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神奈川県女子中学野球のあゆみ 今年度は「ガールズフェスタ」開催で、県内の人材発掘にも一役

神奈川県で年々活性化を見せている中学女子野球。ここまでの約15年の間でチームの結成や発展を見せてきた。

その歴史や今年行われた活動について、県の選抜チーム「神奈川やまゆりクラブ」でコーチを務める大前智之さんに話を伺った。

約15年の歴史がある神奈川県の女子中学野球チーム

神奈川県の中学女子野球は2011年に「横浜女子クラブ」が設立されたことに始まる。これは市の中学校体育連盟(中体連)に設置されている野球専門部が、強化育成の一環として設立。

県内の女子野球選手の居場所をつくることを目的とした県内初の女子チーム。

転機となったのが16年。女子中学生の全国大会が全日本軟式野球連盟主催で行われることになった。これを受け、県野球連盟からの依頼により「神奈川やまゆりクラブ」が設立された。

2年後の18年には、全国大会に出場する県代表チームの名称が「神奈川やまゆりクラブ」とすることになったため、既存チームは混同を避けるため「神奈川アイリス」にチーム名を変更した。

以降、県内の女子中学野球チームは増加傾向へと移っていく。20年には男子軟式野球チームの「横浜オール泉野球クラブ」が県内初の男女混合クラブチームとなる「横浜オール泉女子野球クラブ」を結成。

23年は県内初、女子のみの軟式野球チーム「相模原ハイドレンジャーズ」が設立されている。

なお神奈川アイリスは昨年、高校生以上の一般チームとの混同を避けるため、中学生対象クラブを「神奈川クラブ」に名称変更。神奈川アイリスは中学卒業後も選手として野球を続けられるように、高校生以上の一般クラブとして「神奈川クラブ」とともに練習を行っている。

今年に入ると県内女子チーム増加を目的とした「中体連ドリームス」が設立された。一方で横浜女子クラブは設立当初の目的を果たしたとして年内に解散する。

このように現在は「神奈川クラブ」・「横浜オール泉女子野球クラブ」・「相模原ハイドレンジャーズ」・「中体連ドリームス」の4チームが女子軟式野球チームとして県内に存在している。

この4チームが全国大会へのステップでもある「関東東北北信越女子野球大会」への進出に向け神奈川県予選を戦い、優勝したチームが同大会への出場権を得ることができる。

「関東東北北信越女子野球大会」において神奈川県は2枠与えられているが、残りの1枠が選抜チームの「神奈川やまゆりクラブ」である。

上記優勝チーム以外の3チーム並びに、中学野球部・男子選手中心の軟式クラブチームに所属している選手たちからセレクションで選出し、大会へと臨んでいる。

なお、「神奈川やまゆりクラブ」の指揮を執る新庄広監督は、横浜女子クラブの初代監督でもある。

横浜市立生麦中学校の顧問時に全日本少年軟式野球大会で準優勝の経験があり、教え子に青柳晃洋投手(東京ヤクルトスワローズ)、宮台康平投手(元北海道日本ハムファイターズ)などがいる。

神奈川アイリス・神奈川クラブの総監督でもある新庄広監督(大前さん提供)

選手たちの一生懸命に取り組んでいる姿に感銘

現在中学校の教員を務めている大前さんは、「神奈川やまゆりクラブ」でコーチを務めている。

自身が女子中学野球に関わることになった経緯を明かしてくれた。

「関わり始めたのは、教員1年目の18年からです。教員になりたいと思って大学時代に母校で教育実習をしていた時に、県内の先生たちからチームを紹介してもらいました」

そこで一度練習に参加した大前さんは、感銘を受けたという。

「選手たちの目が輝いて一生懸命に取り組んでいる姿を見て、とても感動したのを今でも覚えています。

野球ってどうしても男子のスポーツというイメージが当時はより濃かった中、『野球をやれて嬉しい』と言っていましたので、これは『やりがいがありそうだ』と感じ、入団を決めました」

本格的に指導者として活動することとなり、「日本スポーツ協会公認軟式野球コーチ3」「1252公認女子アスリートコンディショニングエキスパート検定2級」といった資格も取得。

県内の女子野球を活性化させるべく、今も選手たちと向き合っている。

選抜チームでコーチも務める大前さん(写真右:本人提供)

