2年ぶり開催「第27回 関東甲信越身体障害者野球大会」パラリンピックの裏側で行われた”もうひとつのパラスポーツ”

”まっさらなマウンドに上がりたい” 左腕が掲げた目標

9:58にプレーボール。試合開始時は新型コロナ感染対策の一環で、両チームはベンチ前のライン上に並び一礼。山崎球審によるの迫力ある「プレイ!」コールが全体を緊張感で包みこみ、試合が始まった。

通常はホームベース付近で並ぶがこの日はベンチ前で整列

1回表、先発投手として千葉ドリームスターの篠原敦がマウンドに上がった。

篠原は幼い頃の交通事故による右半身まひの障害をもち、野球をする際は主に左手1本でプレーしている。マウンドで投げるときは素手でボールを受け取り投球し、打撃でも左手1本で右打席に立つ。

貴重なサウスポーとして、今シーズンは健常者チームを相手に短いイニングながら無失点投球を続けるなど好調を維持してきた。

足跡のないマウンドに上がり、1球1球投げ込む篠原(右は二塁を守る中䑓)

「まっさらなマウンドに上がりたい」

11年にドリームスターに入団し、念願の野球を始めてから抱く想いをよく知る小笠原一彦監督の計らいで先発起用が決まった。

共に長くプレーする中䑓陵大主将も「篠原先輩のために」と攻守決めの際に後攻を選択するなど、チームの期待を一身に背負いながらマウンドへ向かった。

初回を3人で抑えリズムをつくり、裏の攻撃に向けて勢いを呼び込んだ。

ジャイアンツの先発は左腕の齊藤輔。篠原同様、右半身まひの障害がある齊藤は、最速100kmのストレートとスライダーが武器。2016年に入団以降、主力として投げ続けてきた。

ジャイアンツの先発を務めた齊藤輔(写真:林直樹)

ドリームスターは初回から齊藤に襲い掛かる。1・2番が四死球で出塁すると、打席は3番の城武尊。

城は18年に行われた”もう一つのWBC”と呼ばれる、「世界身体障害者野球大会」に日本代表として出場した選手。

両腕に1本ずつある橈(とう)骨が生まれつき左腕だけなく、左手の親指と人差し指がない障害があり、主に右手でプレーしている。

普段は投打で主軸を担う若干24歳の若武者はこの日は打者で出場。ストレートを素早い体の回転で振り抜くと右中間を真っ二つ。ランナー2人を迎え入れるとともに自らも快足を飛ばしランニング本塁打に。一気に3点を先制した。

初回にランニング本塁打を放った城

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