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「日韓ドリームプレーヤーズゲーム」数々の名勝負を生んだ両国のレジェンドが北海道に集結!野球を通じた国際友好親善の更なる一歩に

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7月21日、「ES CON FIELD HOKKAIDO」で「日韓ドリームプレーヤーズゲーム」が開催された。

20年以上もの間、国際大会で頂点を争ってきた両国の代表選手が集まり、一夜限りの真剣勝負が行われた。

時を超えた夢の試合は、両国の友好親善そして野球界の歴史に新たな1ページが刻まれた。この記念すべき1日のドキュメントをお伝えする。

(写真 / 文:白石怜平、以降選手名敬称略)

両国の野球史を築いた面々が北海道に集結

「日韓ドリームプレーヤーズゲーム」は、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や五輪などでしのぎを削ってきた日本と韓国のレジェンドOBによる夢の一戦。

両国の歴史を築いてきた偉大な野球人の面々が北の大地に集まった。

今年は日本プロ野球が誕生してから90周年を迎える特別な年。先人たちへの敬意と感謝を込めることに加え、野球を通じた国際友好親善に貢献したいという願いから、株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントが企画して実現した。

野球を通じ、日韓の友好親善がさらに深まる機会になった

集まったメンバーも豪華な面々が揃った。06年から17年に行われた過去4回のWBCに選ばれた選手を中心に、NPB・KBOで数々の功績を残したメンバーが再び同じユニフォームに袖を通した。

ユニフォームもこの日のためにつくられた特別仕様。互いの歴史を築いてきた先人たちへの敬意と感謝を込め、両国のベースカラーを採用したものが用意された。

この日の特別ユニフォーム(日本:松田宣浩、韓国:李鍾範)

両監督が09年の第2回WBC決勝以来、15年ぶりの再戦

それぞれの国を率いたのは09年の第2回WBCで日本を世界一に導いた原辰徳監督、韓国は06年の第1回と第2回WBCで指揮を執った金寅植(キム・インシク)監督。

両監督の対戦はイチロー(当時マリナーズ)が中前にタイムリーを放ち伝説の試合となった第2回大会決勝戦以来となり、15年ぶりの再戦に。練習前の会見場で再会を果たすと、お互いに笑顔で喜び合った。

監督会見で15年ぶりの再会となった

金監督はこの試合について、

「両国のファンに対して素晴らしい試合をお届けしたいと思います。選手みなさんが10数年経っても衰えていない技術を持ってることをお見せしたいです。今日の試合が両国の関係の発展にとって良い試合になることを願っています」と述べた。

原監督はこれまでの日韓戦を「命がけで戦ってきました」と振り返りつつ、

「今日は初めての試みでもありますし、少しリラックスをして両軍いいプレーが出たらお互いに拍手を送る。そういうゲームになったらいいなと。そして次回以降も続く形になれば、野球界は発展しているという証になると思います」と語った。

会見で両軍の監督がこの試合への想いを語った

会見には両監督に加え選手代表として、かつて中日にも在籍した李鍾範(イ・ジョンボム)と第2回WBCでは4番を務め、東京五輪では代表監督も務めた稲葉篤紀が登壇。それぞれも意気込みを明かしてくれた。

「今日は私も楽しみ、そしてファンの皆さんに楽しみを与えられるプレーをしたいです。怪我をすることなく、全員が最後まで素晴らしいプレーができるように願っております。」(李)

「今持っているものを全て出せるようにプレーします。韓国の選手の皆さんとお会いできるのはとても楽しみにしておりますので、良い交流をして良い時間を過ごしていきたいと思います」(稲葉)

監督そして選手代表の4人で会見に出席した

最後にはスターティングメンバーの発表とメンバー表の交換が行われた。会見で両軍監督から直接発表された。

【日本】       【韓国】

1(二)西岡剛    1(中)李鍾範 

2(左)内川聖一   2(左)李大炯

3(一)小笠原道大  3(指)梁埈赫

4(指)稲葉篤紀   4(一)金泰均

5(捕)城島健司   5(捕)朴勍完

6(右)福留孝介   6(三)朴錫珉

7(中)糸井嘉男   7(遊)孫時憲

8(三)松田宣浩   8(右)朴漢伊

9(遊)鳥谷敬    9(二)朴鍾皓

先発投手=上原浩治 先発投手=李恵践

メンバー交換を行い、健闘を誓った

練習では糸井が柵越えを連発し、球場を沸かせる

試合前の練習が始まると、各打者は自身の感触を確かめるように各々のペースで調整。快音が外野へと飛ぶなど、金監督の語った通り色褪せていない技術を両軍すでに披露していた。

特に観る者を惹きつけたのが糸井嘉男。何本もフェンスオーバーの当たりを放ち、今でも鍛えている体から現役選手に負けない打球を打ち込んだ。スタンドからはどよめきと歓声が交差し、この後の活躍を予告しているようだった。

