
日本プロ野球OBクラブ 葛飾のスポーツの祭典を彩る野球教室は豪華3名の共演に
4月某日、葛飾区で「2025 かつしかスポーツ大会」が行われ、その一環で「日本プロ野球OBクラブ」による野球教室が行われた。
ここでは、小笠原道大さん・能見篤史さん・三ツ俣大樹さんの3名が講師を担当。子どもたちと野球を通じて触れ合う時間となった。
(写真 / 文:白石怜平)
スポーツの祭典に3名のOBが参加
「2025 かつしかスポーツ大会」は毎年区を挙げて行われるスポーツの祭典。あいにくの雨ではあったが、年代や競技を問わず多くの区民が地域を盛り上げる一日となった。

開会式では祭典を代表して小笠原さんが挨拶を担当した。
「この2025 かつしかスポーツ大会は様々な競技、分野で行われます。参加する皆様全員を応援しております」
と、短くも力強い言葉で“ガッツ”を注入した。

式の後は室内へと場所を移し野球教室へ。10チーム・70人が参加。なお、葛飾区出身の三ツ俣さんは、この日参加した「葛飾アニマルズ」出身。
自身の野球のルーツに戻ってきたこともあり、会場は大きな拍手で迎えられた。

最初のメニューであるキャッチボールでは、能見さんによる投げ方のレクチャーが開講。
「投げる時ってみなさん体って正面向きますか?横を向くよね」と基本を伝えた後、「これを覚えておいてね」と丁寧な説明を続けた。
「実は投げる準備さえできれば、しっかり投げることができます。それは腕を上げる位置。皆さんそれぞれにポジションがあるはずです。
投げる時にポジショニングが間に合わない。腕が上がってきてないまま投げちゃうと横にぶれてしまいます。
腕を外側に捻る、つまり手の甲が自分のほうに向いているイメージだけ持ってください。このポジショニングがわからない人は結構いるんです。ひねると言う事は、弓で言うと弾く動作と一緒です。大きく引けば弓は遠くに飛んでいくのと同じ。
試合で意識するっていうのはなかなか難しいので普段キャッチボールとか練習中に意識してみましょう」

レクチャーの後は実践に入り、小笠原さんと三ツ俣さんも参加。子どもたちに声をかけながら時には投げ方の指導を入れるなど、グローブの音が気持ちよく響き渡った。


三ツ俣さんからは反復したアドバイスも
ここから野手と投手に分かれる。守備は三ツ俣さんが担当し、選手たちに基本を徹底して伝える時間に。
「野手は動いている中で、投げたり捕ったりしないといけないです。ですのでキャッチボールの時から足をしっかり動かす。止まって捕ったり、手だけで捕らない。これを今日は意識しましょう!」

ゴロを転がし、送球する練習を始める際にもう一つ大切なことを話した。
「打球が来たらなるべく左側から入る。正面から入りすぎると衝突したり、バウンドが合わなくて弾いてしまう。左から入ることでバウンドが分かるし、左肩から入れれば体に当たっても前に落とせます」
このアドバイスは「大切だから言うね」と何度も繰り返し伝えていた。その後も気付いた時は敢えてプレーを止めて、「捕ったら足を投げる方向に出す!」と実演も交えながら繰り返した。

投手編でも能見さんが考え方と実践を織り交ぜつつ展開する。
子どもたちの輪の中心に立ち最初に伝えた言葉は「打たれることは悪いことじゃないです」。
「一番良くないのはストライクが入らないことです。プロでもあります。誰しも打たれたくないから。でも、打たれるよりもストライク入らないことの方がみんなに迷惑をかけてしまいます」

まずはしっかりとストライクに入れる投球をする。このテーマを全体に浸透させるべく実践へと移った。
子どもたち一人ひとりのピッチングを見て、時にはマンツーマン指導も行われた。
打撃練習中も引き続き投球練習を見ていた能見さんは見る位置を変え、最後には捕手として球を受けるなど、教えを一生懸命に体現しようとする選手の想いに応えた。

