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ソフトバンクがNPB初、小学生選手のデータ計測を実施 若林隆信コーチが感じる未来への可能性と連覇のカギとは?

今年度の福岡ソフトバンクホークスジュニアが早くも始動している。

昨年の「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024 ~第20回記念大会~」に続き連覇を目指すべく、嘉弥真新也新監督のもと船出を果たした。

本格的な一歩として4月末・5月末に練習会を行い、選考会に向けた対策講座と共にジュニアチームとしてはNPB初のデータ計測が実施された。

これらの取り組みが果たす意義や今年のホークスジュニアが目指す姿について、今回若林隆信コーチが語ってくれた。

(取材 / 文:白石怜平、写真:©SoftBank HAWKS)

子どもたちのデータ計測も上達へとつながる

若林コーチはかつて広島と中日でプレーし、投手・野手の両方で一軍試合に出場した経験がある。

00年まで9年間の現役生活を送ったのち、2012年よりNPO法人ホークスジュニアアカデミーのコーチに就任。地元である佐賀県を中心に日々子どもたちの指導にあたっている。

23年からはホークスジュニアチームのコーチも務め、昨季のジュニアトーナメント優勝に貢献した。今季も主に守備担当として選手たちの成長を後押しする。

昨年のトーナメント制覇に貢献した若林コーチ ©SoftBank HAWKS

4日間に亘り行った計2回の練習会を終えて、まずはこのように総括した。

「数字が出るということで、子どもたちのモチベーションが違いました。この練習会を通じて、どの年代にとっても“数字”というのがとても大事な項目ということを改めて感じました」

今回参加したのは、ジュニアチーム合格を目標にしている小学校5年・6年生の選手たち。この世代におけるデータ計測は、高校生以上のカテゴリーとはまた異なる成長要因を導き出していた。

「数字が出ると、子どもたちは『次はもっと数字を上げてやろう!』という気持ちが強くなっていきました。

『もう一度お願いします!』と、どんどん次のプレーへ挑戦していったので、次の目標に向かって頑張っていく向上心や、野球への意識を高めていくことにつながったと感じています」

中学生以上になると、測ったデータをフォーム改善などの参考にし、練習や試合で身につけていくステップを踏む。

一方、小学生の選手は体も知識もまだまだ発展途上。それでも、計測を行うことで次の目標設定やモチベーション向上へとつながっており、道のりは違えど上達の方向へと確実に進んでいた。

測定は子どもたちの”やる気向上“をもたらした ©SoftBank HAWKS

首脳陣考案のドリルが数値向上の後押しに

練習会当日を迎えるに当たり、嘉弥真監督はじめ首脳陣は参加者に向けた宿題を用意していた。

それは自主練習用の課題ドリルである。各練習会や現在行われている選考会までの成長をサポートするもので、自宅で行えるメニューを事前に提示した。

嘉弥真監督は「長く野球ができるようになってほしいので、怪我をしない体づくりと体力・筋力を強化させたい」と以前の取材時に語っており、自身が現役時代に行った下半身トレーニングをアレンジして設定した。

ドリルの内容を決める際、自身がジュニアトーナメントを戦い抜いて感じたことも三代祥貴コーチ含め共有していたという。

「ジュニアチームで2年間、コーチをやって強く感じたのがフィジカル面でした。フィジカルが上がると、比例して技術も上がっていくと感じました。

投手に関しては球速も上がること、打撃でもスイングスピードそして打球速度も上がっていきますし、何より怪我の防止にもなりますから」

技術向上にはフィジカルも欠かせない要素になる ©SoftBank HAWKS

そして、決める際には各専門部隊と相談しながら策定。ここでもホークスが持つ組織力が体現されていた。

「S&C(ストレングス&コンディショニング)やR&D(リサーチ&デベロップメント)の部門の皆さんにチェックとアドバイスもいただきました。特に大切だと思ったのが小学生の段階で重いものを投げたり、振ったりしないことでした。

重量と回数は調整して、決して無理をさせないようにこちらも慎重になりました。何より怪我だけは気をつけないといけないので」

チームの知恵と経験が結集して作成したドリルは、選手のやる気をさらに引き起こし数字にも表れた。

練習会では身長・体重や30m走や立位体前屈といった基礎体力に加え、最新の計測機器を用いて投球速度や回転数、スイング速度を数値化した。

1回目から2回目の1ヶ月間で、数値が球速6km/h増・スイング速度:11km/h増という記録をマークした選手もいるなど、成長を可視化することができた。

測定機器を用いての計測が行われた ©SoftBank HAWKS

今回初めて小学生のデータ測定を行い、成長と指導の観点で新たな知見が蓄積された。若林コーチは、今回のホークスの取り組みが日本野球にさらなる進化をもたらす可能性を感じている。

