「第17回 小笠原道大杯」閉会式 小笠原道大さんが感銘を受けた姿勢と今後の未来に寄せたメッセージ「どんな試合でも最後まで諦めずに取り組むこと」
23年12月10日、千葉県市川市の妙典少年野球場で「第17回小笠原道大杯争奪 市川市少年野球大会(以下、小笠原杯)」の決勝戦並びに閉会式が行われた。
名を冠する小笠原道大さんも球場を訪れ決勝戦の模様を観戦。今年も子どもたちと直接交流し、閉会式では子どもたちの成長につながるメッセージを贈った。
(協力:市川市少年野球連盟、写真 / 文:白石怜平)
大会は17回目を迎え、連盟も毎年新たな取り組みに挑戦
小笠原杯は主に小学5年生の選手を対象とした、市内の少年野球大会。07年から始まった大会は第17回を迎え(※20年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)、22年4月にオープンした新球場で2回目の開催となった。
21年は「新しい野球のスタイル」を掲げ、集合から解散までを最長6時間とした効率化や、会議や運営におけるオンラインツールの積極導入を図った。
22年は新球場がオープンしたことから、それにふさわしい「笑顔と歓声」をテーマに設定。
新しい野球のスタイルが各チームに浸透し、パフォーマンスを下げずに子どもたちが生き生きとパフォーマンスを発揮できる場所となった。新型コロナウイルスの影響で一度は消えた”笑顔と歓声”が、確かに戻ってきたのだった。
そして、昨年新たに連盟が取り組んだのが「ハラスメント」の撲滅。長きにわたり学生スポーツ界でも取り沙汰されている問題である。連盟の五嶌(ごとう)誠司理事長は、現状について語った。
「昨年夏ごろからスポーツを取り巻く環境下で、”ハラスメント”という言葉が飛び交っている印象を受けています。社会が見る目が以前より変化、あるいは厳しくなってきたのかなと肌で感じるとともに、足元の市川市内でも防止に力を入れています」
連盟は昨年大学教授を招き、ハラスメントのないスポーツ指導そしてプレーヤーの成長を支援するコーチング講演会などを開催。指導者に向けての情報発信を継続的に行った。
これらの活動が千葉県少年野球連盟にも評価され、今年は県全域を対象として講習を行うことが決まった。2000人近い規模になる見込みで、五嶌理事長が指揮を執ることになっている。
五嶌理事長は今後について、「ハラスメントが起こる原因には”勝利至上主義があるのか”など引き続き情報収集し、私自身も学んでいきたいと思います」と語った。
塩焼ちどりウイングスが大会制覇
決勝戦は「塩焼ちどりウイングス」と「新井三丁目ジャガーズ」の組み合わせとなった。11月5日から約1ヶ月半かけて行われた大会は、この試合で34チームの頂点が決まる。
試合は11時にプレーボール。初回は両軍の先発が立ち上がりを0に抑えた。試合が動いたのは2回。打者一巡の猛攻を見せ一挙7点のビッグイニングとなった。
さらに3回裏もこの試合3番・捕手で出場した小林奏太選手が前の回に続き2点タイムリーを放ち、4打点をマークした。
守りにおいても、先発の萩野谷哉斗投手が好投するなどジャガーズ打線を抑えきり、9−0でウイングスが第17回大会の覇者となった。
点差は広がったが、ジャガーズも決して諦めることはなかった。難しい打球に食らいつき全力で送球する姿や、外野への飛球も精一杯ダッシュしボールを掴みアウトに。
この試合は小笠原さんも観戦しており、そのひたむきな姿勢は伝わっていた。
表彰式では小笠原さんがプレゼンターに
試合後には閉会式が行われる。決勝戦を戦った両チーム、3位の「八幡チャレンジャーズ」も加えて表彰式が行われた。
入賞チームには小笠原さんのサインが入った賞状とトロフィー、選手全員に金・銀・銅のメダルを用意。
さらに個人賞として優勝チームからは大会最優秀選手(MVP)として小笠原さん使用モデルのサイン入りバット、2位・3位チームから現役時代の折れたバットから再利用してつくられたこちらもサイン入り木製メダルが各1名に贈呈される。
式では小笠原さんがプレゼンターを務め、固い握手も交わした。選手たちは緊張と感動の面持ちでその瞬間をかみしめるように受け取った。
その後は全選手にメダルの授与が行われ、塩焼ちどりウイングスには小笠原さんが一人一人首にかけてまわり、声をかえながらここでもがっちりと握手を交わした。
そして栄えある個人賞の発表。MVPには塩焼ちどりウイングスの隈部颯太選手が選出された。優秀選手賞には新井三丁目ジャガーズの本間翔太選手、八幡チャレンジャーズの宮崎辰瑠選手が受賞した。
連盟、市川市から労いの挨拶
表彰式後は挨拶と講評へと移る。まずは、連盟の中嶋貞行会長がマイクの前に立った。今大会で起こった出来事を交えながら振り返った。
「小笠原さんはプロ野球で数々の記録を残している本当に素晴らしい選手です。そして皆さんの応援のために毎年大会を開催し、この場に来てくれること、私も本当に嬉しく思っております。また、たくさんの観客を迎えて閉会式を行えたこと、非常に喜ばしいことです。
講評として、選手たちが素晴らしいプレーを見せてくれました。特に準決勝では2試合とも特別延長ということで、さらにそれで勝敗が決まらず大変心苦しいことに抽選の決定となりました。
選手たちは既に春の大会に向けてたくさんのことを学びながら、頂点を目指してくれると思っています。今大会でも選手の健闘を見せてくれました。本当にありがとうございました」
続いて公務で欠席した田中甲・市川市長に代わり、立場久美子・市川市スポーツ部部長が挨拶。
「2ヶ月近く、各地で熱戦が繰り広げられたと思います。惜しくも優勝へ届かなかったチームの皆さん、来年こそは優勝に向けてまた練習に励んでください。この妙典少年野球場は市内でも設備の整った野球場です。
この先もいろいろご活用いただきたいと思います。今日は小笠原さんにもお越しいただいて、とても素敵な時間を過ごせたと思います。関係者の皆さんも今後もご尽力いただき、青少年の健全育成のご協力をいただければ幸いですと思います。
本大会の開催にあたりご尽力いただきました。関係者の皆様、そして小笠原様に改めて感謝を申し上げます」
最後は小笠原さんからのメッセージ
そして、いよいよ小笠原さんが自らマイクを握った。毎年子どもたちにテーマを持って伝える未来に向けたメッセージ。今回も無事完走できたことに感謝をしながら、一人一人の心に深く残る言葉を贈った。
「今日、閉会式を無事迎えられたこと、この場を借りてお礼を申し上げます。決勝戦を途中から拝見して、点差に関係なく両チームの皆が一生懸命、一つ一つのプレーに取り組んでいたことを非常に嬉しく思います。
両チームだけではなく、みんながやることで今後の全員の成長につながると思うので、継続してやっていってください。
あと、すごく活気もありました。大きな盛り上がりを見せていたのでそこも嬉しく思いました。どんな試合でも最後まで諦めずに取り組むことが一番です。それが経験になって先々にプラスになると思うので、どんな状況でもみんなで力を合わせて元気にやっていってください」
そして最後に「来年もこの場所に立ってみなさんとお会いできることを願っています」と締めた。
小笠原さんは今後も大会を継続していきたい想いを抱いている。地域・連盟・そして小笠原さんが一体となって開催されている大会は今後も市川市、野球界の未来を照らし続けている。
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