小笠原道大さん 野球教室開催! 直伝する野球道から夢あふれる地域社会へと切り拓く
10月20日、埼玉県草加市で「小笠原道大 直伝 野球道 powered byアークス〜夢を育む地域社会を目指して〜」が行われた。
小笠原道大さんが講師を務めたこの野球教室では、地元の小学生総勢約150人が参加。経験の有無を問わず、未来を担う子どもたちに野球の楽しさを伝える一日になった。
(写真 / 文:白石怜平)
地域密着企業が地元への恩返しの想いから小笠原さんにオファー
野球教室の舞台は草加市の高砂小学校。同市に本社を置き塗装工事業・防水工事業を展開する「株式会社アークス」主催、その想いに賛同した5社協賛(※)のもと行われた。
本野球教室が行われることになった背景について、株式会社アークスの下田昌孝・代表取締役が以下のように話した。
「弊社は地元に恩返しをしたい強い想いがありまして、今までもたくさんの地域貢献活動を社員全員で行なってきました。
一方でかねてから、草加市を中心に活動する八千草少年野球連盟から『野球人口が減少している』という相談を受けていまして、そんなタイミングで小笠原さんと出会う機会がありました。
我々も未来を担う地域の子どもたちを応援する企画を推し進めていたこともあり、小笠原さんに開催の話をしたところ、ご快諾いただき晴れて実現に至りました」
(※株式会社JPメディアダイレクト、佐川グローバルロジスティクス株式会社、アルソック 綜合警備保障株式会社、株式会社トモダ企画、ポーターズ株式会社 以上順不同・敬称略)
プログラムは2部に分かれており、午前の第1部が野球経験を問わない小学1年〜4年生・午後の第2部が野球経験のある5年生と6年生に向けて展開された。
プロ通算打率.310、2120安打をマークするなど、球史に残る大打者から直接”野球道”を伝えてもらうまたとない機会。グラウンドでは目を輝かせた子どもたちが、小笠原さんの登場を早くから待ち侘びていた。
第1部が始まり小笠原さんが入場すると、会場全体から大きな拍手で迎えられた。マイクを持ち挨拶すると、70人近くの子どもたちからも「おはようございます!」大きな声が返ってきた。
「そう!その元気。今日は野球が上手くできる・できないではなくまずは元気。なぜかと言うと、声が出ると体は自然に動きます。恥ずかしがって『上手くできるかな…』と不安になっていると、体って思ったように動かないです。
なのでお腹から声を出す。みんな頷いてくれたけれどもそれも大事。あとは恥ずかしがらない。上手くできなくてもいいです。気持ちが大事なので、もしできなかったら『どうしたらできるようになるか』を考えてトライしてください。
それで一つできたことが嬉しくなってさらに続けられるようになるので、私もみんなが少しでも上手くなるきっかけを与えられるようにしていきます。みんなで楽しんでいきましょう」
各部門で行われた小笠原さんからの”直伝”レクチャー
5つのグループに分かれ、ノック・ティー打撃2カ所・ボール回しに加えて、初心者エリアとしてストラックアウトとカラーバットでの打撃エリアが設けられた。小笠原さんは各エリアに足を運び最初にレクチャーを実施。
小笠原さんと言えば体の各部位を意識・連動させる深い技術を持ち、それを紐解くように解説しているが、今回は対象が4年生までのためシンプルかつ身振りを交えて伝えた。
まずはボール回しのエリアにいる子どもたちを集めて投げ方の基本を説明した。
「投げる時はしっかりその方向に踏み出しましょう。ボールが体から離れちゃうと狙ったところに投げづらくなってしまう。しっかりと手は頭の近く。
右投げだったら右の耳付近に手を置いて、そこから体を回して投げるようにすると思ったように投げられるようになります。頭だけ前に出ると投げづらくなっちゃうからね」
その後も各所へ足を運び、レクチャーを続けた。ゴールデングラブ賞6回獲得と守備の名手でもある小笠原さんがノックの場所へ歩を進めると、捕り方の基本を伝授。子どもたちの共感を誘いながら理解を深められるように話した。
「守備では、ただボールに向かって行ってしまうと捕るのは難しいよね?なので、その前からどのバウンドでボールが来るのかを予想する。一番捕りやすいのが一番上にボールが上がったところ。その前で捕ろうとすると難しい。
なので、捕りやすいところで捕れるように自分の体を運んでください。あとは相手に投げるまでが守備だからね。投げるところまでイメージして捕ってみてください。あとは慌てないこと」
そしてバッティングのエリアでは、まずバットにしっかりミートできるよう心構えを伝えた。子どもたちに問いかけながら、腑に落としてもらうようコミュニケーションを取った。
「ボールをしっかり見なかったら打てないよね。まず当たるまで見ること。打つ前からレフトスタンド見ていたら当たらない。それとタイミング。投手がボールを投げてきて振る準備ができていないと慌てちゃうから、バットがずれて当たりにくくなる。
