「自分の体をもっと知ろうと思いました」選手とレフリーの”二刀流” 三重ホンダヒート・近藤雅喜 学生時代の大怪我を経て気づいた己との向き合い方(全5回 #1)
大怪我を経て気づいたこととは?
入学早々に日本代表に選出され更なる飛躍を遂げようとした矢先、選手生命の危機に直面した。リーグ戦の開幕前日(13年9月)、左膝の前十字靭帯を断裂する大怪我を負ってしまった。
復帰まで1年近くを要する怪我で、4年しかない貴重な大学生活においても大きな1年となった。受傷した時のことは今でも鮮明に覚えている。
「その日は雨が降っていて、グラウンドのコンディションも悪い中でした。自分がボールもらってステップを切るときに左足へ体重移動したんです。
おそらくスリップはしていたと思うんですが、もう一瞬で目の前が真っ暗になって気づいたら『これはちょっとまずいな』と自分でも思いましたね…」
長く険しいリハビリの日々。手術後はまず曲がらない膝を徐々に動かすところから始めた。常に日常にあり全てを捧げてきたラグビーが目の前から消え、初めは不安と絶望感に苛まれた。
「本当に絶望でしたね。ラグビーはできないし、日常生活にも支障が出ますし。ずっとラグビーをやってきて、僕自身怪我がほとんどなくて、初めて知った大怪我が前十字靭帯(断裂)だったので、気持ち的にもダメージが大きかったです」
しかし、1週間を過ぎた辺りから心境に変化が起きていった。復帰するためにこの長い時間をどう過ごしていくかを、自然と冷静に考えられるようになったという。
「今まで考えなかった角度からラグビーを考えたりなど、”怪我をして気づく”とよくアスリートの話で聞いたりしますけれども本当にその通りで、いろいろな新しい発見がありました」
逆に自分を見直す時間になったという近藤。どんな発見があったのかをさらに深堀りしてみた。
「自分の体をもっと知ろうと思いました。トレーニングも自分の体に合う・合わないがあるんだとあの時期に気づいたんです」
怪我をする前までは、体を大きくしていた時期だった。大学生に上がり、フィジカルレベルの高さや上級生の体格を見て足りないところを補おうと考えていた中での取り組みだった。
「当時は闇雲に体を大きくして体重を増やしていた中でのアクシデントでした。ただ、その分トレーニングも多く積みますし、気づかぬところでストレスも体に対してかかっていたと思うんです。そこで自分でブレーキを踏むことができていなかったのだと今振り返って思います」
学生だと経験を積んでいる段階である分、自分で自分をセーブすることは容易ではない。近藤は大学生で大怪我をし、自分を見つめ直したことで気づくことができたのだった。
「自分でコントロールすることって特に学生ですと、すごく難しいと思います。でもそこがとても大事なことだというのが、今にも活かされています。オーバーワークになりすぎない。自分に合った体重というのもありますので、より深く考えるようにはなりましたね」
約1年のリハビリを経て2年生の夏に復帰。その後はさらにパフォーマンスを上げ、関東ラグビーのオールスターメンバーに入るなど本来の輝きを取り戻していった。
そして4年に入り、今後の進路を選択する時期へと入っていった。
(つづく)
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