
「デジタル野球教室」第2回は五十嵐亮太さんが登場!中学生へのマンツーマン指導でアプローチした”2つの傾向”
昨年12月某日、都内で「第2回 デジタル野球教室」が開催された。
五十嵐亮太さん、そして現役のNPB指導者である谷内亮太さんなどがコーチとして参加するなど今回も豪華な顔ぶれが並んだ。
(写真 / 文:白石怜平)
前月に続いて2回目の開催に
本イベントは最新の計測機器を活用し、デジタルを通じて技術力向上を支援する野球教室。
プロ野球団向けにチーム強化システム「Fastball」を提供するライブリッツ株式会社が運営し、昨年11月に続き第2回が実現した。
NPB球団なども使用されているRapsodoやトラックマンB1、MA-Q、BLAST、TechnicalPitchなどを使い、球速やスイングスピード、打球速度を計測。
コーチの指導と組み合わせて、スキルアップをサポートする。

対象は中学生で、将来大学や社会人そしてプロへと羽ばたく力になりたい想いが込められている。
また、プロ野球界で足跡を残した名選手を招く特別コーチも大きな特徴。前回は日米通算2730安打をマークし、昨年現役生活を終えたばかりの青木宣親さんが務めた。
参加した選手たちに共通する点をすぐに指摘し、その場で打球が大きく変わるシーンが何度も見られた。

第2回も豪華コーチ陣がラインナップに
今回もコーチ陣にはそうそうたるメンバーが名を連ねた。
打者では東京ヤクルトスワローズヤクルトで7年プレーした松井淳さんが前回に続き担当し、投手コーチには野球アカデミー「NEOLAB」レッスントレーナーの棒田雄大さん。
新たに守備コーチとして、北海道日本ハムファイターズで現在一軍内野守備走塁コーチを務める谷内亮太さんを招聘した。
そして、今回も特別コーチが登場。東京ヤクルトスワローズや福岡ソフトバンクホークス、さらにはMLBではニューヨーク・メッツなどでプレーした五十嵐亮太さんが担当することとなった。
メディアでは見ない日がないほど活躍を続けている五十嵐さんの登場に、会場は一際大きな拍手が沸き起こった。

五十嵐さんはコーチ陣を代表して挨拶。
「技術を数値化してフォームや感覚的な部分と比較しながら、その感覚的な部分を埋めることが大切です。そこを重点的にやっていきたいのと、怪我をしない投げ方や体の使い方も伝えていきます。
僕らが言っていることが正しいとは限らないので、何か次のステップアップにつながるきっかけになればと思いますし、実は一人一人にしっかりと向き合える野球教室は初めてなので、とても楽しみです。怪我なく楽しくやっていきましょう!」
と早速活気づけてスタートした。
数値と感覚がすぐにリンクした投手指導
松井さんが前回に続き打撃を、谷内さんは守備を担当。谷内さんは軽快な動きでお手本を見せながら、ノックを通じて反復練習を重ねた。

五十嵐さんと棒田さんは、ブルペンで投手を担当。ここでは五十嵐さんが冒頭で話した通り、数値化と感覚・動きが相互にリンクし合っていた。
まずは計測とコーチ陣の目で確かめるために投げてもらい、タブレット端末で結果を棒田さんからフィードバック。ここで指標に挙げたのは回転効率だった。
「ツーシームは90%台ですが、ストレートの回転効率が70%と出ています。これはスライダーに近い回転をしてしまっているので、回転効率が下がり気味になっています。
ツーシームのようにストレートをどれだけボールの中心を強く押せるかが、ストレートでも球速を出すポイント。それが数字に出ています」

すると五十嵐さんは「もう何球か投げてもらっていい?」とリクエスト。球種ごとのリリースポイントの高さの違いに着目した。
この数値を見比べた上で、具体的なアドバイスをスタートさせた。
「カーブのフォームが一番綺麗で、左右の体の入れ替えもうまくいっている。この(リリースポイントの)高さで真っ直ぐとツーシームを投げていったら角度もつくし、自然と上からボールを押し込めるようになる。
あと体が縦にスムーズに回る。カーブは縦スピンを意識するから、上手く使えてる。その感じで投げた方が体の連動がどんどんよくなるから、カーブを投げてから真っ直ぐやろう!」
五十嵐さんのアドバイス通り、カーブの後にストレートやツーシームを投げると「そうそう!後はリラックスして上から!」と大きなジェスチャーでわかりやすく返した。
合わせて数値を見るとリリースポイントの高さが1.5MT台から1.6MT台となるだけでなく、回転効率も向上を見せた。

五十嵐さんは終了後の会見で、上記の指導について問われた際に「みんなに当てはまるわけではないです」とし、このように解説。
「腕の振り方や体の使い方を見た時にそちらの方がスムーズだった。それが彼にとってはカーブだったということです。
彼については腕の角度、使う位置が良かったのでそこに真っ直ぐも合わせればボールが良くなる。なので結果も良くなりましたね。
あと回転効率の話があったと思いますが、ツーシームにした時になぜいい回転になるかと言うと、ボールの中心に指を持って行きやすい。
最初からボールの中心に指を置くことができるので、そこを押し込むことでいいスピンをかけられる。そこには”握り”が影響しています」

選手たちに共通して見られた傾向とは?
五十嵐さんの的確かつ熱い指導は以降の選手にも続いた。先述した”握り”と”体の入れ替え”は共通したアドバイスだった。
「全体的に似たような傾向でした。スピンもスライダー回転していて中心からずれていた。なぜそうなるかというと握り。まだ手が小さい分、心地いい握りがあるはず。その握りがカット成分を生んでしまうのだと思います」
ストレートで人差し指と中指をやや離す通常の握りで投げていた投手に向けて、五十嵐さんは両指を閉じて握る提案もしていた。
また左右の体の入れ替えについても、傾向をこう明かす。
「下半身の使い方とともに、上半身の使い方も伝えました。速いボール・強いボールを投げたいとなると、どうしても腕を強く振ってしまう。
今日はその傾向が強かったと感じました。なので全身を使う。力の抜き方や体を負担なくスムーズに使うことによって、結果数字も良くなるし実際そうでした」

五十嵐さんは一人ひとりに実演を交えながら選手のボールを自ら受けた。滑らかな動きから放たれる球は引退から4年経過していることを感じさせず、ブルペンに音が響き渡った。
「投げる時に”振る”よりも抑え込んでる力が強く見えるから、入れ替えるイメージ。そうすれば指先に力が伝わる」
そのアドバイスを受けた選手もアドバイス通りに実践すると、「最高!100点!」と五十嵐さん自身もテンションが上がり、さらに鼓舞した。

今回の対象だった中学生に向けて、どう伝えるかを考えていたという五十嵐さん。終了後の会見で意図を述べた。
「小中学生は上半身の感覚、いい腕の振り方を感じさせた方がいいのかなと。そこからたどって下半身の使い方へと繋げて行きました。
みんな効率的に力を発揮できるようになったと思います。当然選手によってポイントはそれぞれですが、今日は上半身の腕の使い方に課題がありそうな選手が多かったので伝えました」

約2時間の計測と指導を終えるとトークショーへ。五十嵐さんと谷内さんがそれぞれ自身の経験や、将来へ向けたアドバイスを送る時間になった。
(つづく)
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