今年度最大のイベントとなった「ガールズフェスタ」

今年度は一つ大きな動きがあった。それが9月に行われた「ガールズフェスタ」の開催である。

本フェスタは県内の中学女子野球の普及とチーム増加を目的として、清水ヶ丘公園野球場(横浜市南区)にて初めて開催された女子野球選手たちの交流戦。

県内中学校の野球部に在籍している女子生徒が対象で、選手が通う学校のエリアに沿った8ブロックで即席のチーム編成を行い、ブロックごとに対戦する形式で行われた。

これは、神奈川県野球連盟が女子中学の軟式野球により力を入れていることから実現したイベントでもある。大前さんはフェスタの開催についての経緯をこのように明かす。

「毎年行われる大きな大会として、『関東東北北信越女子野球大会』というのがありまして、神奈川県の予選は3チーム(神奈川クラブ・横浜オール泉女子野球クラブ・相模原ハイドレンジャーズ)のみなので、連盟は参加するチームを増やしたいという考えを持っていました。

加えて私も『もし野球チームがあるって知っていたらやっていた』とお話をよく聞くのですが、これまで情報が届いていない・馴染みが薄いという方たちに向けて、そのきっかけを提供することも重要な目的でした」

開催に向けては「神奈川県中体連軟式野球専門部」が中心となり、各所への説明や理解を得るべく奔走した。連盟や団体を回り、中体連の役職者である教員など多くの関係者と調整を進め協力を得た。

球場の確保や選手募集などさまざまな手続きも行いながら、3ヶ月以上かけて実現まで導いた。

フェスタから生まれた新たな動き

ガールズフェスタには県内の女子中学野球選手80名が参加。大前さんも「想定していた人数よりも多い選手が来てくれました」と、その手応えを語った。

参加選手の多くは他校の選手と一緒のチームとなるため最初は緊張もあったそうだが、次第に打ち解けて野球を純粋に楽しむ姿が見られたという。

フェスタには神奈川アイリスの選手や、神奈川やまゆりクラブのOGもサポートとして参加した。

その中の一人には、8月に名古屋で行われた「高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」にも出場した尾崎彩乃選手(横浜隼人高)の姿もあった。

3年前に横浜女子クラブ及びやまゆりクラブの主将を務め、現在は日本を代表する選手と間近で接し、参加した面々にとって大きな刺激にもなった。

ガールズフェスタに参加した尾崎彩乃選手(写真右:大前さん提供)

またフェスタを終えた後、より開催意義が高まる出来事があったという。

「選手たち同士が交流することで、『今は学校では自分1人だけど、こんなに仲間がいるんだ』と感じてもらい、日々のモチベーション向上に繋がりました。

あと何より進路選択の幅が広がったことです。県内の高校で女子野球部があるのは横浜隼人高のみですが、OGや参加したメンバーの中には県外の強豪校に行っている・高校のスカウトから声をかけられている選手たちもいます。

なのでその姿を見て目標としてくれたり、同じ進学先になるので先に顔を合わせる機会になるなど、反響はさまざまでした」

選手たちにとって他校と交流する機会にもなった(大前さん提供)

「各チームが活動機会をさらに増やせるように」

実は、ガールズフェスタで活躍を見せた選手たちによって結成されたのが「中体連ドリームス」であった。

中体連ドリームスは10月の大会予選に参戦し、初戦で惜しくも敗れてしまったものの、横浜オール泉野球クラブと互角の勝負を繰り広げた。(※県予選は相模原ハイドレンジャーズが2年連続で優勝)

競技体験の提供や選手交流など、初開催にしてさまざまな役割を果たしたガールズフェスタ。大前さんは今後の展望として、以下のような想いを込めている。

「将来的には、バスケやバドミントンといった男女別で活動している競技と同じ規模まで女子野球を普及させたいです。

そのための第一歩として神奈川クラブなど各チームが活動機会を増やし継続することで、普及のみならず全体のレベルアップにもつながりますし、今回のように選手間の輪が広がることで進路選択へと発展すること。

そういった動きへつながってほしい気持ちですし、自分もそのために動いていきます」

野球が盛んな地域として歴史もある神奈川県。女子野球では中学野球から発展に向けた底上げを活発に行っている。

(おわり)

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