小笠原さんが一番大切と語る“タイミング”
そして最後はバッティングで、もちろん講師は小笠原さん。数々の記録を打ち立て、球史に名を残した大打者による特別講座が開講した。
「いろんなスイング・打ち方があるんだけれども、どんな打ち方であっても一番大事なのはタイミング。
どんなに自分たちがいいスイングをできていても、ピッチャーが投げるいろんな球に対して打席でタイミングが合わなければ、そのスイングはできないですし当たる確率も悪くなってしまいます。
さっき能見さんも言ってたよね?投げるまでの準備ができていればいいボールは投げられるようになるって。三ツ俣さんが教えてくれた守備もそうだし、バッティングでも一緒です」

打席で最も大切なタイミングについて説いたあとは、バットを振るにあたってのポイントについて説明。上半身・下半身に分けて教えつつ、「まず今日は一つでもいいからやってみよう」と子どもたちの背中を押した。
「投手から来るボールに対して、どのコースでも平行にスイングできるように。高めでもベルトの付近に来てもできるように。
力任せになってしまうと、手が遅くなって体だけ回ってしまう。しっかりとバットが体の近くで回れるようにしましょう。体の近くでバットが通ると振りやすくなります。
あとは両足をしっかり使って振る。どちらかに体重が乗りすぎてしまうとバランスを崩してしまいます。しっかり両足の真ん中で回るように意識してみてください」

この日はネットを複数箇所に置いてティー打撃を行った。
タイミングを合わせながら振る選手やしっかり構えて準備をして振る選手もおり、その教えを貪欲に吸収する姿勢は小学生離れしていた。
質問では今後の人生における金言も
練習を終えたあとは質問コーナーへ。
子どもたちから次々と手が挙がり、「レベルスイングで振るためには何を心がけていますか」「対角線に正確に投げるにはどうすればいいですか」といった、講師陣たちの教えから発展させた質問も多く寄せられた。
中にはメンタルに関する質問も。
「どうしても緊張してしまうのですが、どうすれば緊張を抑えられますか」
この問いに小笠原さんが答えた。プロ野球という激しい競争社会を生き抜き、日本シリーズやWBCといった大舞台にも立ち続けた侍の言葉には、今後の人生の糧になる言葉が詰まっていた。
「プロ野球選手でも緊張します。大観衆の前で一人打席に立たないといけないし、そんな中で結果も出さないといけない。でもそれは仕方ない。
みんなも緊張すると思うけど、それは上手くなりたい証。と言っても緊張を減らしたいよね?そのためには自分が今まで練習してきたことを、いかに試合で出せるかに集中することが一つです。
上手くいかなくてもそれは悪いことではないです。経験したことそのものがプラスになるし、それが成長へのきっかけになります。思い切って結果を気にせず挑戦してみてください。
いいんです、うまくいかなくても。結果が出るという一つの喜びのために頑張ってみてください」

最後は指導者や保護者からも質問を募る。ここで1名挙がったのが「どうしたらプロ野球選手になれますか」というシンプルながらとても難しい問い。
ここでは能見さんがマイクを持ち、子どもたちにも分かるように丁寧に回答した。
「今の選手がなぜそこまで行き着いたかの過程を見てほしいです。YouTubeなどで色々な技術が上がっていますよね。でもみんな最初からやっていないです。
真似すること自体を否定しているわけではないです。どんな過程を踏んでいるのか、どんな体の使い方をしているのかを意識しているか。それをやっている子はすごくうまくなります。
投げ方・打ち方で自分が力の入るポイントが必ずあるのでそれを探すこと。小学生の時に知っていると間違いなく上手くなります。逆にそれが分からないと、自分に合うものが何かをずっと探さないといけなくなる。
まずは基礎、プロに入っても一緒です。プロはしっかり走ります。キャッチボールもすごく大切にします。みんな教わってるよね?基礎はいくつになっても大切なので、それを分かってもらえればいい景色が自ずと見えてくると思います」

約2時間ほど行われた野球教室は終了。最後は、“地元代表”として三ツ俣さんが挨拶をして終えた。
「みなさん楽しかったですか?僕はこの葛飾区で育ちプロ野球選手になって、14年間やれました。1人でも多くのプロ野球選手がこの葛飾区から出てほしいと心から願ってます。
今日学んだことを生かしてもらって、中学・高校・そしてプロ野球と描いた道に行けるように頑張ってください」

雨による室内開催だったが、講師陣の説得力に満ちた指導と子どもたちから出る喜びのオーラで自然と熱気に包まれる野球教室になった。
(おわり)
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