁星国際高時代は甲子園には届かず、卒業後に進んだNTT関東(現:NTT東日本)時代で力を徐々につけ、5年かけてプロ入りを果たした。

決してエリートコースを歩んできたわけではなかったことを踏まえ、問いには当時感じていた心境を答えた。

「いいえ。プロはすごいなと思っていました。プロ野球選手になることを描いたのは大人になってからです。高校の時も全然違うレベルだったので、『なれたらいいけど無理だよなぁ』という感じでした。社会人に進んで、ドラフトにかかる2年ほど前から意識してプレーしていました」

地道に前に進みプロへの道へと繋いだ

「寝る間も惜しんでバットを振った」フルスイングの原点

続いて野球経験のある小学5年生〜6年生が参加した第2部でも、小笠原さんの少年時代や歩んできた野球道について問いが集まった。

その中の一つで、「野球を嫌になったことはありますか?もしなった時があればどう気持ちが切り替わりましたか?」という質問があった。

”ガッツ”の愛称の通り何事にも全力で臨み、かつ一歩一歩着実に前に進んで実績を積み重ねてきた。ただ、そんな小笠原さんでも考えていたことがあったという。

「何度もありました。うまくいかないことばかりで、試合で結果は出ないし練習もしんどい。何度も投げ出したくなるんだけれども、うまくできた時の喜び。これをもっと味わいたいという想いの方が強かった。

あと自分には野球しかなかったので、何か成長を一つでも数多く体験したいし、自分でも感じ取りたい。もっと上手くなりたい想いが弱気な自分に勝った思い出がありますね」

前向きな気持ちが野球との絆を深めた

続いては「フルスイングをするために取り組んできた練習方法は?」という質問。小笠原さんの代名詞の一つである”フルスイング”。

バットを高々と構え、空振りの際には反動でヘルメットが飛ぶほどの豪快なスイングでファンを魅了してきた。野球を知っている誰もが憧れたあのスイングの秘訣に迫った。

「寝る間も惜しんでバットを振りました。プロ野球になったら練習をやってもやっても時間が足りない世界だったので。

小学校の時はウェイトトレーニングをやらなかったので、チームのみんなで腹筋背筋をやったり、昔はタイヤを引いたりして体力強化をしました。とにかくバットをたくさん振る。そのためにまずは体を強くすることだと思います。

私は遠くへ飛ばすよりも確実性を上げることが先だったので、フルスイングはプロに入ってからするようになりましたね」

今年もフルスイングは健在だった(7月の日韓ドリームプレーヤーズゲームにて)

本章での最後の質問は「プロ野球選手になるためにどんな努力をしましたか?」。ここでは必要な要素をピックアップしながら、子どもたちの成長に寄り添ったエールを交えた。

「必ずなれるわけではないが、諦めてしまったらなれないです。その中で野球をうまくなって、体を強くして、あとは考える力をつけなくてはいけない。

こういったことを大きくなる中で勉強していってほしいです。そのためには”興味を持つこと”が大事。『めんどくさいなぁ』と思った時点でみんなの成長は止まってしまいます。より興味を持って取り組んでいけば、上手くいかなくてもそれが成長になります。

経験をたくさんして、楽しい思いだけでなく辛い思いも乗り越えていって、みんなが成長していってほしいと願っています」

この日の経験も成長の1ページになった

小笠原さんが大切と考える子どもたちへの指導とは?

質問は、子どもたちからだけではなかった。未来の野球界を担う子たちを育てている保護者や指導者からも小笠原さんへ相談が寄せられた。

まず、「子どもたちを指導する上で何が一番大切と考えているか」。

家庭では父親でもあり、かつプロ野球の指導者として10代の若い選手たちとも多く接してきた。これらの経験で培った考えを共有した。

「”やってはダメ”・”これはいけない”というのは、言葉を変えて伝えてあげるのがいいのかなと。なぜかと言うと、『ダメ・いけない・何でだ』といった言葉を受けた方は、体が動かなくなってしまうからです。

野球のケースだと、打席に立った時に甘いボールや自分の打ちやすいボールに手が出なくなってしまうんです。

”もしダメだったらどうしよう”とか、違うことを考えてしまって子どもたちがスイングできなくなってしまう。

ボールを投げるにおいても、”何やってるんだ!”って言われたとしたら、この人に怒られてしまうと考えてしまって躊躇してしまうし投げるタイミングも遅れてしまう。そうなるとアウトにできたものができなくなってしまいます。

選手たちが進んでやってくれるような気持ちになれるようにアプローチすると、より意欲的に練習や試合に取り組んでくれるようになるので、そう考えながら子どもたちに接してもらえると私も嬉しいです」

保護者たちからの質問にもしっかりと答えた

そしてもう一つ。「スランプに陥った時にはどう対処するのがいいですか?」。この問いに小笠原さんは、子どもたちに指導してもらうことを意識して回答した。

「野球に限らずあると思いますが、まずは自身でなぜ始めたのかを思い返してみてください。きっとやりたいから・好きだからそのことを始めたと思います。

そしたらどうリカバリしていったのかを辿っていくんです。それを野球じゃないことでも野球に置きかえて、ワードを変えて説明してあげると子どもたちも理解しやすいのではないかと。

かといって情報を一気に詰め込みすぎると、子どもたちもこれから経験する段階だと思うのでその情報を整理するのがなかなか難しいと思います。

なんでもいいのでまずは1ワードを提供してあげる。そこから少しずつ糸がからまったものをほどいていって解決へと近づけてあげればいい。

順序立てた説明に解決へと導くヒントが詰まっていた

子どもたちも一生懸命やると思いますし、だからと言って一気に全てをやろうとすると消化しきれない。なので、一つひとつ段階を踏んであげるといいのかなと。

”なんでできないんだ!”ではなくて、上手くいかないこともOKなんだと許容してあげることも大事だと思います」

各回の最後には子どもたちから感想が贈られた。言いたい選手を募るとたくさんの手が挙がり、最初の挨拶で小笠原さんが伝えた「恥ずかしがらないこと」をみんなが実践していた。

子どもたちから数々の感想と感謝の言葉が贈られた

野球教室を終えた後、株式会社アークスの下田昌孝・代表取締役は以下のように話した。

「子どもたち・保護者・指導者の方々のキラキラした表情を目の当たりにして、開催して本当によかったと感じています。世界を経験した超一流の実績のある選手ですので、心に残る言葉として深く刻まれるはずです。

アークスの下田代表(写真右、同社提供)

この機会を提供することができたのは、小笠原さんはもちろんのこと、たくさんの協力者があってのことです。地元の皆さまをはじめ、関わる全ての方々に感謝申し上げます。

ますますの恩返しができるよう、また、ぜひ次回も開催できるように今後も事業の拡大に努めてまいります」

たくさんの協賛品を受け取り喜ぶ子どもたち(提供:株式会社アークス)

選ばれた選手がそれぞれ感謝の想いを伝え、野球教室は終了。小笠原さんが伝授した野球道は約150人の子どもたち、そして見守った保護者・指導者の今後の道標として確かに刻まれた。

(おわり)

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