
元巨人・篠塚和典さんによるトークショー 研ぎ澄まされたグラブへの感覚と広角打法のルーツが明かされる
8月5日、千代田区の「MIZUNO TOKYO」で「篠塚和典氏 TALKING SHOW」が開催された。
二塁手としてゴールデングラブ賞4回を獲得した名手が、現役時代からの勇姿を知るファンに向けて、守備そして打撃のエピソードを披露した。
(写真 / 文:白石怜平)
伝統の「赤カップ」復刻を記念して開催
この日事前に抽選で選ばれた15人のファンが、グラブが綺麗に彩られた会場に集まった。
本イベントは1973年に誕生したミズノ伝統のブランド「World Win」、そして76年に誕生した「赤カップ」のグラブ復刻などを記念して行われた。
優勝旗をイメージした赤カップのグラブは、76年当時で6割のプロ野球選手が使用していた。
この赤カップは硬式用として展開されており、野球少年の憧れの象徴であり続けた。(軟式用は青カップ、ソフトボール用は緑カップとして展開)
今回はその赤カップの代名詞の一人とも言える名手・篠塚和典さんを特別ゲストに招いてのトークショーが行われた。


篠塚さんは復刻グラブを手に取りながら、自身が現役時代のグラブにまつわるエピソードを披露した。
「私は自分で型をつくっていたのですが、新しいグラブを最初に手に取って試合に使えるまでの状態にするには1年かけますね。なので、試合用のグラブともう1つ練習用のグラブを持って行って、練習用は翌年に向けたものとして使っていました」
名手らしくその感覚は研ぎ澄まされており、自身に合うか否かは手にした瞬間で判断していたという。
「中には芯が抜けてしまっているものもあるので、最初グラブは硬いですが、それははめた瞬間に分かります。その時はお返しさせてもらっていました。感覚で言いますと、ボールが入ったら自然と収まる感じが自分に合うイメージです」

篠塚さんの隣には、この日のために持参したという現役時代から使っているというグラブも紹介された。
「35年以上使っていますし、オイルなどは染み込んでいるのでカサカサにはならないんです」と自身で語る通り、ガラス越しに一目見て分かるほど艶で輝いていた。

中学時代から磨き続けた打撃技術
トークではグラブの話題以外にも展開されていった。篠塚さんといえば、守備の名手でもあるが打撃も超一流。
首位打者2回を獲得し、通算打率は.305でNPB歴代15位にランクインしている。広角に打ち分ける技術で流し打ちを代名詞として安打を量産していった。
少年時代に憧れていた選手について問われた際、そのルーツを垣間見ることができた。
「私は中学時代、藤田平さん(元阪神)を見て、『こういう打ち方できたらいいな』ってずっと参考にしていたんです。当時小学校の校庭で遊びに行っても良かった時代だったのですが、グラウンドがすり鉢状だったんです。
自分でノックを打つと打球が戻ってくるので、ゴロやフライをライト・センター・レフトって打ち分けて、『藤田さんみたいにどうやって打てるんだろう』って練習していましたよ。
ティー打撃など他の練習でも打つ方向を意識的に変えながら打っていくことで、それぞれのバットの軌道が自然と体で覚えていきましたね。(技術を身につけるには)体に染み込むまでやるしかないです」

上達に必要な”継続性”
会の終盤では質問コーナーが設けられた。参加者からは、守備と打撃の両方で手が次々と挙がった。
中でも話題となったのが苦手だった投手について。いかなる投球にも合わせてヒットにする打撃職人は、どんな投手が苦手だったのか。
「左のサイドスローやアンダースローといった変則系の投手が嫌でした」
その際に篠塚さんが行ったアプローチや考え方は至ってシンプルなものだった。
「あえて何もしようと思わないです。合わせに行ってしまうと、自分のバッティングの感覚が狂ってしまうので。仮に打てなくても他で打てばいいという考えで打席に立っていました」

加えて子どもが野球をやっているという父親から、篠塚さんが中学時代に継続していた練習について相談が寄せられた。
「例えば壁当てをするだけでも、どんなバウンドにも合わせる動きを習得することにつながっていきます。打撃では、まずティーを自分の中で打ちたい打球を100%打てるようにする。その次にフリー打撃でバッティングピッチャーが投げる球を同じように100%打てるように近づける。その繰り返しなんです」
ここで篠塚さんが強調したのは”継続”の重要性だった。
「大切なのは『続けること』だと思います。少し悪いとすぐ変えてしまいがちですが、同じ練習を繰り返すことです。私も子どもたちを教えてますが、すぐ変えずに継続する子が上手くなっていますので、コーチから教わったことを継続して実践しているかを見てあげてください」
キャッチボールコーナーでは篠塚さんへ直接メッセージも
50分近く行われたトークショーの後は、場所を移して篠塚さんとのキャッチボールコーナーへ。持参したグラブや、赤カップが施された篠塚モデルのグラブを手に再登場を待った。
今回はただのキャッチボールではなく、ボールとともに篠塚さんへメッセージも伝える“言葉のキャッチボール“も特別に設けられた。

参加者はみな、少年時代に篠塚さんに憧れていた方たち。数十年秘めていた想いを一言にしてボールと共に贈った。その後はサプライズで直接指導も。篠塚さんによる即席の投げ方講座が開講された。
「肘を投げる方向に向けてあげる。高く投げたい場合は肘も高く上げればより遠くに投げられます。近くに投げる時は肘を肩と同じくらいにするイメージを持って投げれば、コントロールが良くなります。
投げる手は親指を突き出すように離すと、回転もかかっていきます。キャッチボールで試してみてください」
そして最後はMIZUNO TOKYOのグラブコーナーで1日店長も務めた。参加者の思い出の品にサインを入れ、会を締めた。
現在の活動から感じる野球の未来に必要なこと
イベント終了後、篠塚さんは以下のように振り返った。
「見渡しながら、あの時期を見てくれていた方だったのかなって思い出しながら、私も話をしていました。質問してくださった方も多くいて、みなさん真剣な表情で聞いてくださいましたよね。なので私もしっかり答えなきゃという気持ちでお伝えしました」
現在はOB戦に出場したり、地元の銚子で子どもたちに指導を行うなど、野球を通じた活動を精力的に行っている。特に野球未経験の子たちを中心に教えており、そこからある流れに発展しているという。
「指導においては一緒の時間を過ごす以上は、野球を楽しくやってほしいという想いでいつも向き合っています。今地元では月1回ペースで活動しているのですが、半年くらい経つとその未経験だった人たちがチームを結成して、野球を続けてくれています」

今その子たちが野球を続けているのには、大きな要因があると篠塚さんは挙げる。それは、野球界がこれから先脈々と続いていくためには欠かせない要素であった。
「子どもたちが野球に興味を持ってもらうのは、まず親御さんが興味を持っていることが必要です。僕が教えた子たちは、時間があると親子で一緒にキャッチボールや素振りなどをしてくれているそうなんです。
あとは家庭の中で野球の話題も毎日出れば、常に頭の片隅にでも野球が浸透すると思うので、子どもたちの心にいい形で残ってくれたら嬉しいです」
篠塚さんは昔からのファンのみならず、野球界の未来を担う子どもたちなど、世代問わず憧れの存在であり続けている。
(おわり)
【関連記事】
巨人軍のレジェンドOBとジャイアンツ女子チームが再び対戦!新球場の開場を記念した一戦は歴史と未来が交わる一日に
ミズノ ”学生野球の聖地”神宮外苑に新ショップオープン 侍ジャパン・井端弘和監督がトークショーで語った数々の”こだわり”とは?