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元巨人軍・鈴木尚広 ベースボールクリニックで伝える体軸トレーニング「ケガでチャンスを逃してほしくない」

選手寿命を延ばした「体軸トレーニング」

出会った当時、鈴木の筋肉は硬くて張りやすかった。それが原因で肉離れや腰痛を引き起こしてしまっていた。そのため、トレーニング前のマッサージを重点的に行い、柔軟性を向上させるところから始めた。

並行して行ったのが、以後の選手生活を延ばした要因となった「体軸トレーニング」である。

体軸トレーニングとは、身体を使う時にインナーマッスル(深層筋)を優位に働かせるトレーニングのことをいう。

ウエイトトレーニングで重いものを挙げる時は、大胸筋や大腿四頭筋といったアウターマッスル(表層筋)主に使う。大きな力を発揮するための筋肉である。

一方、インナーマッスルは体の深部にある筋肉で、「姿勢保持筋」と呼ばれている。

姿勢を整えたり、身体を滑らかに動かすための筋肉である。

これまで鈴木はアウターマッスル中心の使い方をしていた。インナーマッスルを中心に、よりしなやかに身体を使えるようにするため体軸トレーニングを取り入れた。

体軸トレーニングの特徴は、効果をその場で体感できることである。

例えば、肩の付け根辺りを指で押さえ、肩を前後に10回ずつ回す。

回した後にお互い向かい合って手を押すと、押された相手が後ろに大きく下がるくらいの力を発揮させることができる。

現在もセミナーで体軸トレーニングの指導を行っている

「このトレーニングは(やる前と後の)違いがすぐに出ます。特にアスリートのスペックというのは、一般の人に比べると創造性が高いです。なので違いがよくわかると思います。変わる感覚を体に落とし込めるので、そこを広めていきたいなと思っています」

その場で体感できる一方で、内容は地味なトレーニングのため継続するには根気強さが必要になる。筋肥大のように視覚的な変化がすぐに現れないため、アスリートでも継続することが難しいという。

実際、筋肉の質を変えるのには3年、並行して体軸トレーニングを習得して体を自由に使いこなせるまでに5年を要した。シーズン中は試合のない月曜日に、オフは週3回岩館の元に通い続けた。

「どうしても目に見えた変化を追ってしまいがちなんですけれども、僕は『まず積み上げてどうなのか』を考えていました。20年くらいその身体でやっていたので、その意識を剥がすのは大変でした。最初はずっと悶絶していましたね」

道のりは長かったが、指導の通り着実に積み重ねてきた。始めて5年経った2011年頃からは、全くケガをする気がしないくらいの感覚にまでなったという。

「不思議なことに筋肉ってやり続けると変わるもので、ケガをする感覚がなかったです。『どうやったらケガするの?』っていう感覚まで行きました。歳を追うごとにケガしなくなってパフォーマンスが上がっていきました。遅咲きなんですよ僕は(笑)」

引退前年の15年、プロ19年目にして初のオールスターゲームに選出された。そこで同じセ・リーグ代表で出場した当時阪神タイガースの鳥谷敬選手(現:千葉ロッテマリーンズ)に「肩強くなりました?」と驚かれたほどであった。

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