
小笠原道大さんが「日本プロ野球名球会」のイベントに参加 多様性あふれる一日は、野球の拡大と発展の更なる一歩に
10月5日、都内で「ダイバーシティ・パーク2025 in 新宿」・「名球会ベースボールフェスティバル」が行われた。2つのイベントに日本プロ野球名球会が参加し、小笠原道大さんが講師を担当。
野球に初めて触れる子どもたちや真剣に毎日取り組む中学生など、広い世代に野球の魅力と技術を伝えた。
(写真 / 文:白石怜平)
今年はダイバーシティに造詣の深い小笠原道大さんが参加
最初に行われたのは「ダイバーシティ・パーク2025 in 新宿」での野球体験。
同イベントは新宿中央公園で開催されている障がい者スポーツイベントで、2016年より毎年開催されている。(20年・21年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)
いろいろな立場や考え方をもつ人々が混ざり合うことで、お互いの”個性”を理解・共存するためのきっかけづくりが目的。
車いすスポーツやボッチャといったパラスポーツ体験や、キッズスポーツゾーンなどを公園一帯で体験することができる。
名球会は第1回から参加しており、球史に名を残す会員たちが出演し参加者との交流を深めている。今回は小笠原さんがその役目を担った。

小笠原さんは現役時代から社会貢献活動に積極的に力を入れている。居を構える千葉県市川市の社会福祉協議会への寄付や、小児がん患者らの支援などが評価され、09年にはゴールデンスピリット賞を受賞。
同年に身体障がい者野球チーム「千葉ドリームスター」を創設し活動を見守るとともに、神戸で行われている全国大会へ激励に訪れるなど、野球を通じたダイバーシティ活動に深く関わっている。

この日は1時間かけて野球教室を開催。障がいの有無や性別そして野球経験問わず希望者を募り、15人が参加した。
最初はキャッチボールからスタート。「まずは構えたところに思い切って投げてみてください」と、投げる楽しさを体験する機会となった。

続いてはティーバッティングとストラックアウトの2つに分かれ、小笠原さんはバッティングを担当した。
ここでは一度デモンストレーションが披露され、プロ通算2120安打・同打率.310をマークした大打者の技術を間近で見た参加者そして保護者たちから喜びの表情や声があふれ出た。

小笠原さんは経験の有無に合わせて、表現を変えながら一球一球アドバイスを送る。バットにボールを当てる確率やその強さが順を追うごとに増していった。
視覚障がいのある参加者にも的確な指導が光る。感覚で分かるように、ボールのある位置を先に示してから体の回し方を伝えた。
その教えに沿って体を回すとバットは正確にボールへとミートし、打球は正面へ。それを1スイングずつ反復すると、一度も空振りすることなくボールを捉えることができた。
ボールに当たる瞬間の金属音が鳴り響くと、姿を一目見ようと集まった観客たちも一緒に拍手で喜びを共有した。


約1時間の野球教室は全員が笑顔あふれる空間となった。
最後に「みんな最初よりも投げるのも打つのも上手になっていました。なのでまた野球をこれからも楽しんでください!ありがとうございました」とメッセージを贈り、会を終えた。
ベースボールアカデミーでは「基本の大切さ」を説く
この日は場所を移して「名球会ベースボールアカデミー」にも参加した。
野球界の発展と普及、そして健全な子どもたちの育成を目指すため、名球会が取り組むさまざまな企画の一環である本アカデミー。
子どもたちが野球の楽しさや技術を学ぶだけでなく、チームワークや礼儀・挑戦する心といった人間力も育む活動を目的に、昨年からスタートした。
これまで工藤公康さんや井口資仁さんも担当するなど好評を博し、この10月にも開催が実現した。

今回は港区の中学生約30名を対象に行われ、より専門知識を交えながらのレクチャーや実践が展開された。
冒頭の挨拶でマイクを持った小笠原さんは、現役時代から大事にし続けていることをテーマに伝えスタートした。
「軟式硬式問わず大切なのは“基本”。基本ができないと、いいスイング・いいプレーはできません。なのでしっかりと基本ができるようにこの時間で皆さんに伝えていきたいと思います」
最初のプログラムは守備。ノックを受けるに当たり、捕球からスローイングまで一連の動作における基本を説明した。
「正面で打球を捕る。自分の左側に来た打球でも、横で捕るのにも正面。自分の体のラインから外れると捕りづらくなります。あとバウンドをしっかりと合わせて、ショートバウンドの上がりきったところで捕ること。
そして最後、ステップをして相手が捕りやすい球を投げることを意識して臨んでください」

