
ソフトバンク・城島健司CBO フロントマンとして託された”世界一への志”と”王イズム”の継承
3月23日にみずほPayPayドーム福岡で行われた「SoftBank HAWKS 20th ANNIVERSARY SPECIAL MATCH」。
昨年11月に新設されたチーフベースボールオフィサー(CBO)に就任した城島健司さんも選手として参加した。
今はフロントマンとして奮闘を続ける城島CBOは試合前、現在自分が担う役割や未来のホークスを構築するために継承していることなどについて語った。
(取材 / 文:白石怜平、表紙写真:©SoftBank HAWKS)
20年間変わらず、そして今後もブレない”世界一への頂”
城島CBOは約20年ぶりとなるソフトバンクのユニフォーム姿を披露し、「俺一年しか着てないからなぁ」と笑顔でインタビューに応じてくれた。
現役時代、ソフトバンクホークスとしては初年度の2005年にプレー。当時すでに長きにわたり日本を代表する捕手として不動の地位を築いていた。
ソフトバンクホークスが誕生した際、孫正義オーナーが語っていたことを鮮明に覚えていると共に、自身の立場から感じていたことを明かした。
「もう20年経つんですね。孫さんがオーナーになって最初に仰った言葉が『目指せ世界一』。
あの時僕は現役の選手だったので、日本一になったチームがメジャーのワールドシリーズに勝ったチームと戦って”世界一”になるであったり、巨人が成し遂げたV9を超えるV10をしようというメッセージと捉えていたんです」

その翌年から日本人初の捕手としてメジャーへ挑戦。2010年からは阪神でプレーし、2012年限りで現役を引退した。
ホークスへは20年に球団会長付特別アドバイザーとして待望の復帰を果たすと、シニアコーディネーター兼務を経て昨年11月、新設されたチーフベースボールオフィサー(CBO)に就任した。
投手・野手と担当のいるコーディネーターの統括や小久保裕紀監督との連携、さらには球団運営への参画も担うことになった。
「選手の時は打席でヒットやホームランを一本でも多く、キャッチャーとしては受けるピッチャーのパフォーマンスを少しでも上げたいと考えていましたが、今は立場が変わりました。
僕が選手の時に監督だった王さんは今は球団会長という形で、いただく言葉も変わってきています。
そういった話を聞きながら『球団経営やフロントとはこうあるべきなんだ』いうのを改めて勉強と言いますか、日々気づかさせてもらっています」

フロントマンとして変化と向き合いながら奮闘する日々。そんな中でさらに見えてきた景色、そして理解を深めたことがあったことを明かしてくれた。
「僕の立場も変わって、自分がソフトバンクのフロントになりました。それでも孫さんが言ってることって20年間全く変わらないんです。”世界一”と言うのはブレていない。
その言葉を改めて紐解いていって自分なりの答えを見つけていくと、『替えのきかない選手になりなさいよ』ということだと思うんです。現場の選手はチームが勝ってリーグ優勝・日本一になること。でも我々組織の中には選手が百何十人といるわけですし、首脳陣もたくさんいます。

その分スタッフも多くいるのですが、例えばトレーナーだったら、『世界一のトレーナーになりなさい』。あなたが世界一のトレーナーにならないと選手たちは世界一のパフォーマンスが出ませんよと。
バッティングピッチャーだったら『世界一のバッティングピッチャーになりなさいよ』というメッセージなんですね。
それを孫さんは多くの言葉で語らずに伝えているんだと。この認識を小久保監督が現場で、僕はフロントの方で持ちながらしっかり孫オーナーの志や想いを現場に伝えていく仕事だと考えています」
「王イズムの継承は30年前に”戻る”のではない」
今回のOB戦はソフトバンクホークスとして初の取り組み。長年積み上げてきたホークスの歴史を象徴する企画となった。
その礎を築いたのは、ダイエー時代から監督として指揮を執ってきた王貞治球団会長である。城島CBOや小久保監督は現役時代に王監督から直接金言を授かり、グラウンドで体現することで今につながる常勝軍団を形成してきた。

それぞれ立場を変えながら今もホークスに携わる3人。特に城島CBOと小久保監督は、”王イズム”を未来に継承する役割も担っている。その王イズムとは何か。誤解されがちな点をフォローしながら述べた。
「小久保さんの言葉を借りて言うと、『”古くさいもの”と”古き良きもの”は違うんだ』と。よく王イズムの継承って言うと、どうしても30年前に王さんがやってきた野球をやりなさいと言うような”戻る”イメージを持たれる方もいます。
でも、王さんの口癖は『良い変化をしなさいと。変わっていきなさい』という考え方なんです。僕らが王さんから教えを受けてきたことを、直接教わっていない今の選手たちに、我々が伝えていく役目です」

未来のホークスを担うフロントマンや選手たちにさまざまなアドバイスを送っている城島CBO。継承のために「伝えなければいけない」と語るものについて続けた。
「僕が一緒に仕事をしているフロントマンは、王さんからのありがたい言葉を直接受けられていない人がたくさんいるわけですよ。そういう人たちやホークスに将来入ってくる人たちに王さんがやってきたことは未来に残さなければいけない。
それが王イズムの継承だと思うんです。決して昔のことをやりなさい・戻りなさいと言ってるわけではないです。

特に我々の組織は新しいことにどんどんチャレンジしていく組織です。その中で我々が築き上げてきた成功の下には、それ以上のたくさんの失敗があります。それをしっかり把握しないといけないし、そのことを今そして未来のフロントマンに伝えていく。
現場のことは小久保さんがやってくれているので、僕はフロントマンとしてチームを良い未来に向けていきたいです」
かつてグラウンドで攻守の要を担ったスターは、今フロントとしての要を託された。変化とチャレンジの積み重ねが、世界の頂への必要なステップとなる。
(おわり)
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