スタンドへ軽々と打ち込んだ糸井

シートノックを終えるとセレモニーが盛大に行われた。特別ゲストがなんと空から登場。グラウンドに着陸して顔を上げたのはファイターズOBの杉谷拳士さん。

安堵のような表情で立ち上がり、ここでも驚きを見せたファンを背に開会宣言を行った。

そしていよいよ選手が入場。両国の国旗が広げられるとセンター後方から続々と現れ、すでに白く染まったスタンドのファンからの声援に応えながら本塁付近へと歩を進めた。

空から登場し、早くも盛り上げた杉谷さん(写真上)と開始前から満員となったエスコンフィールドHOKKAIDO(同下)

両国の国歌が演奏された後に、スポットライトを浴びながらスターティングメンバーの選手たちが守備へと就いた。始球式は俳優の大谷亮平さんが務め、一夜限りの勝負が幕を開けた。

試合はシーソーゲームの末、劇的弾が飛び出す

試合もこれまでのライバル対決を彷彿とさせる白熱した展開に。初回は日本にもゆかりのある李鍾範と金泰均の2人で日本先発・上原浩治から先制点を奪った。

日本ではロッテでも4番を務めた金泰均

球場は早くもWBCで戦っているような雰囲気となり、緊張感と熱気が包んだ。この試合スタメン出場した小笠原道大も「自然と気持ちが入った」と、初回から真剣勝負が繰り広げられた。

1回裏、日本もすぐさま反撃に出た。韓国先発は李恵践(イ・ヘチョン)。ヤクルトでもプレーした左腕に対して、先頭の西岡剛が四球で出塁後に盗塁を決めると2死後に4番・稲葉篤紀を迎えた。

「稲葉ジャンプ」が帰ってきた(写真は6回の第二打席)

現役時代の登場曲であるQueenの「I Was Born To Love You」が流れ終わると、札幌ドーム時代にスタンドを大きく揺らした名物「稲葉ジャンプ」がエスコンフィールドHOKKAIDOで復活した。

稲葉は外角の球に合わせると打球は左前へ抜ける同点タイムリーに。地元北海道のファンに健在ぶりを見せ、期待に応えた。

同点タイムリーを放ち、4番の一打で振り出しに戻した

試合中盤でファンの前でのインタビューに登場した稲葉は、「見たかったですね(笑)でも、稲葉ジャンプのおかげで打つことができました。ありがとうございます!」と爽やかに直接感謝を述べた。

その後は韓国が最大3点のリードを奪うも、日本が5回に2点を奪い1点差に詰め寄り互角の勝負を見せた。

試合が動いたのは6回裏だった。無死二・三塁と一打逆転のチャンスをつくると、打者はこの日7番に入った糸井。練習で誰よりも大きな当たりを飛ばしていた男に期待が一身に集まった。

そして1ボールからの2球目を振り抜いた当たりは右翼席へと一直線に消える逆転3ラン本塁打に。満点解答の一発を見せ、球場のボルテージは最高潮に達した。

試合でも放った本塁打は値千金の逆転3ランとなった

「実はコソ練していたので、あの場面で打つしかないなと思っていました」と、試合後のセレモニーで語った通り結果で表現した。なおこの回は、途中出場した片岡易之と内川のタイムリーもあり一挙5点のビッグイニングとなった。

最後を締めたのは藤川球児。最速141km/hをマークする”火の玉ストレート”を中心に無失点に抑え、記念すべき試合は10−6で日本が勝利を収めた。

ストレートの球速は140km/hを超えた藤川

MVPは糸井、MIPは李鍾範が輝く

MVPには決勝本塁打含む3安打3打点の糸井、最も印象に残った選手に贈られるMIP賞には李鍾範が選ばれた。試合後のセレモニーでは2人が表彰され、プレゼンターには全日本野球協会の山中正竹会長が務めた。

左から李、山中会長、糸井

糸井はヒーローインタビューにて、この日誕生日だった指揮官へのリスペクトを交えながら「今日は原監督の誕生日と聞いたので絶対勝ちたいと思っていました」とファンの笑いと喜びを同時に呼び寄せた。

また、李も3安打で全打席出塁の活躍。「今までは日本と死闘を繰り広げてきましたが、今日は楽な気持ちで臨めたのでよかったと思います」と振り返った。

ヒーローインタビューでコメントした

インタビューを終えると、”特別賞”のアナウンスが。名前がコールされたのはなんと、空から降りて会場宣言を行った杉谷さん。スタンドは再び笑いに包まれ、杉谷さんは恐縮しきりで金一封を受け取った。

セレモニーの最後は両軍監督からの挨拶。金監督はこの試合が行われたことへの感謝を述べ、

「原監督はじめ、日本選手のみなさま素晴らしいプレーをされました。ありがとうございました。これからも両国で親善試合を続けながら、いい試合にすることをお約束します」と話した。

日本に感謝の意を表した金監督

そして原監督がマイクの前に立った。

「このエスコンフィールド、最っ高のスタジアムでした!ありがとうございました。国を背負って戦った選手、本当にポテンシャルの高さに驚きました。この試合を第1回としてですね、我々かなりの使命を持って戦いました。これを続けていけば野球界の発展につながると信じています」

野球界の発展に向けた想いを語った原監督

こう強く語りセレモニーを締めた。両監督そして選手たち皆充実した表情で終えた。そしてみな語っていたのが、「第2回、第3回と続けていきたい」と今後に対する想いだった。

日韓友好の架け橋はさらに強いものとなり、世界の野球界発展に寄与する価値ある一日となった。

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