開始前にキャッチボールなどでウォーミングアップを済ませていた子どもたちは軽快な動きを見せた。
途中自らバットを持ち、ノッカーを務めながら一人ひとりのプレーをチェック。「いいぞ、ナイスプレー!」など声を掛けながら選手たちを鼓舞した。
ダブルプレーなどケース別での動きも入れつつ、ノックを終えると復習も兼ねてアドバイスを送った。
「もし捕れなくてもまだプレーは終わっていないので、最後まで投げ切ること。その後すぐにアウトにできる可能性もあるので、プレーはタイムがかかるまで続けるように。終わってから反省しましょう。
ただ、慌てて送球をすると悪送球につながります。なぜかと言うと、ステップができていないから、上体が不安定になって力任せになるからです。なのでしっかりステップして投げることが大事だし、それが基本を大切にする理由の一つです。
毎回うまくはいかないけれども、だからこそ成長できるチャンスでもあります。エラーすることを恥ずかしがらず、思い切ってやりましょう。基本を意識することでもっと上手くなるし、もっと野球が楽しくなります」

打撃では真っ直ぐライナーを打つ技術を伝授
守備を終えると、打撃へとメニューが移る。小学生での野球教室では「タイミングが大切」とシンプルに伝えている小笠原さん。ここでは、スイングの軌道や体の使い方などさらに一歩踏み込んで選手たちに伝えた。
今回のテーマを鋭いライナーを打つことに設定し、その打ち方を最初にレクチャーした。
「スイングの時は上を向きすぎないようにしましょう。イメージは打球は縦の回転でライナーを打つ。そのためには重心を後ろに残し過ぎず、右肩を下げないこと。
投手が投げてくる球はスピードも角度やコースも異なります。そこで肩を下げてしまうといろいろなボールに対して打つのは難しくなってしまいます。
なので肩・腰は地面と平行に動けるように。バットも先端が手よりも下がりすぎないことを意識してください」
その後は一人ずつ打球をチェックし、都度助言を送った。選手たちも思い切り振った打球を放つと、活気と共に快音が響きわたっていった。

全員の確認と指導を終えると、ここでもお手本が披露された。自ら打席に立つと、トスされたボールから鋭いライナーを連発。フェンスまで一直線に突き刺さり、金網の音がホームベース付近まではっきりと聞こえた。
ここでポイントとして挙げたのは、体の使い方だった。
「手だけの力で振らず、体全体を使うこと。しっかり体を使うことで、手だけで振るよりも何倍もの力で振れます。
体の中心で回って、上は力まずインパクトに力を集中する。いかにヘッドをしならせるかを考えて練習を重ねてください。いきなり全てできるのは難しいけれども、少しずつ積み重ねていけばできるようになりますし、1年経てば全然違ってきます。
みんなはチームの練習や試合がこれからも続くので、たくさんのことに対して失敗を恐れず取り組みましょう」

そして最後は質問コーナーへ。体が前に突っ込んでしまった時にどう対応するかという質問が寄せられた。
現役時代は相手投手の低めのウィニングショットや緩い変化球を下半身の粘りで打ち砕いてきた技術の秘密をここで披露した。
「突っ込んでしまうと相手の投げた球と距離が取れなくなるので、その状態で無理に振ろうとしてもバットは出て来ないです。
体が前に行ってしまったら、ボールのラインに合わせてファールで逃げます。顔の前にバットを出してあげればヘッドは返るのでまだ可能性はある。ボールと距離が取れなくて窮屈になるのが一番厳しいです。
ボールが来るまで我慢できるかが勝負。足は前に行ってしまっても頭は残すように我慢するのもポイントです」

終わる頃にはすっかり陽も沈んだ「名球会ベースボールアカデミー」。守備そして打撃共に基本が浸透されていく濃密な時間となった。
2つのイベントを通じて、多様性に富んだ人たちとの交流を深めた小笠原さん。伝道師として野球の魅力をより広く発信した1日となった。
(おわり)
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