「言葉の力というのはとても大きいです」オリックス・バファローズジュニア 小川博文監督 自身の考える指導法と子どもたちへ贈った言葉
12/27〜29の3日間、明治神宮野球場と横浜スタジアムで「NPB12球団ジュニアトーナメント」が行われる。
オリックス・バファローズジュニアを率いるのは小川博文監督。前身であるオリックス・ブルーウェーブ時代の95・96年、「がんばろうKOBE」を掲げリーグ連覇、日本一に貢献した”青波戦士”である。
昨年からジュニアチームの監督に就任し、子どもたちに気持ちの重要性を伝えながら意欲や自覚を促す指導を行っている。
本編では時代の変化へ柔軟に対応したアプローチ、そして昨年の大会で伝えた選手たちへ贈った言葉について伺った。
(取材協力:オリックス野球クラブ 文:白石怜平)
「昔と今のバランスを取りながら、良いものを作っていく」
子どもたちを指導するに当たり、挙がる話題が”時代の変化”である。
プロ野球OBの方々を取材する中で、特に学生を指導する方が話していたのは、「今の学生は情報量が多い」という点である。「今の学生は情報量が多い」という点である。
小川監督も指導するに当たり、やはり情報量が多いというのは肌で感じたという。ただ、情報を多く持っている選手たちがどうしても得ていないものがある。
「今の子どもたちは情報量はすごくありますし、賢いです。ただ、まだ小学生ですので”経験”がない。情報は我々よりあると思います。でも経験をこれから積まなくてはなりません。
その経験値を上げるためには何かと言ったら、先ほどお話したような”自分から掴みに行く”それしかないんじゃないかと思うんです」
昭和や平成中期ごろのいわゆる体育会系では、指導においても”とにかくやりなさい”という考えが主流であり、小川監督自身もその時代に指導を受けた一人。
ただ、小川監督は指導者を務めるにおいて何より必要な”柔軟性”を持ち合わせている。自身が大事にしている考えを語ってくれた。
「今は、テクノロジーで情報を得てみんなが共有し合いますよね。それに加えて、私は昔のいいところっていうのは絶対あると思いますし、変えてはいけない部分もあると思うんです。もちろん、変える部分もあるので、そこはすぐ変えなければいけない。
昔と今のやり方をうまく融合させて、指導者側もしっかり考えて、子どもたちを導くというのが、これからの時代に必要なことだと思います。昔と今のバランスを取りながら、良いものを作っていくんです」
昔の悪い部分で言うと、”体罰”や”暴言”が代表例として挙げられる。昔のネガティブな指導法がクローズアップされる傾向にある中、小川監督の考える”昔のいいところ”はどんな点と考えているのか。
「厳しかったけど、その中に温かみがあったと思うんですよね。私のアマチュア時代、プロに入ってもそうですけど、厳しい人はいました。でも、すごく可愛がってくれましたよ。言われた時は”何くそ!”と思ってやってた自分もいましたし、だからこそ結果を出して、期待に応えられたのだと思います」
小川監督の温かみのある厳しさ。しっかりと現代版にアップデートされていた。実際にどんなやりとりが行われているか、紹介してくれた。
「例えば、『今の結果を踏まえて、どうしたらいいと思う?』と選手たちに話させるんですよ。自分の言葉として発しますよね。そうすると、その言葉に対して責任感が出るんです。
言ったからには、『じゃあどうすればいい。よし、じゃあそれをやろう』となりますし、もし実践していなければ『自分で言ったよね?』と聞きます。
自分で言ったんだから責任持ってやろうと。すると、子どもたちは”はい!”ってしっかり理解するんです。このようなコミュニケーションは取らないといけない、そう思います」
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