
志田宗大氏と久古健太郎氏による「データ活用講座」プロも活用するデータ項目と活用における注意点とは?
12月21日にジャイアンツタウンスタジアムで行われた「デジタル野球教室」。最先端の計測機器を活用しながら指導を受けられる本教室は、中学生30人が参加。
第5回を迎えた今回は、新たにデータ活用講座も設けられた。
共にヤクルトで活躍した久古健太郎氏(ライブリッツ株式会社)と、今回ゲストコーチを務めた志田宗大氏が講師となり、中学生が今後活かせるデータの使い方を解説した。
(写真 / 文:白石怜平)
トッププロから見るデータの集め方と指標
プロ野球でもより人材や設備に投資を図り、高校や大学でも設備を導入する学校が増えるなど近年野球界でも急速に浸透しているデータ分析。
従来の指導法の中心とされてきた“経験”や“勘”だけではなく、計測した数字を用いることで共通認識を持つことで、実力や成長プロセスを客観的な指標として判断できる。
その上で久古氏はまず、“データ”の定義とともに特に大切な指標を説いた。
「1つ目が試合成績です。皆さんもイメージしやすい、打者で言えば打率やホームラン数といったもの。投手ですと防御率や三振数といった成績。これはとても大事です。
ただ、この成績を出すためにその裏付けとなるものがあります。それがトラッキングデータです。
『あの投手はすごく抑えている。 でもなぜ抑えられているのか?』という時に、球が速いのか?それほど速くないけど回転数が多いのか。 打者であればスイングスピードが速いのか。などといった成績の裏付けがわかるのがトラッキングデータです」

ではプロ選手はどのようにデータを集めているのか、志田氏が巨人在籍時の話を参考に明かしてくれた。
「来季からメジャーに挑戦する岡本和真選手(ブルージェイズ)、実はすごくデータを気にする選手で、一番何を気にしてたかというと“打球速度”です。 今は自分がどの位置にいて、どのスピードまで行くとメジャーのレベルであるかを把握していました。
今年世界最高速が大谷翔平選手の 191km/hと出ていますが、岡本選手で約 180km/h 前半でした。 村上(宗隆:ホワイトソックス)選手もそれぐらいで、打者で日本からメジャーに挑戦する選手たちの指標です。
プロ野球選手のレベルですと155km/hが目安で165km/h以上になると上位に位置します。皆さんも中学校 3年生あた、高校に進むと何km/hといった基準やトップレベルの速度を把握していると、自分の位置も分かってきます」

投手と打者における各指標と注意点
続いて、投手と打者それぞれでデータの見方を紹介した。投手側で挙げたのは「球速」・「回転数」・「回転効率」・「変化量」。各項目の根拠や基準値について説明した久古氏は、その注意点についても補足した。
「回転数や回転効率が高ければいいという話ではないです。プロの投手でも回転数が少なくても抑えているピッチャーはいます。
球速やコントロールで補ったり、あとは回転数が少ないとボールが沈みやすくなるのでそれを逆に活かして、低めのボールを集めてゴロを打たせるピッチングをすることもできます。
この回転効率で見ても、ボールが少し傾いてカットボール気味の真っ直ぐになってくると、逆にインコースに吸い込むようなボール投げれて、それが打者にとって打ちづらくなったりするので、特徴として捉えることができます。
数値が高いから良い・低いから悪いではなくて、自分の特徴に合わせてピッチングをスタイルを見つけるようにしていきましょう」

打者においては、「打球速度」・「スイング速度」・「オンプレーン」・「アッパー角度」が大事な指標として挙げた。久古氏はアッパー角度でホームランが出やすい角度が13°〜10°とした上で、このように補足した。
「自分がまだホームランを打てるような体格を持ってないのに、下から振り上げようとすると、角度的に合っていたとしても外野フライまでになってしまいます」
さらに志田氏が同席した指導者たちも交えたアドバイスとして、昨今謳われている打撃理論の観点から補足を加える。
「上から打つのか下から打つのかと言う話が出ていると思いますが、これは実際振った時と打者の感覚とに乖離がある話なんです。
皆さんが普段しているスイングでも振り下ろさない限り、実はバットってから出てきているんです。『下から振らなきゃいけない』って意識して振るととんでもない角度で下から出てしまう。
自分の感覚と数字の乖離が起こることは、プロでもあることなんです。それが高校生、中学生となるほど離れていくものなので、意識して下からバットを出し過ぎない方がいいと考えています。
角度が大事なことは理解してもらいつつ、久古さんが今言ったように、いくらいい角度で入っても打球速度が遅いと外野フライで終わってしまうので、速度を上げることを重要視して今後やってほしいです」

最後はフィジカルについて。プレーの質は身体のコンディションと密接に連動しているとして、身体と技術における数値の相関性を説明した。
「FFMI(脂肪を除いた筋肉の発達度)と打球速度・スイング速度の関係性を見ることで、『この選手は身体がまだできてないけどもスイング速度が出ているから、身体をつくればさらに伸びていくポテンシャルを持っている選手になる』といったように、我々は選手の課題を“見える化”しています」
計測だけでなく、データの項目やその意味さらには活用方法までレクチャーを受けた中学生にとって、技術だけでなく頭脳も鍛える30分間となった。
(つづく)
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