しっかりとボールが自分に来るところに対して準備することです。あとは体からバットが離れちゃうとスムーズに振れません。体の近くでリラックスして、肩と肘の間くらいから持っていくようにしましょう」
自身がGMを務める「千葉ドリームスター」もサポートに
その後は各所でローテーションしながら実践に。
レクチャー時に選手たちの後ろで尊敬の眼差しを向けながら耳を傾けていた指導者の方々が、小笠原さんの教えをおさらいするようにサポートをする。
小笠原さんも精力的にグラウンド中を周り、子どもたちと笑顔で言葉を交わした。バッティングエリアでもティー打撃を見てアドバイスを送るなど、一人でも多くの子どもたちと野球を通じた交流を深めた。
午前の部で設けられた初心者向けエリアでは、小笠原さんが15年前に創設し今もGMを務める身体障害者野球チーム「千葉ドリームスター」の選手やスタッフもサポートに入った。
小笠原さんも直接声をかけ、ストラックアウトで番号を射抜いた時やバットにボールが当たった時には一緒に拍手を送った。
第2部では体の使い方へと踏み込んだ解説に
午後の第2部では、野球チームに所属している高学年の子どもたちが対象。第1部同様に元気を出すことを呼びかけながら、より実践を重視するため守備・打撃のレクチャーをまとめて行った。
「守備で捕る時には手だけでいかない。しっかりと足を使って体の前で捕れるように。投げる体制に入れるよう考えながらプレーしましょう。
前から来てただ捕るだけじゃ投げづらいよね?体の中心から気持ち前くらいで捕れるようにすると、次の動作に移りやすいです。右投げだったら右足が前に行ったら自然にステップする方向にスムーズにしやすくなります」
守備の後はすぐ打撃編の講義に。ここでも「タイミングが大事」とその重要性を解きつつ、一歩進んで今の子どもたちの傾向に合わせたポイントや技術を伝えた。
「スイングでは、今YouTubeなどでさまざまな形を見れると思います。でもそれは”力”があるからです。今はしっかりとバットに当てて強いライナーを打てるようにする。10回振って10回できるようになってから次に進んでください。
速い投手に対してもしっかりと強いライナーで打つためには、両足で踏ん張ってスイングできるように。右打者だったら右足に乗りすぎて振ってしまうとスイングできないよね?
かと言って速く振ろうとして左足に乗ってしまうと、さらに速く感じて打てるボールがなくなってしまう。なので体の真ん中で回れるようにして最後まで振り切りましょう」
マンツーマン指導に加え、子どもたちからの質問も
レクチャーを終えると、各エリアに散らばりローテーションで実践が始まった。ここでもグラウンド中を歩き回りながら各所に目を配った。
守備練習のエリアではグループが代わる都度姿を見せ、自らノッカーを務めた。一周ずつ打ち込み、白球を通じたコミュニケーションを取った。その後も笑顔で選手たちのプレーを讃え、子どもたちも自信を持てた表情を見ることができた。
第2部でも打撃エリアは大盛況に。小笠原さんが数球のうちにスイングを見極めて、マンツーマンでアドバイスを送った。保護者やコーチもその教えを聴き逃すまいと一緒に参加するかのように見入っていた。
小笠原さんは、子どもたちのいいところを見つけながら改善ポイントを伝えた。
「体が突っ込むと距離が取れなくなる。スイング綺麗だからタイミングだけ合わせればOK!」
「打つ前から上向かない。打った後だったら上向いてもいい。でも最後のよかった!」
移動の合間には子どもたちから質問するシーンも。「これから体をつくっていくにはどうれば良いでか?」というストイックな問いには、
「今は野球をしっかりプレーできる体にしよう」などと、年代に合ったアドバイスを送った。
1部・2部それぞれ約3時間の野球教室は無事に終えることができた。小笠原さんは終了後、以下のように振り返った。
「みんながすごく一生懸命やっていたので、それが一番だと思います。たくさん参加してくれたので子どもたちのレベルはそれぞれですが、共通していたのはグラウンドにいた全員が野球を楽しもう・もっと上手くなろうという気持ちが見えたこと。今回開催できて良かったと思えた」
第1部では野球をこれから経験していくであろう子どもたちともふれ合った。可能性を秘めた子たちに向けてもメッセージを送った。
「今後授業でもやると思うので、野球に触れてみることで楽しさが分かっていずれ興味を持ってもらえたらいいなと。最初はできなくても1回できた時にすごく喜んだ表情を見れたので、このまま興味を持って続けてくれたら嬉しいですね」
この日のプログラムには、小笠原さんへの質問コーナーも設けられていた。子どもたちからの質問に加えて、保護者や指導者からも”相談”が寄せられた。
(つづく)
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