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「第15回小笠原道大杯」2年ぶり開催。”新しいスタイルの野球”へのチャレンジと小笠原氏が贈ったメッセージ

2021年12月11日、千葉県市川市の妙典少年野球場で「第15回小笠原道大杯争奪 市川市少年野球大会」の閉会式が行われた。

名を冠している小笠原道大・巨人2軍打撃コーチも姿を見せ、子どもたちへメッセージを贈った。

(写真 / 文:白石怜平、以降一部敬称略)

市内の全41チームが頂点を争う大会

小笠原道大杯争奪 市川市少年野球大会(以下、小笠原杯)は、市内の小学5年生を対象にした少年野球チームの頂点を競う大会。

千葉県出身の小笠原コーチは同市に居を構える縁から、現役時代の2007年オフに地域貢献活動の一環で冠大会を開催。2015年の現役引退時も「今後も継続していきたい」という想いを持ち、昨年を除く14年間欠かさず行われている。

市川市少年野球連盟(以下、連盟)の塚原良光 事業部長は大会について説明する。

市川市は東・西・南の3ブロックあるのですが、初年度はブロック対抗で開催していました。2回目以降は小笠原さんのご厚意で、市内全チームでの開催へと拡大しました。予選を勝ち抜き、本戦は41チームが出場してトーナメント方式で試合をしています」

現在は41チームが参加するなど市内で最も盛り上がる大会に。小笠原コーチも多忙の合間を縫い、ほぼ毎年閉会式に出席している。壇上に立ち、未来を担う子どもたちへ勇気を与え続けている。

優勝旗やトロフィー。小笠原のサインが印字されたメダルも用意されている

「子どもたちは小笠原さんに会えるのをモチベーションにやっています。小笠原杯は5年生の大会で、ここを頂点にして翌年以降につなげることで全国への足掛かりとしてほしいのです」

同連盟の五嶌(ごとう)誠司理事長も、大会の開催意義を語った。

2021年、「新しいスタイルの野球」を掲げる

今シーズンより連盟は”新しいスタイルの野球を合言葉に、改革を進めている。子どもたちが安全かつ楽しく野球に取り組めるよう、グラウンド内外問わず掲げた方針である。

まず活動ガイドラインを制定し、活動は1日最長4時間・遠征は事前申告制とした。制度を浸透させることで、各チームが均等に足並みを揃えかつ感染対策とも両立して活動を続けられるようになった。

1日の練習時間を明確に区切ることで、新たな変化が生まれたという。五嶌理事長はこう説明した。

「野球以外の新たな価値観を子どもたちが見つけたり、家庭内でのコミュニケーションが増えたというお話もいただきました。また指導者側も、4時間の間で集中してどう練習するかという考えに切り替わってきていると感じています」

今シーズン、連盟は工夫を重ね1人の感染者も出さずに完走した(撮影時のみマスクなし)

また、”新しい野球のスタイル”は運営においても浸透している。春季大会の開会式では、例年は全チーム参加するが当日試合のあるチームに限定した。その際、オンラインを活用した取り組みを始めている。

開会式をYouTubeライブで配信し、この日グラウンドで迎えられなかったチームも参加意識を持てるよう工夫を凝らした。

今後、チームと理事同士のコミュニケーションを濃くするために「我々もZOOMなどを活用してやりたいです。対面しなくても会話できるようWebを活用したい」(五嶌理事長)と会議もオンラインでやる構想もある。

連盟の方々が柔軟かつ毅然とした対応することで、ここまで感染者を1人も出さず小笠原杯の決勝戦を迎えることができた。

決勝は両チームともに女子選手が先発

11日は決勝戦の市川南スパローズ対富美浜イーグルスが行われた。ともに初の決勝進出同士の顔合わせとなった。

試合前のセレモニーでは両チームの選手と審判団がマウンド後方に並び、選手1人1人名前を読み上げられる。力強い声と大きな挨拶で熱戦を期待させる雰囲気に包まれた。

試合は10:44にプレーボール。先発はスパローズが田中仁奈選手・イーグルスが白鳥夏音選手と、女子選手がマウンドに上がる。両チームとも女子選手が決勝戦の先発を務めるのは、大会史上初のことだった。

