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桑田真澄氏が提言する“最大化”から“最適化”へ「危機感を非常に持っています」から示す中学野球変革へ向けた道筋

ライブリッツ株式会社が主催する「第5回デジタル野球教室」。昨年12月21日にジャイアンツタウンスタジアムで行われ、中学生30名が参加した。

昨季まで巨人で二軍監督を務めた桑田真澄氏(オイシックス新潟アルビレックスCBO)がスペシャルコーチを担当し、ブルペンでの指導やトークショーを通じて数々のアドバイスを送った。

終了後に行われた囲み取材では中学野球への危機感や提言を交えながら、一貫した指導方針についても示した。

(写真 / 文:白石怜平)

野球人口減少や少子化の現状に対する捉え方

今回は、硬式野球チームに所属する30名の中学生を対象に展開された。これを踏まえ、桑田氏に中学野球に持つ危機感や期待感について問うと「中学野球への危機感は非常に持ってますね」と答え、その理由を語った。

「競技人口がやっぱり5〜6割減っているので、野球はマイナースポーツに陥る可能性が非常に高くなってきてるなと思っています」

全日本野球協会の集計では、軟式ではあるが中体連の登録者数は2008年に男女計30.7万だったが、24年は13.3万人とまさに半分以下となっている。

その原因について「一番の原因は指導者、大人だと思うんですよね」と述べる桑田氏。その問題点について具体的に挙げた。

「自分のところのリーグでなければ1年間試合に出させないぞとか、変なルールがあるじゃないですか。 別のリーグに行きたいならそこでやらせてあげればいいと思うんですよね。

指導者が王様のようにやっていて、大人が変わりきれてない。僕はその辺が変わっていかないと、さらに競技人口が減少していくんじゃないかなと思います」

競技人口減少抑止には「大人が変わる必要がある」と語る

ただその一方で「少なくなってるからダメではなくて、今までやっぱり競技人口が多すぎたと思うんですよね」と、高校野球の例を挙げながら自身の見解を述べた。

「僕らの時は4000校以上あったと思うんですが、今は3000台ですよね。だから、“最大化”を目指してきたところから“最適化”を目指さなきゃいけないと思いますね」

高野連の発表によると、加盟校の数は2016年まで4000校以上あったが、昨年は3768校となっている。ただ、決してネガティブな捉え方だけをせず、現在の状況を踏まえてできることを桑田氏は考えていた。

「日本の人口の中、学生の人数の中でどれぐらいの人数が最適なのかという捉え方をしながら、今後の野球界発展のためにやらなければいけないですよね。

 中学生が何人ぐらい、高校生は何人ぐらいが最適なのか。人数や学校が減ってるっていう見方だけではなくて、最適な人数・最適な構想がどれぐらいなのかという捉え方が大事だと思ってます」

現状を冷静に分析し、提言した

科学的知見も取り入れ、効率的かつ合理的に

さらにこの囲みの場では、小中学生の指導にも科学的要素を取り入れていると明かした。

「スキャモンの発育曲線というのがあるんですよ。皆さんそうなんですけども、神経系は早い時期に伸びて終わってしまうので、神経系を刺激できる時期に神経を使った練習をしておかないといけないんです。 

なので守備でも僕は基本を言わずに“股の下で捕る”とか、“片手で捕れ”って言うんですよ。そういうのができたら普通に捕るのは簡単じゃないですか。 科学的に良いとされていることを取り入れるようにしています」

スキャモンの発育曲線とは0歳から20歳になるまでの身体の成長を、「一般型」「神経型」「リンパ型」「生殖型」の4つのタイプに分類し、それぞれ発育のピークが異なることをグラフで示したもの。

時期に応じた最適な運動やトレーニング、教育を考える上での指標となっている。桑田氏が挙げた神経型は、生まれて5歳頃までに成人の80%の成長を遂げ、12歳までにほぼ100%まで達するとされている。

そのため、神経に刺激を加える動きを早い年代から取り入れる必要性を説いていた。

育成年代から科学的な知見を指導に活用している

加えてもうひとつ、「『毎日ぼちぼち20〜30球でいいから投げようぜ』というのが僕の指導法なんですね」と指導法の一例も挙げる。

あまりにも過度な練習量を課すことに一石を投じ続けてきた桑田氏は、その根拠についても例えを用いながら続ける。

「練習量をたくさんしたら上手くなるって言う人もいるんですけども、僕は決してそうじゃないです。例えば食事でも人それぞれ消化能力が違うわけじゃないですか。 

どんぶり5杯食べれる人もいるかもしれないけど、朝から行けます?と言うように人それぞれの適量があるんですよね。 僕はそこを見極めるようにしています。 どんないい選手も怪我したら終わりですから」

故障を予防するためにも一人ひとり見極めが必要と述べた

適量を見極めると語った通り、量をこなすことを決して否定しているわけではない。年代・カテゴリによっては必要な時期があるとし、改めて中学生における指導方針を明確に示した。

「僕はプロ野球選手で僕20歳〜23歳ぐらいの間は、量をやっていいと思っていますね。 それなぜかというと、いい形を覚えた時に、それを染み込ませる作業をするんです。 でもいい形をまだ覚えてない時にやると、下手な動きを覚えるから上手くならない。 

(オイシックスCBO就任の)記者会見でも言いましたけど、それまでは練習して栄養を取って睡眠時間を確保することが大事なんです。

遅くまで練習して帰ってきたらもう寝る時間もなく朝練だなんて言ってね。 やはり良くないです。 僕は中学生にその辺をしっかりとより効率的・合理的な方法で指導したいなと思ってますね」

育成年代により効率的かつ合理的な指導を続けていく

今季から新たなフィールドに移る桑田氏。選手・指導者を通じて重ねてきた経験と培う豊富な知識で、未来の野球界をこれからも支えていく。

(おわり)

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