2年ぶり開催「第27回 関東甲信越身体障害者野球大会」パラリンピックの裏側で行われた”もうひとつのパラスポーツ”

試合は千葉ドリームスターが勝利、初の全国大会へ

ドリームスターはその後も攻撃の手を緩めず初回に10点を挙げる。篠原は3回を投げ、ジャイアンツ打線を1四球のみの無安打に抑えた。

3回終了時点で11−0となり、規定によりコールドゲームとなった。

身体障がい者野球では、近隣チームとの交流が盛んで合同練習や練習試合もたびたび行われる。お互いに協力しながら活動を続けていることから、横のつながりが強いのも特徴の1つである。

普段は”同志”であるがこの日は真剣勝負。両軍ベンチから緊張感が漂う試合となった。

試合を裁いた山崎球審は「まずは、その技術の高さに驚きました。一本腕打法やグラブトス、素早くグラブを投げ捨て送球するなど、相当の練習をこなしたのでしょう。でも、それ以上に魅力的なのが笑顔あふれる野球であること。足りない部分は皆でカバーしあう。

好プレーには敵味方関係なくベンチから歓声が沸く。こんな風に野球を楽しむ権利は万人にあり平等なんだと教えてくれます。これからも深く関わっていきたいですね」と話した。

終了後には表彰式が行われ、MVPは篠原が獲得した。

試合を振り返り、「コロナ禍ではありますが、無事開催できたことを嬉しく思います。またチームの代表として投手に指名いただき、全ての方に感謝するマウンドでした。

ピッチングはとにかくミットめがけ、緩急で打ち取ること。ベンチ・グラウンドからのチームメイトの声が力になりました。今後も障がい者野球の発展のために活動を続けます」と充実した表情を見せた。

無安打無得点の投球で篠原がMVPに輝いた

大会後には運営スタッフやブルーサンダースのメンバーを交えて交流戦を開催。勝敗関係なく、球場に集まった全員が野球を楽しんだ。

2年ぶり開催の関東甲信越大会は終了。現在も感染者を出していない。

ジャイアンツの西尾健太監督は「これまで感染症対策と選手の健康状態に配慮しつつ、大会を目指して野球ができる限られた時間を大切にして取り組んで来ました。選手たちの気持ちを考え、無事に大会を開催できてこの試合ができたことはとても大きな意味があると思います」と参加した意義を語った。

ドリームスターは関東甲信越の代表として、創設以来初の全日本選手権に出場する。笹川秀一代表は、大会を開催し実績を残せたことに触れながら、

「2チームでの開催を承認していただいたNPO法人日本身体障害者野球連盟事務局、関東甲信越連盟理事会の皆様、試合をサポートいただいた東京ブルーサンダースの方々、そして開始時の霧雨も吹き飛ばすジャッジをしていただいた山崎様、中山様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました」

と開催できたことに関係者全員へ感謝の気持ちを述べた。

5月には神戸で選抜大会を開催し、身体障がい者野球としても各地で「with コロナ」に向けて開催実績を残しつつある。

10月から緩和の動きが徐々に見られるという報道もある中、11月に全日本選手権が行われる予定である。障がい者スポーツの希望の1つとして、新たな熱戦の記録が刻まれた。

試合後は両軍で記念撮影。共に身体障がい者野球を盛り上げるべく今も活動を続ける(写真:林直樹)

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