市川南スパローズの田中仁奈選手

市川市では近年女子選手の野球人口が増え、力をつけてきている。地元の中学・高校生で構成されている女子軟式野球チーム「市川グレイスレッド」は、翌12日の女子軟式野球関東大会で優勝。全国レベルで戦うチームである。

富美浜イーグルスの白鳥夏音選手

小学校5年・6年生の少年野球チームで活躍する女子選手を選抜した「市川ガールズ」でもチームメートの2人。お互いに顔馴染みということもあり、より一層気持ちの入ったマウンドになった。初回をともに無失点に抑え、まずまずの立ち上がりを見せた。

試合は2回表に動き出す。スパローズが6番を打つ佐藤颯馬選手の2ランスクイズで2点を先制。3回も3番・渡辺竜之介選手のセンター前、前の回に続き佐藤選手のライト前タイムリーなどでさらに3点を加え、試合の主導権を握る。

攻撃では6番を打つ佐藤颯馬選手が活躍した

田中選手は強力な援護を受けながら1失点の好投を続け、味方打線はさらに2点を加えた。田中選手が降板後も、後続が抑え7-1でゲームセット。スパローズが初の栄冠を手にした。

小笠原コーチから子どもたちへのメッセージ

閉会式では、市川市の村越祐民(ひろたみ)市長など20人近くの来賓が参加。小笠原コーチは1位から3位の入賞チームに向けて賞状を読み上げ、1人ずつ直接代表選手に手渡した。

そして栄えあるMVPの発表。決勝で勝利投手となった田中選手の名がコールされ、小笠原コーチの現役時代に使用したモデルのサインバットが贈られた。

来賓を代表して連盟の中嶋貞行会長、村越市長が挨拶。

「選手の皆さん、素晴らしいプレーを魅せてくれてありがとうございました。コロナ禍で満足な練習ができなかったチームもたくさんあったと思います。その中で色々なことを考えながら取り組んだ練習の成果だと感じています。

皆さんはこれから世の中を背負っていきます。今回、野球を通じて素晴らしい経験ができたと思いますので、物事をすぐ諦めずに色々なことを勉強していってください」(中嶋会長)

最初に挨拶し、メッセージを贈った中嶋会長

「決して忘れないでほしいのは何度失敗しても諦めないこと。それが成長につながります。また、ユニフォームはお母様が洗濯をしてくれたと思います。

また、お父様たちもSNSで選手たちの活躍を市民の皆さんへPRしてくれています。選手の皆さん、保護者・連盟の皆さまに感謝の気持ちを忘れないでください。

多くの人に支えられて、この素晴らしい大会が15回も続いていることを私からも御礼を申し上げます。来年の春に新しい球場ができます。白球と夢を追い続けて、市川の街から大きく羽ばたいてください。素晴らしい大会をありがとうございました」(村越市長)

村越市長は感謝の気持ちを忘れないよう話した

両者がそれぞれ感じたことをエールに変えて選手たちへ言葉をかけた。

そして最後にマイクの前に小笠原コーチが再度登壇。常に周囲への感謝の気持ちを忘れない人柄そのままに連盟・関係者・保護者の方々への「いつもありがとうございます」と述べ、選手たちへメッセージを贈った。

「(コロナ禍で)制限がある、ストレスもある。それに反発するのではなく、前向きに・ポジティブに『何ができるのか』、『〇〇になりたい・こうしたい』と自分たちでアイデアを出して、その場を楽しく生活できるようにしてください。

みんなで協力をし合うのもそう、家族で生活していくのもそう。常に笑顔が絶えない1日を過ごしていってほしいです。そうすることによって、気持ちも前を向けますし、取り組むことが上手く行く可能性も上がると思うので、少しでも心の中に置いて明日から過ごしてみてください。

みんな野球が好きだからここにいると思うので、1日でも長く野球を通してみんなで成長できるようにこれからも頑張ってください」

小笠原コーチも最後「常に笑顔が絶えない1日を過ごしてほしい」と贈った

この日10℃にも満たない寒さの中、球場は熱気に満ち溢れ式は無事終了した。

市川市の少年野球大会は全スケジュールを完走。今シーズン、連盟・チーム・保護者らが1つになった努力の成果もあり感染者は1人も出していない。

来シーズン、全員が元気な姿で完成予定の新球場で集まれるよう連盟の挑戦そして小笠原杯は続いていく。

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