「ここが僕の野球の原点」西武ライオンズOB戦 初代MVPの秋山幸二さん 30年ぶりのユニフォームで躍動した思い出の1日
3月16日、ベルーナドームで 『LIONS CHRONICLE 西武ライオンズ LEGEND GAME2024』が行われた。
ライオンズブルーのユニフォームを身にまとった63名のOBが一堂に集結。時を超えた対戦でファンの記憶を呼び起こし、感動の渦に巻き込んだ。
MVPに輝いたのが常勝西武の主役の一人である秋山幸二さんだった。
(写真 / 文:白石怜平、一部敬称略)
攻守に存在感を放ちMVP獲得
秋山さんの西武のユニフォーム姿はダイエー(現:ソフトバンク)に移籍する前の93年以来。30年の時を経ても当時西武球場だった、ここベルーナドームで躍動する姿は変わらなかった。
ベンチからグラウンドに入ると一際多くの報道陣が秋山さんを追った。
ブルーのビジターユニフォーム姿で表れた背番号1には、「”げた”がしっかりついているなあ」と現役時代にこだわってきた1の下にある棒があることを確認して試合前の練習に臨んだ。
練習時や試合前に行われたトークショーで、本塁打を放った際に見せた”バク宙ホームイン”のリクエストを受けるなど、この日は一日中注目の的だった。
メインの試合でも常に視線は秋山さんに向けられた。第1打席はホークス時代も共に戦い監督の座も引き継いだ工藤公康さんと対戦。試合前から早くも注目された対戦は決め球のカーブに三振を喫した。秋山さんは試合後、
「(対戦は)楽しかったです。同じチームにいると対戦することはなかなかないですから。公康と言えばカーブ。今日も良いカーブを投げてきたので、打ってやろうと思ってたらボール球振りました」と照れ笑いを見せた。
2打席目・3打席目はそれぞれ松沼雅之投手、土肥義弘投手からタイムリーを放ち勝利に貢献した。
守備でもセンターからバックホームで鋭い送球を見せるなど、もうすぐ62歳になるとは思えない動きで球場は歓声とどよめきに包まれた。
レジェンドゲーム初代MVPに文句なしで選出され、名前がコールされるとバク宙をする動きを見せさらに驚かせた。
表彰式でインタビュアーを務めた堀口文宏さん(あさりど)と春日俊彰さん(オードリー)からは試合の振り返りについて訊かれると
「楽しんでいたのでヒットを打った感覚がなかったです(笑)」と久々に再会した仲間と野球ができた喜びを明かした。
MVPのコールを受け、MC2人の目に向かうときにバク宙の仕草を一度見せると球場全員の期待が一瞬高まった。堀口さんが思わずツッコミを入れると
「やろうと思ったんですけども怖いなと思って(笑)」
と本音を吐露した。しかしカメラマンからのリクエストもあり、もう一度パフォーマンスをすることに。秋山さんが側転し、レオがバク宙を決めて2人でカッコ良く決めた。
「これだけたくさんのお客さんに入っていただいて本当に嬉しいです。今年ライオンズは(優勝の)チャンスがあると思います。みなさん応援してください!」語り、ヒーローインタビューを終えた。
試合後の会見も終始笑顔で行われた。
「楽しい1日だったと思います。久々に会った先輩もいて同窓会のつもりで来ました。ファンの皆さんもたくさん来ていただいた中で、なんとか打たせて賞ももらったのでいい1日でしたし、思い出になりました」
MVPが発表され、前に出る際にバク宙をする仕草を見せたことについて試合後の会見で問われると、
「元々やるつもりはなかったんですが、ファンのみなさんに期待されていると思ったので、途中まではやってみようかな」と途中から狙ったことを明かした。
ただ、「(バク宙)できれば最高によかったんですけど。いかんせん歳なので無理でした」と苦笑いを見せていた。
93年以来となるライオンズブルーのユニフォームに袖を通し、共に栄光を分かち合ったメンバーと再び野球をすることができた。ロッカーでも昔話に花が咲いたそうで、
「数十年ぶりに先輩方とも会って、あの時こうだったよねといった話が多いですね。昔を振り返る機会ってそうはないじゃないですか。
先輩がいるからこそ僕らがいます。たくさん教えてもらったので良い先輩たちがたくさんいらっしゃいましたので、改めて幸せだなと感じてます」と感謝を述べた。
このベルーナドームも秋山さんにとっても特別な場所。
「ここが僕のプロ野球の原点だし、ここで作り上げていったので懐かしさを感じました」と語り、球場の思い出としては
「ダイエーに移った年(94年)にここでオールスターがあって。これまでも出場はしていたけどもずっとMVPを取れなかった。だけどこの球場で初めて獲れたことを思い出しました。今日も獲ったんだって(笑)」と当時のことと重ね合わせた。
また、グラウンドでプレーする中で感じたことがあったという。歴史を受け継ぐライオンズの現役選手に向けてのメッセージも込めてこのように話した。
「みんなピッチングでもバッティングでも(現役時と)同じタイミングの取り方をしているんですよね。
それを作り上げたからこそ成績を残したと思うし、自分もそれを感じながら、(練習を)やっていなくても全然できるなという感じがあった。今の選手たちも自分のリズムや形をつくって成績を残してほしいと思います」
松井稼頭央監督率いる今のライオンズにエールを送った秋山さん。ライオンズブルーの血は今も脈々と流れている。
(つづく)
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