「今後パフォーマンスを向上するには、年代問わず数字を出すことはスタンダードになってきていると思います。

数字を出した上で、そこにアプローチするドリルや練習メニューを構築していくことが今後も大事だと考えています。また、数字をただ上げるだけではなく、その後は野球のプレーにつなげるための技術が必要になります。

そのための理論を指導者がしっかり理解をして引き出しを増やしていくことで、日本の野球界はさらにレベルアップすると感じています」

指導者としてもレベルアップを図っている ©SoftBank HAWKS

昨年から進化させた『考える野球』

今回、選考会前の練習会開催やジュニア世代のデータ計測といったNPB初の取り組みを行っているホークスだが、その目的はジュニアトーナメント連覇である。

若林コーチは、首脳陣の中で唯一優勝メンバーとして残留しており、勝利のノウハウやプロセスを共有するのも役目の一つとなっている。

昨年、帆足前監督のもと頂を勝ち獲った要因が“考える野球”。

ホークスは、トップチームからジュニア世代まで共通した7箇条の「ホークスメソッド」を定めている。

選手育成の考え方としてまとめた指導者・育成関係者向けの行動規範であり、7箇条のうちの一つに『「気づき」を与え、自ら考えることを促そう』とある。

昨年の優勝はホークスメソッドに則り、かつ全員で体現したものであった。

「試合に出るのは子どもたちですし、グラウンドの主役です。なので、自分たちの感覚で動いてもらわないといけないです。

常に予測をしていれば何が起きても対応ができるので、頭で考えて動く必要がある。そう思ったからです」

自ら考える野球を浸透させ、日本一へと導いた帆足前監督 ©SoftBank HAWKS

以前、このように根拠を語っていた帆足前監督。練習時も指示するのではなく選手たちのリクエストに沿い、その中でなぜそれを行うかを深掘りしながら、思考を促すように努めた。

若林コーチも選手たちに考えを促す指導は継続していく方針で臨んでいる。

「指示待ちでは子どもたちのためにもならないですし、チームも勝ち続けられないです。ただ小学生ですので、“全て自分でやる”ではなく基本的な知識を伝えた上で、決断を自身でしてもらう。 そのサポートをしています。

昨年の選手たちは、ゲーム中自ら動いてくれました。例えば、選手から『走っていいですか』と聞いてくれましたし、守備位置を見て自分で根拠を持ってセーフティーバントを仕掛けるといったチームになってくれましたので」

今年も選手たち自ら考えられるチームを目指す  ©SoftBank HAWKS

今回の練習会においても、考える第一歩を選手たちに促していたという。参加した選手たちとやりとりした内容を明かしてくれた。

「例えばキャッチボールで、『まず相手のどこに投げる?』とこちらから質問して引き出します。

捕球についてはただ捕球するだけのシーンが多く見られたので、『内野・外野の守備につながってくるから、送球以上に意識してやろう』と基本を伝えました。

そこから、『どちらの足から踏み出す?』などとさらに聞いていくと、どんどん発言してくれる。答えが間違っても全然いいので、そこからスタートしました。

昨年のホークスジュニアもそうでした。質問形式でどんどん聞いて考える力を養ってくれたので、それは続けていきたいです」

お手本を見せながら選手に問いも投げかけている ©SoftBank HAWKS

6月20日から選考会がスタートし、8月中旬まで行われる。若林コーチは「監督のやりたい野球ができるようサポートします」と、首脳陣が一体となって新チームをつくり上げたい想いを述べた。

その上で、優勝の喜びとその道のりの厳しさを誰よりも知るからこそ、アップデートしたいことがあるとも語る。

「僕が今年実現させたいのは、考える野球の進化です。昨年本当にいいチームができたので、今年はノーサインまで行かなくとも複数選択肢があった場合、選手がやりたい作戦を選んでもらう。

例えばノーアウト2塁で任せると伝えて、バントをするのか右打ちをするのかなど、選手たちが状況を見て判断できるような、そんなチームが小学生でもできたらと思っています。

(昨年から)少しでも進化させないと、連覇はできないです。他球団もたくさん研究していると思うので、我々も進化をトーナメントで見せたい。そう考えています」

連覇に向けた挑戦をいち早くスタートさせたホークス。スピードとユニークさで、ジュニアでも常勝軍団を築いていく。

(おわり)

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